ハーシェルたちの肖像
カロライン・ハーシェル


C_Herschel

自立を求めた女性の物語

 C. ハーシェル (1750-1848) はウィリアムの12歳年下の妹です。1772年に兄ウィリアムに連れられてハノーバーからバースに移り住み、ウィリアムの手伝いを通じて天文学に目覚め、女性天文学者の先駆けとして知られています。彼女の貢献は反射望遠鏡の鏡の研磨作業、観測データの整理から、自らの観測活動では女性初の彗星発見者になりました。また、晩婚だったウィリアムのために家事一般を引き受け、彼の結婚後は甥ジョンの世話まで、彼女自身は一生独身のまま兄への献身を続けました。

 ハノーバーでは教育を受ける機会もなく、決して恵まれた少女時代ではありませんでしたが、それでもカロラインはずっと自立する道を探していました。バースでソプラノ歌手としての訓練を受け、かなりの成功を収めたにもかかわらず、ウィリアムが天文学にのめり込んで音楽活動を捨ててしまうと、カロラインもまた歌手として自立する道を断ち切られて天文学のアシスタントになっていくのです。

 カロラインがその後天文学を愛したのは事実です。しかし、せっかく訪れた自立へのチャンスを見送ってしまった彼女の胸には、後悔にも似た想いが残っていたかもしれません。彼女が兄ウィリアムの死(1822年)の後、98歳までの長い晩年を過ごしたハノーバーの自宅にはヨーロッパ各地から高名な学者たちの表敬訪問が絶えませんでしたが、偉大な天文学者としての栄誉にもかかわらず、ひっそりと寂しい最期だったようです。

この小論は日本ハーシェル協会によるものではなく、ウェブマスターが独自に書いたものです。


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