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名演2009年11月例会 劇団民藝公演 

静かな落日-広津家三代

作/吉永仁郎 演出/高橋清祐

  思わずこぼれる笑い、知らず知らずのうちにあふれる涙、心にしみるセリフの数々。祖父と父と娘・作家三代のおかしな家族の近景をユーモラスに描き出した、評伝劇の名手・吉永仁郎の傑作戯曲です。松川裁判にペン一本で挑む広津和郎とその娘・桃子。家族をむすぶ不器用で深い愛情、そして和郎の友人・志賀直哉と宇野浩二との男の友情を描きながら、家族のあり方、人間の生き方、そして人が真実にむかっていく姿勢を凛として浮かびあがらせます。樫山文枝と伊藤孝雄のコンビで新境地を開いた心に残る美しい舞台。どんな事があってもめげずに、忍耐強く、執念深く、みだりに悲観もせず、楽観もせず、生きとおしていく。忘れられた文学者・広津和郎のことばが、いま鮮やかによみがえります。

 

静かな落日 11月12日(木)6時30分
   13日(金)1時30分
       6時30分 
 
中京大学文化市民会館プルニエホール
(名古屋市民会館中ホール)          地図
上演時間
2時間45分(休憩15分を含む)
あらすじ
みどころ NEW!
キャスト・スタッフ
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会費 月額一般 2600円 22歳以下 2000円  
   高校生以下 1300円
入会金  一般  2900円 22歳以下 2300円    
高校生以下 1600円
新入会の方は、会費と入会金が必要です。それ以外の入場料は必要ありません。  くわしい名演の入会方法はこちら
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あらすじ

 作家の広津和郎が永眠した1968年、娘の桃子は父と親交のあった志賀直哉の来訪をうけて、祖父から父へ、そして自分へと広津家三代に思いをはせるのでした。

 明治の文壇で尾崎紅葉と並び称されながら、時流におもねる事を潔しとせず、早くに筆を折った祖父柳浪。
 父和郎は、愛してもいない母との間に兄の賢樹と桃子を生み、桃子が物心ついた頃には母と別居、別の女性と暮していました。
 作家として活躍していた和郎は、中国との戦雲がきざしてくると「何もしないに限る」とばかり〈散文精神〉を説いて、仏像見学や骨董の趣味に明け暮れているので、女学校の先生になった桃子は〈散文精神〉とは怠け者の言い訳だとかみつきます。しかし、敗戦をむかえてみると、父の「何もしない」ととが時局への抵抗だったことに気づいて父を見直すのでした。
 和郎は、学生時代からの親友、宇野浩二に触発されて「松川裁判」の不当さ、非人間性を感じとり、命をかけて裁判に挑みます。父のそんな姿を見て桃子は、戦中の〈散文精神〉にかみついた罪滅ぼしもあって、助手をかって出るのでした。
 
14年かかった松川裁判は、ついに全員無罪が確定します。
 かつては父親に不信を抱き、憤った事もある桃子でしたが、信頼と尊敬の念をこめて、かすかにつぶやきます。「好きよ。お父さんが好き」と


みどころ

『静かな落日』は広津家三代目、広津桃子の視点と語りで進む。  

 祖父広津柳浪は、明治時代の女性参政権を描いた「女子参政蜃中楼」で文壇に登場し、社会を鋭く告発したが早々と筆を置いた。
 父広津和郎がこの芝居の中心人物である。戦前戦中の暗い時代に呑みこまれることもなく、自分を見つめ独自の人生観を貫く。晩年は「松川事件裁判批判」に心血を注ぐ。  

 娘広津桃子は父が愛情を感じていない母から生まれた。それで父に対し素直な気持ちになれず複雑な感情を持つが、やがて父を理解するようになり自分の意思で作家への道に入ってゆく。  

 和郎にスポット当てると評伝劇、柳浪と和郎、和郎と桃子の親子関係で見ると家族劇、和郎と宇野浩二、志賀直哉との関係では文学者の友情劇とも読み取れる。  

 「どんな事があってもめげずに、忍耐つよく、執念深く、みだりに悲観もせず、楽観もせず、生き通して行く」和郎のこの言葉は、私たちの心に沁みこんでゆき、励ましとなる。  
 「結局、一口に云えば、沢山の芸術の種類の中で、散文芸術は、直ぐ人生の隣りにいるものである。右隣りには、詩、美術、音楽というように、いろいろの芸術が並んでいるが、左隣りは直ぐ人生である」(散文芸術の位置)  

 この芝居の見所をいくつか。まず、桃子を演じる樫山文枝の演技に注目したい。 女性関係のだらしなさや社会からの逃避としか思えない父の生き方への疑問や反発が、献身と敬愛へと変わってゆく。その変化が年齢と共にどう演じられてゆくか。女性関係に問題があるが、文学や人生には一家言を持つ和郎は、ある意味で魅力的な存在である。尊大でも卑屈でもない、しなやかな自由人を、二枚目俳優伊藤孝雄がどう演ずるか。  

 静かな落日が意味するもの。作家の家系、広津家が三代桃子で途絶えるという現実。幕切れの桃子の台詞に、余韻と言葉で解明できないような雰囲気を期待したい。静かな幕切れが、静かな感動を呼ぶのではないか。  

 この芝居は2幕9場で構成されている。その中で2幕の冒頭、場割では6場が松川事件の取調べの場面である。作者の意図した場面だろう。他の場面とはトーンが違う。この効果の出来映えはどうか。  
 題名の通り静かな終幕に全てが凝縮される。


<キャスト> 

広津和郎(作家) 伊藤 孝雄
松沢はま(和郎の妻) 仙北谷和子
広津桃子(和郎の娘)
樫山 文枝
広津柳浪(作家・和郎の父) 安田 正利
広津桃子(女学生時代) 飯野美穂子
宇野浩二(作家・和郎の友人) 小杉 勇二
志賀直哉(作家・和郎の友人) 水谷 貞雄
赤間勝美(松川裁判の被告) 伊東 理昭
安藤貞男(取調べの証人) 梶野  稔
平松 敬綱
飯島義雄(取調べの証人) 武藤 兼治
塩田 泰久
兼子ツヨ子(取調べの証人) 藤巻 るも
赤間ミナ(取調べの証人・勝美の祖母) 田畑 ゆり
武田辰雄(警察官・巡査部長) 松田 史朗
玉川正(警察官・警視) 大場  泉

 <スタッフ>

吉永 仁郎
演出 高橋 清祐
装置 勝野 英雄
照明 尾藤 俊治
衣裳 貝沼 正一
効果 岩田 直行
舞台監督 中島裕一郎


関連サイト

劇団民藝ウェブサイト http://www.gekidanmingei.co.jp/

広津和郎(Wikipedia)

松川事件(Wikipedia) 


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最終更新日 2009/11/07