父怒る(2001年10月中旬)
さて、ワタシが異変に気づいたときにはすでに遅く、いわゆる「できちゃった結婚」(?)をしてしまったこゆめとカール。
そのニュースをきいて、当時すでに急な転勤のために一足先に本土へ戻っていたダンナは娘を不本意に嫁に出す下町の頑固オヤジのように怒り狂った。
っていうか、実際には「怒った」というよりは「がっくりした」というカンジの反応であったのだが、ここはとりあえず怒ってもらったほうがドラマっぽいので怒ってもらうことにしよう。(←?)
「うちのかわいいこゆめを、ヘンな外人小僧がキズモノにしただとぉ!」
(ちなみにこの反応自体はほんとうです。・・・)
たしかにカールあかおはガイジン・・というかガイジン猫だが、この場合日本猫かガイジン猫(?)かということはあまり関係ないような気がするのはワタシだけだろうか。
ワタシが彼らの不純異性交遊の可能性をまったく心配していなかったのに対して、実はダンナのほうは最初からひそかに危惧を抱いていたらしい。
ダンナにいわせると、「カールがうちにやって来たときのこゆめの反応は、他の子とは全然違った」そうである。当初ご対面したときこそ「だれ、コイツ!?」という驚き半分こわさ半分で拒否反応を示したものの、びっくりがおさまったとたん年頃のこゆめは「殿方?もしかして殿方かしら」と興味津々でヤツを目で追っていたというのだ。
来た直後はさすがにおこちゃまだったカールは年頃の娘さんの存在などあまり意に介していないようだったが、ダンナにいわせるとこゆたんのほうは二十年前の少女漫画のように「木の陰からそっとあこがれの人をみつめるような態度」でカールをじーっと見ていたんだってさ。
えーっ・・・・・・
うっそだぁ。
だってぇ、相手は恐怖のあかんぼう猫・カールあかおなんだよぉ。あかおがこゆめほどの美少女ちゃんに憧れられるようなタマだろうか。(←ひどい)
しかし、その説にもうなずける点はある。
最初の困惑が過ぎ去ったあとは、うちの子たちのなかで一番カールに友好的だったのは実はこゆめだった。なんだか遊びたそうに自分から近寄っていったりくんくん嗅いだりしていたのだが、その頃はむしろカールのほうが不思議とこゆめには無関心という感じに見えて「なんてもったいないヤツだ、こゆめ様に向かって!」(・・・・)という感想を抱いた記憶がある。
ああ、考えるだにおそろしいことだが、確かにこゆめは最初からカールをにくからず(!?)思っていたのかもしれない。
がーーーん。
ぜんぜん気がつきませんでした。
これはまさに娘が妊娠するまで彼氏の存在にも気づかなかったうかつな母!
とにかくやってしまったものは仕方がない。(おいおい)
問題はホントにできちゃったかどうかである。
タイミングわるく、近日中には本土に引越しもしなくちゃいけない我が家だ。どう考えても妊婦の長距離移動とか引越しストレスとかってのは胎教(?)に良いとは思えない。
やっと北欧から帰ってきたブリーダーさんに事態を相談するとさすがに彼女も絶句していたが、もしこゆめが妊娠しているのだとするとやはり飛行機の移動はなるべく避けてほしいとのことであった。
そもそもニンゲンならばまだ小学校高学年程度であるお子ちゃま・カールに、ホントにお子様を作成する能力があるものだろうか。
ぐずぐず考えていても仕方がない。なにはともあれ、まず事実関係を確認しなくては始まらぬ。
そこでワタシは、数週間後にこゆめを連れて動物病院へと向かった。
ご存知の方も多いだろうが、最近はニンゲンのみならず猫もエコーで妊娠の診断ができるのである。
あれ以来こゆめはすっかり発情っぽさもなくなって、おっぱいもしっかり大きくなっている。こりゃ状況証拠的には出来ちゃったとしか思えないが、これまたおもしろいことに猫にも想像妊娠というのがあるのだそうだ。そうするとおっぱいもちゃんとピンキング(・・・ていうんだって)するし行動も妊婦っぽくなるんだけれども、実は入ってなかった!・・・という話はけっこうよくあるらしい。
こういう話をきくと、つくづく猫ってのは感情とか精神とかが高度に発達した動物なんだなぁと改めて感心します。ハイ。
この場合ワタシとしては妊娠がホントであってほしいような想像であってほしいような、きわめてフクザツな気持ちである。
こゆめの子ならそりゃかわいいだろう。でも、引越しまで控えているこの状況で妊娠だなんて、ちっちゃいこゆめに負担をかけることになりはしないだろうか。ああ〜。いったいワタシはどうすればいいのだ! ・・・っていうか、この場合なにも出来ないんだけどさ。
さて、いざエコーをとってみたところ!
は、入ってました・・・
画面の中にはあやしい影がひとつ、ふたつ。
こゆめが「いやーん!」とじたばた動いてしまったので合計いくつ入ってたのかまではわからなかったが、とにかくこねこの影がくっきりと、いやぼんやりと。
先生は画面を指しながら「ほら、コレが頭でコレが心臓です。心臓がうごいてるでしょ?」と説明してくれる。
うおーー!!
ホントに動いてるよぉ。心臓が、こう、どくんどくんと。
な、なんて感動的なんだ。これぞ生命の神秘!!
こんなもん見せられちゃったらたまんないですよねぇ。
単純なワタシはおもわず先生に「ありがとうございます、ありがとうございます」とわけもなくお礼を言いまくり、すっかり「でかした、こゆめ!こゆめの子だもん、きっとすっっっごくカワイイよね♪こゆたん、よくやったぞ!」という晴れやかなキモチで帰途についたのだが。
家に帰ってみれば、待ちかねたようにしゅたたーっとやってきた幼な夫・カールが「ぅなーん」とまぬけな声とともにすりよってきて、ごろごろ甘えながらちゅぱちゅぱもみもみしはじめる。
・・・・・・・
ちょっと待て。
コイツの子かい!
かわいいけどブラックなこゆたんと、気はいいけどあかんぼでなんとなくマヌケな顔のあかおの子。
ああ、いったいどんな子が生まれてしまうのだろうか。うまくいけばかわいくて気立てのいい子になるかもしれないが、もしもブラックでまぬけ顔の子がぞろぞろ出ちゃったりしたら・・・!?
不安だ。不安すぎる・・・
遺伝子の神様、どうか顔だけはこゆめ似の子にしてください!でも中味はカールでお願いします!
あと、できればガワは三毛柄でおねがいします♪
結局じぶんの趣味も忘れない、ちゃっかりしたワタシであった。
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