ハーシェル紀行
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通常のフーコー・テストでは鏡を望遠鏡からとりだして行いますが、望遠鏡や鏡へのダメージを心配して、望遠鏡に鏡をとりつけたまま望遠鏡を水平方向に傾けて筒先の方向からフーコー・テストを試みました。そのため、斜鏡による遮蔽が生じるわけですが、たまたま主鏡の光軸がかなりずれており、鏡面中央部の様子も伺うことができました。ナイフの位置は焦点付近で1mm間隔、焦点内外では2mm間隔でフーコーの影の写真撮影を行いました。
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写真の黒みの測定など詳細な解析は近日行う予定ですが、フーコー像からは次のことがわかります。二重球面のような不連続がなく、大変スムーズな鏡面で、焦点内外の写真から多少過修正と判断できました。影の上下に非対象がみられることから、非点収差があると思われますし、ターン・ダウンも認められますが、フーコー・テストが知られていなかった18世紀後半の望遠鏡としては非常に良く見える望遠鏡であったろうと思われます。また、金属鏡でありながら反射率がかなり良く保たれているのも驚異に思えました。ただし、後日木村精二さんが調査されたTRANSACTIONS OF THE OPTICAL SOCIETY Vol. 26 No. 4(ニューズレター第115号[2002年8月]2〜4ページ参照)によりますと、1924年に鏡面のフーコー・テストとゾーナル・テストを行った際に、かなり汚れていたのでエーテルとレモン・ジュースで洗浄したと記録されていましす。またその時のゾーナル・テストの結果は幾分負修正と記録されており、今回の私のフーコー・テストの結果とは異なっています。この点については今後の課題となりました。
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ショーランド氏のアーカイヴズに保管されているハーシェル家の数々の遺品の中から、昨年も拝見させていただいたカロライン・ハーシェルの「靴のバックル」を特に選んで、明るい2階の部屋で見せていただきました。昨年(2001年10月)のニューズレター第109号7ページには、大ぶりのラピスラズリとご報告いたしましたが、それは1階の暗い部屋で拝見したものでしたので、そのように見えてしまったものでした。詳細に観察させていただきますと、ラピスラズリではなく、濃紺の皮製のバックルで、周囲に大きなマーカサイトが三重にとり囲んでいるもので見事さには変わりがありません。そのような事情ですので昨年の記事を訂正させていただきます。また、どういう理由なのかこのバックルが保管されている小箱の中に、カロライン・ハーシェルの遺髪もいっしょに納められています。
40フィート望遠鏡の中央の位置にあった日時計
ショーランド氏のアーカイヴズの見学を終えて、玄関先でご挨拶をしているときに、入り口のそばに日時計が設置されているのを見つけました。ジョージ時代風のデザインの台に青銅製の本体がのせてある、ごく普通にみられる形の日時計です。しかし、天の北極を指す三角板が北を向いていないような気がしたので、ショーランド氏に伺ったところ、反対の南を向いているとのことでした。ただこの日時計は、あの40フィート望遠鏡の三角やぐらの中央に置かれていたものだというお話でした。こうした貴重な品がエクステリアとしてさりげなく置かれているというのは、ハーシェル家ならではでないでしょうか。