especially




―1―





「来週、父さんの受賞記念パーティがそっちであるんだよ」

そう新一から電話が入ったのは、1週間前のことだった。

「でも父さん、仕事が詰まってて缶詰状態らしくてよ。ロスから帰って来れそうにないんだよな」

いつもとは逆で、新一からの一方的な会話が進む。

「それでよ、仕方ねぇから代わりにオレが出席することになったんだよ」
「ちょー待てや。珍しくそっちから電話寄越したかと思っとったら、それがどないした言うんや?」
「あれ、言わなかったか? そのパーティ、大阪でやるんだぜ?」
「は?」
「だからー、大阪でやるからそっちに行くって言ってんだよ」

一瞬、新一の言っていることが理解できなかった。
平次は受話器を握り締めながら、どこかぼんやりしていた。

「なんや、大阪に来るんか?」
「そー言ってんじゃん。ベツに一々服部に言わなくてもいいかと思ったんだけどよ
オメェのことだから、何で大阪に来ること言わなかったんだ、ってあとで怒りそうだと思ってさ。
それに蘭も一緒に連れてくっからよ、ついでに服部ん所も寄ろうかと思ってな」
「おー、なんぼでも来たれや。またうまいもん食いに連れてったるわ」
「ハハ、そりゃどーも。それでよ、その授賞式、服部も来いよ」
「あん? ・・・イヤ、オレはええわ」
「どーしたんだよ、珍しいな。いつもだったら誘われる前から行くとか言い出しそうなのによ。
こっちもふたりで行くんだし、服部もふたりで来いよな」
「ふたりっちゅうことは、アレやろ、和葉も連れて来いっちゅうことやろ?」
「他に誰がいるってんだよ。そしたら蘭も喜ぶし、服部もひとりで来るよりいいだろ?」
「せやからオレはええって。どーしても言うんやったら、和葉だけ誘ったってくれや」

いつもだったら食いつきそうな話題に、平次は乗ろうとしない。
それどころか、むしろ迷惑そうな感じすら受ける。

「服部、オメェどうしちまったんだよ? らしくねぇじゃん」
「そんなことあらへんけど・・・」
「そんなあからさまな嘘でごまかせると思ってんのか?」
「・・・ベツにたいしたことあらへんって」
「ふーん、まあ服部が口を開かないんだったら、もうひとつの手を使えばいいか」
「おまえのことや、どうせ姉ちゃん使うて和葉に聞くんやろ?」
「ご名答」

隠すだけ無駄だヨ、と言いたそうな口調。
だから平次もあえて自分から語ろうとはしない。

「勝手にしたれや。まあパーティには行ってやってもええけど、和葉誘うのはそっちでやってや」
「ったく、せっかく誘ってやったのになんだよその態度は。どうせケンカしたとかその辺だろ。
ちゃんと自分で誘って来いよな。じゃあまた電話すっから」
「おい、コラ工藤! ちょー待ちや!」

ツーッツーッツー・・・―――――
虚しい機械音だけが、受話器の向こうに響いた。



あの電話から1週間、和葉には「工藤と姉ちゃんが来週来るから、週末空けとけや」と
メールで伝えただけだった。
向こうからの返事も「わかった」の一言だけだった。



ケンカしたままの1週間。
イヤでも1週間後には顔を合わせることがわかっていただけに、却って仲直りすることもなく
お互いただ悶々とした、気の晴れない日々を送ることになってしまった。

「まだケンカしてんのかよ? ったく明日のパーティは5時からだからよ、4時半にホテルのロビーで
待ってっから、ちゃんとふたりで来いよな」

新一からの電話を切った後、半ば諦め気味に和葉の番号をコールした。

   トゥルルルルルル・・・トゥルルルルルル・・・

コール音が響くたび、手が汗ばんでいくのが分かる。

      トゥルルルルルル・・・トゥルルルルルル・・・

鼓動が少し早くなる。

         トゥルルルルルル・・・トゥルルルルルル・・・

一向に出る気配がない。

            トゥルルルルルル・・・トゥルルルルルル・・・

諦めて切ろうとした瞬間、懐かしい声が耳に届いた。

「・・・ハイ」








こんな所で切っておきながらスミマセン、続きはどんなに早くても1週間後です。
ちょっくら旅に出ますので。そりではまた〜。











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