夢見る頃を過ぎても 8


今回ご紹介します私の夢はなんと!

マリリン・モンローのドレスが着たい

 という、かなり自分の容姿を無視した無謀な夢なのでありますが、くれぐれもマリリンのファンの方はこれを読んでも怒らないでください。もしくは、私がマリリン並みにナイスバディで美しい女性だと想像して拳を押さえてくださいますようお願いいたします。

 数ヶ月前、サザビーかどこかの有名オークションにモンローのドレスが出品されました。
 競売前からけっこう話題になっていて、いったいいくらの値がつくのだろう、誰が買うのだろうと興味深々だったのですが、意外に安い金額で落札されたように思います。そうせ私には手の届かない金額ですので、正確な金額は失念してしまったのですが、「マリリン・モンローがケネディ大統領の誕生パーティーでバースデイソング唄ったときのドレス」ですから、ケネディおたく(?)の方々も食いつくと思っておりましたので、もっと高値がつくものなのかと思っていたのです。

 というわけで、今回の私の夢は「あのドレスを着て、ハッピーバースデイを唄う」というものです。要するに、本物のドレスを着て「マリリンのものまね」という宴会芸をやりたいということです。

 夢の実現の為にはまず、あのドレスを購入した方を探さなくてはいけません。
 うまいこと探し当てたら、パーティとかに潜入して出会いのチャンスをうかがいます。まんまとお話しできても、いきなり「あの、例のドレス着てみたいんですけどお」なんてはっきり申出たら、その場でグーで殴られるか、下手するとオズワルドがJFKを狙撃したのと同じライフルで脳天に一撃さる可能性もあってかなり危険なので、そこは慎重になる必要があるでしょう。
 ベロベロに酔わせて、前後不覚にして書類(ミヤノさんに一日あのドレスを無料貸与する旨の念書)にサインさせるとか、しばらく張り付いて浮気の証拠写真を撮って脅迫するとか・・・。所有者の人物像が不明なので作戦を練る材料が不足しています。

 まあひょっとしたら、この私の美貌を先方が認めてくれて、「君だったら着てもいい」とおっしゃることもあるかもしれません!。
 などと、好き勝手言っていますが、しかし実は私、それほどモンローが好きなわけではありません。それに別にああいう女性になりたいとも思っていません。

 ただ、あのドレスを着て「ハッピーバースディ」を唄っている姿がとても印象的で、いつ観ても夢心地になるのです。
 映像が粗いせいもあるのでしょうけれど、マリリンのプラチナブロンドと白いドレスがぼんやりと輝き、けだるそうな仕種のマリリンが(睡眠薬中毒説もうなずけます)さらにけだるくハスキーな声で囁くように唄うあのシーン。まるで闇が降り立った荒涼とした海原の波間で真珠が一瞬だけ輝いたかのような、せつない夢の瞬間です。
 あの映像に同じように酔いしれた人は世界中に数知れないと思います。

 そして私はそういう「テレビによって何億人もの脳裏に焼き付いたもの」の現物を拝見するのを無上の喜びとしているのです。しかも、それが美しいドレスなんですから、女性としてはやはり袖を通してみたいと考えるのが普通でしょう。
 マリリンのドレスを着るという行為には、あの映像の中心に自分を取り込んでみたい、そしてあのとき人々がマリリンに浴びせた熱い視線をバーチャルに体験してみたいという欲求なのです。

 なーんて、理屈並べてますが、ビビアン・リーが「風と共に去りぬ」で着た衣装はブラジルの「スカーレット」というレストランの女性オーナーが所有しているらしく、実はそっちも狙っています。でもあの衣装は私には似合わないかな?そういう問題じゃないって?
 そんなら「裏窓」でグレース・ケリーが最初に登場するときに着ていたドレスはどこにあるんでしょうね。

 ところで、マリリンのスリーサイズを知らないので、実際あのドレスを着ることができるのかとても心配です。



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