禁断の愛に溺れて 第4話

2001年3月4日

祝 一週間!!!

 御声援ありがとうございました。
 大きなヤマだと思われた、土曜日のクラブでもとうとう一本も吸わないでいられました。

 友達にそのことを自慢したら
 「よく、誰にもちょうだいって言わないで済んだね〜」
 と感心されました。

 喫煙者の友人がいなかったのも幸いしたんですけどね。

 行ったことのある方はおわかりでしょうけど、どこのクラブに行っても、喫煙者はとても多く、ライターの貸し借りは当たりまえという「パリの町角現象」も多発しています。それにフロアの中で吸ってると、けっこう「一本くれない?」などと声をかけられるんですよね。それが、かっこいい男の子だったりすると「もしかして・・・」と淡い期待をしてしまうのですが、そこは世界最強のニコチン中毒、「あ、この人、タバコを持っている。それに親切そうだからきっと一本くれるにちがいない」という理由だけで声をかけてくるのはよ〜くわかってますって。

 コンサートでもクラブでも、「みんなが一斉に火をつける瞬間」というのがあって、コンサートだとアンコールの時とか、少しテンションが下がったときに、あちこちで「カチっ」「カチっ」と音がします。その音を聞くと他の人もついつられて、「カチっ」となるわけで、今回はその音を聞くのが辛かったです。

 日記にも書きましたが、内容がほんとによかったので、ダレることなく朝を迎えられました。これがつまんないパーティーだとタバコ吸う以外になにすればいいんじゃってことになりますからね。

 でも、やはりピークは越えたと言っても、クラブで我慢するのは茨の道でした。それに行きなれたハコだったので、だいたい「ここで踊る」とか「ここで休む」とか決まっていて、「ちょっと休憩」と思っていつもの場所に座ると「はああああ」となりました。
 そういうときは舞台に立っているLTJブケム氏を見つめ、「ブケムさんの電話番号を聞き出せたら煙草を吸おう」(英会話の壁のことは忘れていた)「ブケムさんはきっと煙草を吸う女は嫌いだ」とか、頭の中で念じてました。

 というわけで、一週間が経過いたしました。
 たしかに、今にしてみれば先週の一週間はなにか遠い昔の出来事のように感じられます。
 別れた男を想って、一週間ビービー泣いていたくせに、ふと気が付くと「あれ?どんな顔だったけ?」というような感じで、すでにリアリティがかなり減少。

 さて、自分では「すごい!一週間だよ!」と盛り上がっていますが、「禁煙に失敗した人」のデータでは「2,3週間」で脱落したというのが全体の3割くらいでした。たしかに、肉体的な「愛の嵐」は過ぎ去ってしまい、かなり凪いでしまいますので、緊張感はなくなります。それに、この一週間がとてつもなく長く感じられているので「もうこれだけやったんだから充分だろう」と、ついつい考えたくなります。

 一番、足をひっぱりそうなのは「なんだ、この調子だと、このままやめられそうだ。けっこう、簡単なんだな。だったら、いつでもやめられるんだから・・・・・」と、思い「一本くらいなら」と誘惑に負けそうになるのです。

 1ヶ月を経過するまでは「なるべく酒の席は避ける」というのが番組でもアドバイスされていました。
 周囲が皆吸っていると、ついつい吸いたくなるし、お酒で気が緩んでいるので「一本くらいなら」と手が伸びてしまうのでしょう。

 一週間目でもそうだったのですが、これは私だけなのか他の方もそうなのかわかりませんが、不思議と「他人が吸っていると、とても吸いたくなる」ということは今だに少ないです。
 ただ、ときどきふと思い出すのです。それがかなり唐突で、しかも先週のような周期的に襲ってくる「はああああ〜〜〜」な衝動ほど強くもなく、なんと表現すればいいのでしょうか?先週の私が頭の中で飼っていたのが、エサをほしがりピーチク・パーチク騒ぐ雛だとすると、今週飼育していたのは「もの静かで、わりと内気な女友達」っていうところでしょうか?

 彼女がときどき現れて、淡々と語りかけてくるのです。

 「今だったら周りに誰もいないしさあ、そこに誰かのタバコが置いてあるから一本もらっちゃてもいいんじゃないかなあ?」
 「やっぱ、ご飯食べたあとって、吸いたいと思わない?」
 「電話していると、ついつい手がタバコを探しちゃうよね〜」

 彼女は普通のことを普通の調子で語り掛けてくるので、ついつい「そうだね〜」と相づちを打ちそうになってしまいます。

 中学校の時のとある体育の先生が得意としていたゲームを思い出します。「赤上げて、白上げて」の旗揚げゲームに似ていたのですが、「タヌキさん」とか言う名前で、先生が「座りなさい」とか「右手を上げなさい」とか言うのですが、その命令の前に「タヌキさん」と言ったものだけが有効な命令なので、「タヌキさん」抜きの命令で動いてしまった人はアウト。その先生が上手なので、けっこう皆ぼろぼろアウトになってしまいました。

 先生のテクニックは最初はかなり頻繁に命令を出します。そして「タヌキさん」も交互に言ったり言わなかったりして、そのリズムをちょっと狂わせると生徒は面白いくらいにひっかかります。だいたい、皆「タヌキさん、右手を頭の上。タヌキさん、左手も頭の上。・・・・・じゃあ下ろしていいです」で半分以上の生徒がアウトになっていました。
 
 そこで残るのはわりと集中力の高い生徒です。私もそこまではわりと残りました。今でも憶えているのは、最後に「タヌキさん右手を上げてください」と言ったまま、下げさせてくれないのです。私はその時点でなにをやろうとしているのか読んでしまったカワイクない中学生でしたが、案の定、先生はしばらくあまり命令を言わなくなります。皆が「手がダルくなってきたなあ・・・」と思うころに、先生が「ああ、手がそのままになってましたね。じゃあ、下げていいです」と言うとかなりの生徒が下げるのです。一瞬の間の後、ギャアアアア!と大騒ぎ。

 そういう集中力の切れ目がちょうど今なんだと思います。

 悪い男とは手が切れましたが、「別に付合っててもよかったんじゃないのお?」と無邪気に語り掛けてくる女友達の登場に気が抜けません。
 私としても、すっぱり別れたのはいいのですが、よくよく考えてみるとそもそも「別れる理由」がなかったので「あれ?そうだよなあ?」と説得されてしまいそうです。

 今のところはまだあの「禁断症状」の辛さの記憶が生きているので、「せっかくあれを乗り越えたのだから、もったいない」と、自分の貧乏性をフル活用してがんばっていますが、「喉元過ぎれば・・・」となってしまうとヤバイでしょう。そういう意味でも「2,3週間」とはなるほど、3週間を過ぎると「もうちょっとで一ヶ月!」とまた緊張感を保つことができますので、今の時期が緩むときなのでしょう。

 さあ、そういうわけで、今日で2週間経過したのです。
 多分、来週もこんなかんじで、だらだら続くのだと思います。 


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