麦ご飯が食べたい
私と同じ世代の方は体験していると思いますが、給食のご飯の上にうっすらと「押し麦」が混ざっていませんでしたか?
地方によっても違うとは思いますが、あのころの健康ブームで麦を混ぜるご飯は一般の食卓でも流行ったと思います。ただ、戦時中や戦後の食生活を体験した方には、「麦ご飯」というものは悪しき思い出に他ならないようですが、そういう体験をしたことのない私にとって「麦ご飯」というのは「珍しい食感の食べ物」でした。
我が家でも、ときどき麦を混ぜたご飯が食卓に並びましたが、私は「麦だけのご飯」も食べてみたいといつも夢見ていました。
そこである日、その夢を実現すべく母にお願いしました。
「ねえ、麦だけで炊いてよ」
「そんなの美味しくないわよ」 と、母。
「でも、麦ってぽろぽろしてて美味しいと思うけどなあ。一回でいいからやってよおー」
「ぜったいに美味しくないって。だからちょっとしか入れてないんじゃない」
「一回やればわかるからさあー」
相当ごねました。意外にも我が家はわりと「ぽろぽろしたもの」が好きのようで、弟も妹も「やってみたい」と言い出したので、母も渋々承諾してくれました。
さっそく翌日、「麦100%のご飯」が炊かれました。
よそった瞬間から「おしん」な気分満喫です。
母は気を遣って、「とろろ」や「生卵」といった「麦飯」に合うアイテムを用意してくれましたが、私はそんなもんも必要ありませんでした。たしかに白米の代用品だと思うと、あまり美味しいものでもないのかもしれませんが、まったく別のものだと思えば、これはけっこういけます。
その後、独り暮らししてからも自分で麦ご飯を炊いたりしていました。
あとでわかったのですが、私は日本の白米よりも、長粒米(インドや東南アジアでは一般的)のほうが好きみたいです。粘りのある米よりも、ぱらぱらとした米の方が好きなのです。なかなか長粒米は手に入らないので、タイカレーなどを作ったときには、わざわざ麦飯を炊いて、気分だけ味わったりしました。
あまり夢というほどのもんでもないですね。でも、こうやって小さな夢が叶うということは幸せな人生なのでしゃないでしょうか?
もうちょっと夢らしいことも書きましょう。