「CAN YOU CELEBRATE? について考える」 


 2000/3/10
 
 このネタはあまりにも時流から外れているのでどうしようかと思いましたが、どうしても納得できないので書かずにはいられません。

 安室奈美恵のメガヒット曲です。歌謡曲に興味の無い人でもご存知でしょう。アムロが産休直前に紅白で唄ったあの曲です。「ふーたりきりだねー今夜からはー少し照れるよね」という歌詞のはずです。あんまり歌詞は複雑ではないはずです。「はずです」を連発するのは、イマイチ自信がないからです。だったら、ちゃんと調べろよ、と自分で突っ込みいれたくなりますが、そんな労力惜しむ気持ちはご理解いただけることが前提として先に進みましょう。
 
 あの曲のタイトル=サビを直訳すると「あなたは祝福できますか?」になります。もっとましな訳し方もありそうですが、あの曲をカラオケで唄っている方々は多分その程度の認識だと思います。「あなたは祝福できますか?あなたは今夜、私に接吻できますか?」これがあの歌のサビだと思います。
 
 とても違和感を持つのは、そういうセリフを言う状況というのが、どうしても想像できないんです。というよりも、私はそんなセリフ吐いたこと皆無なのですが、世間一般では恋人同士でそんなこと言い合っているのですか? だとしたら、なかなか彼氏のできない私としては、自分の重大な欠点を認めなくてはならないので、もしそうだったらどうしよう・・・・
 
 また、弱気になってしまいましたが、そんなはずはないと気を取り直して先に進みます。
 そもそも祝福もしくは「祝う」ということは、普通当たり前のことではないでしょうか。食べるということや、空気を吸うことと同等だと思います。
 普通は一日最低でも1食は食べるし、職場の同僚が結婚すればよっぽどの事情がなければ「おめでとう」といいます。「CAN YOU CELEBRATE?」という言葉にはセレブレイトが可能なのか問わなくてはいけないよっぽどの事情があるのだと思います。そこで、私なりに納得のいく「よっぽどの事情」を考えてみました。
 
 パキスタンの青年が夢を求めてNYに移り住みました。タクシーの運転手をして金を溜めて、10年後には小さいながらも自分の店を持つことができました。努力家で頭も良かった彼は、商売もそこそこに成功させ、今では成人した弟達も呼び寄せ、一緒に店を切り盛りし、やがて複数の店を経営できるようになりました。お金にも余裕が出てきたので、妹も呼び寄せ、アメリカで教育を受けさせ、いずれはもっと上流のパキスタン人と結婚さるためです。彼の望みは一族のますますの繁栄と妹の幸せです。
 
 ところが、そんな兄の願いも空しく、妹は下町のレストランで給仕をしているイタリア人と恋に落ちてしまったのです。兄の落胆と怒りは爆発します。しかし、妹の決意も堅い。ついに、掌中の珠である妹とどこの馬の骨ともしれぬイタリア人青年との結婚式の当日となりました。「おれは絶対に出席しないぞ」と意地を張る彼に、弟の一人が「まあまあ、兄さんの気持ちもわかるけど、ここは妹の幸せを祝ってやろうじゃないか」
 兄はボロボロ泣きながらも毅然と立ち上り、弟の胸ぐらをつかんで叫びます。

「CAN YOU CELEBRATE?CAN YOU CELEBRATE、REALY?」
 お前は祝福できるのか?お前は本当に祝福できるのか?
 
 これだったら、なーんも文句いいませんよ。宗教と人種問題がからむのは、だれしも納得のいく「よっぽどの事情」です。
 
 さて、CAN YOU KISS ME?という歌詞も釈然としません。
 たとえ私が、外国人とそういう事態に陥っても、絶対にそういうセリフは言わないと思います。せいぜい思い付くのは、「CAN I KISS YOU?」くらいまでです。英検2級程度(私もそれです)の人なら思い当たるでしょうが、「CAN I・・・」というのは便利な言葉で、お店で「CAN IHAVE THIS ONE?」といえば「これ下さい」だし、「CAN I  SIT DOWN HERE?」といえば「ここにすわってもいいですか?」なわけで、他にも使い回しがききますし、CANをCOULD(過去形)にすれば、かなり丁寧な言いまわしになります。
 
 だから、もしかしたらネイティヴの方には何の不思議もない言い回しなのかもしれませんが、英検2級の私にはやっぱり「あなたは私にキスできますか?」としか理解できません。こういう事を言わなくてはならない「よっぽどの事情」もやはり想定しました。
 
 美男美女のカップルがいました。はたから見てもうらやましくなるくらいラブラブでした。しかし、ある日女性が車に轢かれ、幸いながら一命は取りとめたものの、その美しい顔には無残な傷が残ってしまいました。彼女は、「こんな顔を彼には見せたくないわ」と思い悩みます。しかし、病室に彼はやってきました。そして、彼女の顔を見て当然ショックは隠せないわけです。しかし、彼は「好きだったのは君の顔ではないんだ。君の心が好きなんだ。だから僕はそんな傷は気にしないよ!」と言います。そんなこと言われたって、彼女のほうは納得しません。彼の目を逸らさずに見つめながらいいます、「でもあなた、こんな私にキスできる?
 
 こういうことだったら、何も文句いいません。どこに出しても恥ずかしくない「よっぽどの事情」です。

 以上のように長年(大袈裟?)悩んでいたのですが、最近になってある友人にこの話をしたら、彼女はあの歌は単純に「おくゆかしい気持ち」を表現していると解釈していたそうです。つまり彼女の頭のなかではどうも「祝福してくれるの?」「キスしてくれるの?」と翻訳していたみたいです。なるほど、そう考えると納得がいくんですが、でもそれって「CAN YOU・・・・・」でいいんですか?どなたか英語が堪能な方、教えて下さい。
 
 なお、似たような疑問が「HATE TELL A LIE についても考える」でも提議されておりますので、ついでにそっちにもお付き合いくださると嬉しいです。
 
 

表紙に戻る / 目録に戻る