ハングリーな親子
(2001年12月11日)

 こゆめのケツのあたりに見えるうにうにと蠢く物体にワタシは軽く動転した。
 いよいよはじまったのだ!!

 すでにダンナはぐうぐう寝ていたが「もしもの時は起こしてくれ」と言っていたから、一応「こゆたん、はじまったよ!」と声はかけてみたが「・・・・・」と熟睡しているようだったのでこの際どうでもよいと無視。これで義理は果たしたし、どうせヤツは役にたちそうもないもんね。・・ちなみにダンナはこの後いつのまにか目を覚まして、気がついたら背後から心配そうにのぞきこんでいました。でもやっぱり別に役には立たなかったけど。(・・・・)

 そんなことより電話だ。ブリーダーさんにデンワだぁ。こんな真夜中に電話して「うまれるぅぅ!!」などと叫んだりしたらほとんどイタ電だが、情けないことにワタシには自力で全部うまくやる自信がまるっきりない。皆無である。(←キッパリとなさけないことを断言すなー!)

 というわけで、ヒトとして申し訳ないとは思いながらもまったく遠慮することなく速攻でブリーダーさんに電話をかけた、結果的にヒトデナシのワタシであった。いやいや、こういうことは結果より過程が大事なんです。・・・ということはまったくありませんね!ご、ご、ご、ごめんなさーーい。

 しかも事前に「どうやらそろそろだ」ということを連絡してあったので、ありがたくもブリーダーさんは寝ないで待機してくれていた。開口一番「はじまったぁ!」と開会宣言(?)してから改めてこゆめの様子をよーーく見ると。ん?待てよ。

 なんか・・・
 アレ?アレ????
 くろっぽい物体が、こゆめのしっぽとおなかの中間あたりで蠢いている・・・?!

 な、な、なんと、最初のいっぴきがすでに生まれ落ちているではないかぁぁぁ。
 がぁぁぁぁん。

 後になって冷静に考えてみると、ワタシが「ついにはじまった!」と気づいたときの「ぴーっ」という高音の鳴き声はこゆめのものではなくて、実は最初の子の産声だったと思われた。
 さすがこゆたん、ニンゲンに助けを求めるでもなければ苦痛の「く」の字も訴えることなく、ひとりで初めての出産を開始していたのである。おおっ、自立した猫・こゆたん!っていうか、ワタシって、ワタシって・・・!

 なんて役に立たないバカ飼い主なんだぁぁぁ!!

 そのためにずーっとずーーっと起きて張り込み(?)していたのに、全然気づかないなんて!情けないにもほどがありますね。ああ〜。

 とにかくワタシの知らないうちに最初のいっぴきは生まれていた。ショックながらもよーくこねこを見ると、黒い。かなーり黒い。なんだか上半身のほうがまっくろで、下半身に行くに従って微妙に色が薄くなっているような気がするのだが、基本的には黒い。もしかしてコレは黒猫ちゃんか?いいね、いいね。(←?)しかし全然泣いてないのが心配でつんつんとつついてみると、うにうに元気に動いている。呼吸がつまったりはしてないかな、だいじょうぶかな。

 っていうか、ちょっと待って。コイツ・・・!
 もうおっぱい飲んでるよ・・・

 なんて気が早い子なんだろうと思いつつブリーダーさんに状況を説明すると、即座に「胎盤は?」と聞かれた。そうだよね、胎盤が出てないといけないんだよね。冷静になるのだ。たいばん、たいばん・・・あっ、そうかぁ。わかったぞ。最初にワタシが目にした「今まさにこゆめのケツから出そうになっていた物体」は、次の子のアタマではなく胎盤だったらしい。うん、まだ詰まっているけどもう出そうだ。よしよし、がんばれこゆめ。出しちゃえ出しちゃえ。
 ほどなくして「うにっ」というカンジで無事にあやしい生物的物体が出された。・・・?

 っていうか、っていうかぁ。ちょっとちょっとちょっと待って!!
 今出たのがこの子の胎盤でしょ。へ、へその緒は・・・!?!?
 き、切れてない・・・・・・
 このくろ太郎(仮名)、まだ胎盤にへその緒つながってるのにおっぱい飲んでるよ!!

 これにはさすがのブリーダーさんも絶句。さすがは食い意地大魔王こゆめとその後継者あかおの子である。この世に生まれ出た瞬間から食い意地のカタマリだとは・・・
 もしかしてこの子は伝説の勇者かもしれない。ハレルヤ。(←?)

