Alps--アルプス再び--
その4
16 Jul.〜 9 Aug.1994


炎の岩稜からのグランドジュラス夕景
8月2日 晴れ
朝5時に目が覚める。
青空!!
ドリュのボナティ稜に行くことにする。
イソ太郎さんが、9mm50mロープを貸してくれた。
本当は、僕なんかより、実力者だし、一緒にいけばいいのかもしれないが、
ソロで行くわがままな僕を気落ちよく送り出してくれた。
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シャルプア小屋よりドリュ |
クレバス帯 |
できたら、4日に下りたい。
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炎の岩稜からの眺め |
シャルプア小屋には、5年前と同じ小屋番のおばちゃんがいた。
カフェオレで喉を潤し、先を急ぐ。
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コルから見たボナティ稜下部 |
α米とシャケの夕食を食べて、ツエルトを被る。
周りには、9パーティ近くビバークしているようだ。
久しぶりの好天だが、混雑はやだなあ。
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緊張を隠せない我輩 |
8時15分 モンタンベール
9時30分 メールドグラス氷河
10時35分 シャルプア出合
10時50分
13時20分 シャルプア小屋
14時00分
16時50分 炎の岩稜のコル
8月3日 晴
3時過ぎ、周りのパーティが動き出して物音で起きる。
暗い中の懸垂下降は、いやなのでゆっくりする。
懸垂したら、敗退は難しくなる。
緊張と不安で昨夜はあまり眠れなかった。
ソロの時は、いつもそうだが、登りはじめるまでの不安・緊張はたまらない。
5時半、懸垂下降を始める。
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取り付き付近よりコルを見上げる |
ここから下部は、雪のないクーロアールがロニオンに向かって下りている。
万が一敗退した場合は、こころ下りなくてはならない。
落石の巣になることだろう。
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取り付き |
取り付きにて |
昔、クラブの先輩から教わった、ウエムラ方式をセットして登り始める。
バーネットシステムの改良版といったところか。
この手のクライミングには、シンプルなシステムがいい。
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大テラスで順番待ち |
見上げればパラが。 |
それにしても、順番待ちが多い。
ソロだと登り返しの前に、後続に登られ、どうしも待ちが多くなる。
ひどいやつは、人のアンカーでビレーして、人のフレンズにもランナーを通していきやがる。
3週間ぶりの好天は、思わぬ大渋滞をうみだした・・・。
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11P目にツエルトをはる |
モンブラン夕景 |
結局11ピッチした登れなかった。
う〜ん。上部のテラスには、雪があると聞いていたので、コンロはもってきたのだが・・・。
ここには、雪はなし。
セーブして飲んだ、ボトルの水を大事に飲む。
5時30分 コル発
7時25分 登攀開始
20時00分 11P目のテラスでビバーク
8月4日 晴れ
5時に目が覚める。
雪がないので、あかるくなるまですることはないが、早く起きてしまった。
6時半登攀開始。
本日も怒涛の順番待ちだ。
これでもかというくらい、後続に抜かされる。
かといって、ノーロープでは登れない・・・。
ダメもとでGiveMeWaterを繰り返し、少々の水分補給をする。
天気がいいだけに喉が渇く。
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待ち時間に撮ったグランドジョラス |
ビバークポイント |
夕方、リードして懸垂する際、フリーの方のロープに8環を通して下降してしまった。
下降中、ふと下を見ると、ふらふらゆれたロープの端が目に入る。
あわてて、ユマールをセットして、下降側のロープに8環をセットしなおす。
危なかった。事故っていうのは、こうして起こるのだろう。
気を取り直して、クリーニングする。
岩陰に氷の塊を見つけ、そこでビバークすることにする。
本当は、今日中に抜けたかったが喉の渇きには、勝てない。
砂まじりの氷をゆっくり溶かして、パンとコーヒーの食事。
6時半 登攀開始
21時20分 ビバークポイント
8月5日 晴
5時半起床。
寝過ごしてしまった。疲れていたのだろう。
水もどしモチとコーヒーの朝食をとって6時50分登攀開始。
12時、肩に抜ける。
あと3P程度で頂上のはずだ。
ここからは、下降路である炎の岩稜にトラバースすることができる。
どれくらい迷っただろう。
僕は、炎の岩稜へトラバースを開始していた。
1つは、今日中にシャモニに下りないと、飛行機に乗り遅れる可能性があること。
もう1つは、時間がかかりすぎているので、スネルの神田さんがヘリを飛ばしてくれるかもしれないと思ったこと。
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肩から上部を見上げる |
お疲れの我輩 |
今回もマリア様には、会えなかったが仕方ない。
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炎の岩稜へのトラバース |
潔く?トラバースを終えて、炎の岩稜を懸垂とクライムダウンを交えて下降する。
何度か、ロープがひっかかり、登り返す。
6時50分 登攀開始
12時00分 肩
16時50分 炎の岩稜のコル
17時20分
20時50分 シャルプア小屋
ヒュッテに泊まることにする。
小屋番のおばちゃんは、カフェオレを振舞ってくれ、ドイツ人パーティはワインをおごってくれた。
疲れきった、日本人を哀れに思ったか、お疲れ様と思ったか・・・。
ありがたくいただく。
これで、飛行機には乗り遅れた。
8月6日 晴
6時40分起床。
7時20分ヒュッテ発
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小屋番のおばちゃん |
ゆっくりと下りる。
シャモニの駅につくと、クラブの先輩のEさん、知人のKさんが迎えにきてくれた。
今日下りてこなかったら、ヘリを飛ばすつもりだったとのこと。
心配を掛けてしまった。
お詫びにオイルフォンデュとビールをおごり、スネルの神田さんに誤りに行く。
リコンファームの取り消しの電話をするが、土曜の午後は休みのよう。
あきらめて、午後はのんびりすごす。
ロジエールキャンプ場泊。
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キャンプ場にてEさんと |
7時20分 ヒュッテ発
10時00分 モンタンベール
8月7日 晴
お土産など、お買い物をしてすごし、Eさん、Kさんの見送りをうけてシャモニを発つ。
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シャモニ駅 |
シャモニの町並み |
8月8日 雨のち晴れ
パリの朝は、雨だった。
電車の中で、時計をなくす。
取られたのかな??
ドゴール空港では、乗り遅れた航空券で、ひたすらゴネてなんとか、乗せてもらう。
8月9日
バンコクでも「このチケットでは、乗れない」を繰り返されるが、やはりひたすらゴネて乗せてもらう。
まあ、なんとかなるもんである。
今回得た、教訓。
・アルプスに人気ルートには、ソロでいかぬこと。特に、久しぶりの好天の時には。
・アルプスの壁は、早く登らなければならない。
まあ、いい経験にはなったし、今思えば、懐かしい思い出である。
しかし、ドリュのマリア様に会いたかった・・・。
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