Happy!



― 1 ―



「今日の体育祭、この雨やで中止や」

朝のSHRに担任から発せられた言葉。
止むどころか激しく叩きつけるように降り落ちる雨。

「やっぱ中止かァ・・・」
「髪形もメイクもせっかく気合いいれたんに、台無しやんな」
「オレなん、いつもより2時間も早よ起きてしもたで」

体育祭は中止になるであろうと予測はついていたものの
改めて告げられた言葉に、非難と溜め息の声が教室を包む。

「化粧してんのは授業前に落としとけや。カラースプレーで髪の色変えたんも
ちゃんと落としとくんやで。っちゅーか、色変えたんは減点の対象やで」

担任の言葉など耳に入っていないという様子で
和葉はただひとつ、ぽっかりと空いている席を眺めていた。

(平次、どないしたんやろ・・・?)





「・・・ヘックション!」
「アホやなァ・・・。体育祭の前の晩やっちゅうのに、事件や言うて雨ん中走り回っとったからやで?
事件に首突っ込むなとは言わへんけど、そのせいで風邪引いたやなんて、本末転倒やわ」
「しゃーないやんけ。事件がオレを呼んどるんやから・・・ックション!」
「今日は和葉ちゃんも学校に早よう行ってしもたから、電話入れられへんかったわ。
平次、アンタちゃんと後で和葉ちゃんに連絡しとくんやで?」
「へーへー。っちゅーか、午後からでも学校行くし」
「何言うてるん、今日はゆっくり休んどき。この雨やし、体育祭は中止やろ?
明日ちゃんと行かれるように、早よしっかり治しや」
「そんな休むほどやない・・・で・・・ッグシュン!!」

強気な言葉とは裏腹に、熱はどんどん上がっていく。

(昨日の雨くらいで倒れるヤワとちゃうハズやのに・・・)

普段だったらこの程度で熱を出したりするような身体じゃない。
だがこの半月、日常生活をはじめ体育祭の準備や事件に追われっぱなしで
疲労が溜まっていたことは否めない。
ましてこんな風に、梅雨のせいでじめじめとした日が何日も続けば
ただですら体調がおかしくなりやすい。
そこに一晩雨に打たれては、さすがの平次もキツイだろう。
体温計は38.5℃を指していた。





――ピリリ・・・ピリリ・・・


どこか遠くで機械音が響く。
微かに起きている意識のどこかで、その音をキャッチする。

(・・・まぁ、ええわ・・・)

残された意識も、眠りに落ちた。







――ピリリ・・・ピリリ・・・


今度はハッキリと耳に届く音。
枕下に置いていた携帯が音を立てていた。
熱のせいで定まらない視界の中、どうにか携帯のディスプレイを見る。



― 不在着信 ―

遠山和葉
13:02





(・・・ああ、和葉か・・・)

いつの間にか眠っていたことに、携帯の時刻で気づく。
よくよく見ると、ディスプレイにはメールの着信が幾つかある。
ダチからの「どないしたんや、明日は来れるんか?」といった内容のメール。
メールを遡るにつれ、今日最初に届いたメールが和葉からのもだと気づく。
受信時間は1時間目が始まる直前の時間。
平次が眠りに陥りかけた時間である。

(・・・全員に連絡するのはしんどいわ・・・和葉に連絡しとけばエエやろ・・・)


喉が熱くてイガイガする。
朝熱を測ったときよりも確実に上がっている。
どうにか測ってみると、39.2℃もある。
話すのはとてもじゃないけど無理だろう。
朦朧とする意識の中で、休み休み携帯のボタンを押した。









えーと、えーと、平次と和葉ちゃんが通う学校は多分ええトコなんだと思われるので
メイクしたり洗えば落ちるヘアスプレーで髪の色を変える生徒がいるかどうかわかりませんが
大抵の高校は体育祭とかはちょっとハメ外すかな、と思ったのでそうしてみました。
さてさて、平ちゃんの体調はいかに?









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