夢見る頃を過ぎても 2


2000年6月10日

  高校生の頃の私の夢はなんと!「誰にも迷惑かけずに好き勝手やる」というものでした。それは漠然と思っていたものではなくて、文集のような後に残るものに書いたはずです。
 その頃からすでに、夢の裏街道を進み始めていたのでした。
 「青年よ大志を抱け!」
 という言葉は私の頭の中を素通りしていたようです。それどころか、「大志とは小志の集合体」という哲学を持っていました。

 その頃私が実現させた小志 とは、

 スイカを一人で丸ごと食べる

  子供の時からの夢でした。でも我が家は5人家族でしたので、それは叶わぬ夢でした。大人になって初給料をもらったら絶対にスイカを買って一人で全部食べるんだ、とスイカを食べるたびに誓っていました。
 
 我が家は毎年夏休みに泊りがけで海水浴に行く習慣がありました。私が高校3年生のとき「受験勉強でそれどころじゃないから海なんて行きたくない」と、申し出ました。1泊2日の家族旅行に行けないほど勉強熱心なわけではありませんでしたが、お年頃だったので家族旅行なんかに行きたくなかったのです。両親は並み程度に教育熱心でしたし、思春期の気難しさもなんとなく理解してくれたのでしょうか、私を一人で家に残すことにしてくれました。
 出掛けに母は、留守番する私を気遣って、「なにか食料を買っておこうか?」と聞いてくれました。私は迷わず「スイカが食べたい」と言いました。「スイカ?丸ごと?」「うん。丸ごと」「一人で食べるの?」「うん、一人で全部食う」「そんな無理よー」「いいじゃん、食べきれなくてもどうせ皆次の日には帰ってくるんだから、残ったら食べてくれるでしょ?」「そりゃそうだわ」
 と、母を理詰め(?)で説得し、まんまとスイカを買わせました。

 さあ、家族が出掛けて行ったあと、さっそくその日の昼にスイカを食すことにしました。まず、4分の1食べました。

 「ああ、夢が叶うのだ・・・・」

 感激しました。

 その日の夕飯も当然スイカです。2分の1を平らげました。

 「はあ・・・幸せ」

 そして、翌日は昼頃起き出して、残りの4分の1をブランチにしました。

 「夢が叶った・・・」

 結局、家族がいない間、私はスイカしか食べなかったのでありました。
 余談ではありますが、そのあとしばらくしてトイレに入ったら、「赤い物体」を産み落としました。それを見てなんだか幸せの結末を見るようなすがすがしい気分に浸り、それを流してしまうのがしばしためらわれたのをよく憶えています。

 これと、似た類の夢もありました。


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