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![]() 鏡の裏面に取り付けたハンドル |
![]() 盤へのピッチの流し込み |
![]() 溝切りを終えたピッチ盤 |
10月末から11月中頃にかけて、#1000と#2000のホワイト・アランダム(WA)による仕上擂りを行いました。はじめは#600でできた軽い双曲面の影響で、研磨運動が重くひっかかる感じでした。ガラス鏡では鏡径の1/4程度の短い往復運動を続けると完全な球面となり、ほとんど抵抗のない軽い運動になっていくのですが、重い感じとややひっかかる感じがいつまでも残ります。#1000で2時間、#2000で1時間の研磨を行った頃、これは鏡の裏面を手で触れていることによる手の熱の影響で鏡面の中央が窪んでしまうのではないかと考え、鏡の裏面に直接手で触れなくてすむようにハンドルをとりつけました。通常ガラス鏡ではピッチ研磨の段階で鏡の裏にハンドルをつけるのですが、これを一段早めて仕上げ擂りで取り付けることで成功したように感じております。それでも重い研磨運動の感じには変わりがありません。ガラス鏡での仕上げ擂りの所要時間の2倍の時間をかけて何とか完了させました。
その後別件ですが、7年前から継続しているベテルギウスの測光観測の結果を郡山で開かれた「連星/変光星ワークショップ2003」という研究会に報告する準備と事後の集録用の原稿に追われて、作業は一次中断し、11月末からピッチ盤用のピッチの硬さの調整に入りました。これから気温が低下していくのでどの程度の気温に合わせるかが気になりましたが、早めの寒気の襲来もあって、10〜12°C程度の気温に適するように調整を進めました。そのため軟らかいピッチを注文しましたが、特注になるので20kg単位での受注とわかり、モ−ターオイルを混入させて軟化させました。モーターオイルは少量入れて溶かしては冷やし、軟化の度合いを確かめましたがなかなか軟化せず3回目の混入後に一度ピッチ盤を作成しました。しかしこれは軟らかすぎのため諦めて、硬いピッチを混入させてピッチ盤の造り直しとなりました。ピッチの溶融は沸騰させないために徐熱が必要で、硬さのテストのための冷却と調整のための加熱を繰り返すのには大変な時間がかかります。12月10日になってようやくやや堅めのピッチ盤ができあがり、碁盤目状の溝切りをすませました。
日本ハーシェル協会ニューズレター第126号より転載
2004年7月、原稿の一部を訂正