ハーシェル紀行
2002ハーシェル・ツアーに参加して(1)


大金要次郎

 2002年のハーシェル・ツアー第1日(3月15日)はヒースロー空港・パディントン駅経由でバースへ直行し、夜遅くにホテルへ到着しました。翌第2日(3月16日)の午後ハーシェル博物館へ向かいましたが、同館はかなりの規模での改装が行われておりまして、地下の映写室が "The Star Vault" として再開するオープニングセレモニーの当日でありました。そのため、P. ムーアさんほか、昨年のツアーでスラウ市のセント・ローレンス教会ほかをご案内下さったA. ファニングさんなど大勢の方が来館されて、セレモニーの行われた博物館内の部屋には入りきれないほどの盛況でした(ニューズレター第114号[2002年6月]5ページ参照)。

"The Star Vault" のオープニング・セレモニー
(中央にムーア氏、右にファニング氏と木村氏)
 今回の改装のため地下の作業室(ハーシェルの作業室の復元)はすっかり片づけられていて、階上の展示室の展示品もかなり少なくなっているようでした。お目当ての "The Star vault" ではムーアさんが監修された新作のDVDが上映され、3回ほど入れ替えての大入りの見学でした。たまたま本番前の試写を見せていただきましたが、このDVDはW. ハーシェルの活躍を歴史的な物語として分かりやすく映像化したもので、ハーシェル博物館で上映するのには大変ふさわしく魅力的な内容となっております。昨年上映されていたCG主体の宇宙旅行ものとは比較にならない良い作品といえるでしょう。ただ残念なことにハーシェルが反射鏡を研磨している様子を示す映像が、金属ではなくガラスの鏡材を片手に持ち他方の手にした布でレンズを拭いているかのような動作で再現されておりました。同館に展示されているハーシェルの7フィート望遠鏡のレプリカを作成されたM. タッブさん(当日の映写担当)がたまたま私のすぐ後ろに座っておられたのですが、私に「あれは誤りだ」とささやいておられました。やはり気になっている様子でした。


 今回のツアーの目的の一つに、同氏が作成された7フィート望遠鏡のレプリカに、福村治雄氏が研磨する金属鏡が取りつけられるかどうかの調査がありました。このレプリカには現在ガラス鏡が納められているのですが、オリジナルの7フィート望遠鏡に一層近づけるために金属鏡を納めようと云うのが本来の目的です。タッブさんはハーシェル関連の歴史やハーシェルの望遠鏡について非常に詳しく研究をされておられるようですが、7フィート望遠鏡のレプリカ作成にあたっても、光学系以外は細部に至るまで極めて忠実にオリジナルのものを再現していることが分かりました。レプリカの木部の材質・塗料や金属加工の仕上げに至るまで十分に配慮して、非常にていねいな加工をされていることが今回よく分かりました。

英国ウィリアム・ハーシェル協会の年会で
日本ハーシェル協会のホームページの説明をする木村氏
 ところで、タッブさんのお話を伺いながら、記録のための写真を撮っている間に予備のフィルムをホテルに置き忘れていたことに気づきました。タッブさんにフィルムを売っている店を教えていただこうとしましたら、セレモニー開会前のご多忙な中にもかかわらず、カメラ店まで案内してくださいました。道すがら、タッブさんから、「ハーシェルはこのあたりに住んでいたこともあるのだが、今はその建物が失われている」したがって、「この石畳の道はW. ハーシェルも歩いたはずだ」とか、「バースの空でたくさん見かける鳥は、ここが海から遠いにもかかわらずseagullと呼ばれている」というようなお話を聞かせていただきました。

 ツアー第4日め(3月18日)はバース駅からからロンドン経由でノーフォーク州のディスへ列車で移動し、ディス駅からタクシーで15分ほどのハーレストンという小さな町にあるジョン・ハーシェル・ショーランド邸のすぐ近くのホテルに入りました。

 同氏のアーカイヴズへの昨年に続く訪問にはいくつかの目的がありました。木村精二氏にはハーシェル家の紋章についての精査があり、私にはカロライン・ハーシェルの靴の装飾バックルを見せていただくことのほか、ウィリアムが天王星を発見したときに使用した可能性があるいわれれている7フィート望遠鏡の反射鏡のフーコー・テストという大きな目的がありました。アーカイヴズへの訪問はツアー第5日(3月19日)の約束でしたので、第4日(3月18日)のハーレストンのホテルでの夕食にはショーランドご夫妻をご招待させていただきました。ショーランド氏がロールスロイス社のエンジニアであったことやフルートがお上手であること、来日されたこともおありだとか、奥様はスコットランドのご出身であることなどいろいろとお話をしていただけました。


2002ハーシェル・ツアーに参加して(2)

ハーシェル紀行トップにもどる

日本ハーシェル協会ホームページ