 などとマヌケなことを考えている場合ではなーい!残っていた胎盤が出たとたん、こゆめはすぐに次の子を産みそうになっている。前の子のへその緒がひっからまってしまったら非常にやばいそうなので、あわててへその緒を切ることにした。うわあ、怖いよ。
 ブリーダーさんにいわれたとおり、なるべくこねこから遠いところを指でぎゅーーっと押さえながら事前に熱湯消毒しておいたハサミでカット!当然血が出るので、しばらくそのままぎゅーーーーっと押さえて止血する。ああ怖い。マジで怖い。ホントに怖い。こゆたん、次は切ってくれよぉぉ。

 依然として軽くメダパニがかかった状態のままのワタシ、結局最初に生まれたくろ太郎(仮名)の性別すら確認できないまま次の子の誕生を迎えることになった。おお、出てきた。今度ははちわれだ!白いところが多くていいカンジ!(個人的に白いおなかマニアのため。笑) すっごく薄い色、よくわかんないけどコレはブルーだと思うぞ。赤いところはないから男の子だと思う。(←カラーの遺伝的にそういうことになるので)ああ残念、青三毛ならずか。などというヨコシマなことを考える余裕だけはあるのがなさけないですね!

 しかもさっきのお願いが効いたのか、幸いにして今度はこゆめが自分でへその緒を切ってくれたうえ、胎盤をぱっくんと一気に食べてしまった。
 うわー、ぶきみー。(・・・・) わたしレバー食べられないからなぁ。これはきついな。(←?)

 せっかくお願いをかなえてくれたこゆたんに対してあまりといえばあまりなばかばか感想を抱いているうちに、ほとんど間を開けずしてさんびきめが生まれてきた。今度の子もすっごくうすい色、でも次男坊(推定)よりは濃くて長男(推定)よりは薄い。ってことはシルバーかな?しかも今度の子も赤いところがない。オトコだ。ああ、憧れの三毛ならず・・・

 いずれにせよ、あお太郎もぎん太郎もシマシマがないようにみえる。もしやティックか!?という期待が否が応にも高まるなか、さっきの失礼な感想がいけなかったのか(?)こゆめママはさんびきめもへその緒を切ってくれなかった・・・しょうがないのでまたワタシが「ぎゅーっ」とおさえながらちょっきんと切る。やっぱり怖いけどさっきよりはヘイキだぞ。もうだいじょうぶ。・・・と思っていたら、なんか生物的ななまぐさいものがべちょっと手に・・・ひー。へ、ヘイキだけどおそろしいー。(笑)

 へその緒を切ってあげたとたん最後の子の胎盤もすぐにぱくぱくとこゆめが食べてしまったが、最初の子の胎盤がまだこゆたんの傍らにぽつんとほっとかれている。ふたつも食べたしコレはもういらないんだろうなと思い、捨てようとして回収したところ。

 「ちょっとちょっと、ワタシのとっといたアレ、どこなの??」
 と露骨に不満そうな顔をしたこゆめがくんくん嗅ぎまわるではないか。もしかしてキミ、これを探してるの?と胎盤を出してあげると、
 「そうよ、コレよコレ!」
 と満足そうにぺろっと平らげてしまった。

 そ、そうだよね。食い意地大魔王のこゆめ様が、こんなレアーなものを食べ残したりするはずなかったよね。ごめんねこゆたん、捨てようとしたりして。・・・・・・

 とにかくこれでレントゲンで確認しておいたさんびきが無事に全部生まれた。胎盤も出たし、食いきった。(・・・・) つまり出産終了である。でかしたこゆめ!!

 そんなわけで結局こゆたんは、ワタシが最初に「ぴー」という声を聞いてから一時間足らずの間に次々とこねこを産んでしまった。しかも痛そうな声ひとつあげるでもなかったし、へその緒二本切ってもらった以外はほとんどニンゲンの手を煩わせることもなかったのである。
 こゆめ、キミはえらい!なんてえらいんだ。ブラックだブラックだと思っていたが、やっぱりゆめちゃんの娘、やるときはやるんだね!感動した。(総理風)

 かくてこゆめママは、「はーつかれた」という風情ながらも余裕の表情でこねこたちのお世話を開始したのである。なんだかいろいろあったけど(・・・・)とにかく母子ともに無事でよかった!ととりあえず心から安堵する我々であった。

あれ「たいばん」っていうの?おいしかったわ。またちょうだいね。
出産直後の満足そうな食い意地おやこズ


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