名演2008年5月例会 劇団俳優座公演
原作/田宮虎彦 脚本/堀江安夫 演出/袋正
人が生きる理由など一つあれば充分なのよ
5月15日(木)6時30分
16日(金)1時30分
6時30分
中京大学文化市民会館プルニエホール
(名古屋市民会館中ホール) 地図
あらすじ
解説
キャスト・スタッフ
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会費 月額一般 2600円 22歳以下 2000円
高校生以下 1300円
入会金 一般 2900円 22歳以下 2300円
高校生以下 1600円
新入会の方は、会費と入会金が必要です。それ以外の入場料は必要ありません。 くわしい名演の入会方法はこちら日程申込フォームはこちら(会員専用) 昭和八年、時代は昭和恐慌の余波いまだおさまらず、暗い世相を反映する事件が続き、多くの人々は長引く不況に喘いでいた。帝大生の間宮は肺の病におかされながら自らの力で生活していた。
ある日、隣室に住む中学生の福井が追いはぎの疑いをかけられ警察に検挙される。その後すぐに冤罪であることが判明され釈放されるが、そのときのことで福井は警察に対し不信感を抱き自殺してしまう。また福井の自殺から間もなく、主人公・間宮の母の病死が父からの手紙によって知らされる。
母や友の死により、世の中の何もかもに絶望を感じた間宮は命を絶つために東京を離れ、亡き母の故郷であった四国最南の地、土佐清水へと向かった。そこには八十メートルの断崖を擁し、絶えず怒濤が打ち寄せてくる足摺岬があった。とりあえず「諸国商人定宿清水屋」と書かれた遍路宿に宿泊。ある日間宮は投身自殺を図るが、同宿の老遍路や薬売り、宿の主人おちせやその娘の八重らの懸命な看病と献身的な愛情を受け一命をとりとめる。みんな辛い傷跡を背負っていたが、親身になって励ましてくれるのだった。老遍路はいう「死ぬ理由はいろいろつけたがるが生きる理由は一つあれば十分」。死と向き合う彼はそこで老遍路、薬売り、宿の女主人と娘らの優しさ、温かな人情に触れ、もう一度人生をやり直そうと決心する・・・。
田宮寅彦の同名短篇の舞台化。昭和初期の不況を背景に一人の青年の死の淵にまで追い込まれた魂の再生が描かれています。
生きることの厳しさや素晴らしさ、人々の優しさ、そして若者の可能性が描かれ、人の優しさ、心の美しさが主人公を絶望から立ち直らせ、再生させます。
私たちが忘れてしまった風景をもう一度観客と共有できればとの願いを込めて、劇団俳優座が創立60周年記念公演として創った渾身の作品。
―「自殺と再生」―
『足摺岬』は、世の中に絶望し「死にたい」という学生に、まわりの人々がなんとか生きる希望を持たせようとする、文字通り人間再生の物語です。そこには大人の厳しさ、優しさ、そして若者の可能性が描かれています。
このごろ、あまりにも命を粗末にする事件が多く目につきます。そんな今だからこそ「生きる」ということを今一度見つめ直し、同時に、忘れかけていた日本人の姿を、この作品を通して共有していけたらと思います。
最後は自殺をしようとする主人公を諭す老遍路の言葉で締めくくります
「人が生きる理由など一つあれば充分なのよ」
【感想より】
ベテランと若手のアンサンブルで生きる厳しさ、ひとの心の美しさを映し出す
◎ 自殺という暗さより、絶望した一人の青年が、周りの人たちの優しさと献身的な愛のもと、再び生きていこうと思い直すというひとりの若者の再生を描いているところにこの作品の魅力がある。今日私たちが生きている時代にいま人として大切なこととは何か、どうあったらいいのか描き出している。何といっても脚色化した堀江さんが原作にあらたな息吹を与え、生きる意味と厳しさ、ひとの優しさと美しさとはどうなのかを描き素敵な作品に仕上げている。若手とベテランのアンサンブルが良く出ていて、一生懸命演じる若手の皆さんと俳優座の意気込みが感じられる。
死と生きることにひたむきに格闘する見ごたえある舞台
◎「死」と真正面から向き合うことで「生きる」こととひたむきに格闘する見ごたえある舞台に仕上がった。昭和恐慌の余波冷めやらぬ昭和初期の暗い時代が背景にある。軍国主義の足音が激しく響く。表面上は今とはまるで時代が違う。だが、本当に違うと断言できるのかと問われているようだ。貧困ではないが就職難。閉そく感と拭えない。自殺者も多い。心に深手を負った青年の再生の物語だ。渡辺が繊細に演じ、若井がけなげな娘心を素直に表現。「死ぬ理由はいろいろつけたがるが生きる理由は一つあれば十分」と説く浜田には老名優の風格がある。
◎遍路宿の人々が魅力的だ。数十年前の戊辰戦争で賊軍に属して妻子を失ったという老遍路(浜田寅彦)、幼い日に別れた娘を行商をしながら探す薬売りの男(児玉泰次。今公演は遠藤剛)など宿に泊まっている人たちは過去に重いものを背負っている人ばかりだ。浜田、児玉ともに複雑な人間をひょうひょうと演じて、深みがある。龍彦役の渡辺も誠実な演技でさわやか。そんな人たちを温かく迎え、家族のように尽くす宿の女主人と娘に扮した斎藤深雪、若井なおみも好演。劇団の製作者が長年温めて舞台化にこぎつけたが、今後も上演してほしい作品だ。
【台本を読んで】・・・「足摺岬」の例会担当サークルから
◎ 最愛の母親を亡くし友までも亡くし学業や生活も思うようにいかず、絶望し死のうと足摺岬まできて宿の人々に出会って少しずつ心を開いていく主人公と老遍路の「生きる理由は一つあれば十分」という言葉に何かをつかむ。私自身も生きる理由を一つ考えてみようと思いました。
◎ 「足摺岬」の原作も題名も作者である田宮虎彦も知らないので、脚本を読んでみたが、「自殺と再生」をテーマにしているだけあって、やはり暗い印象を受けた。しかし、足摺岬を紹介していたビデオを鑑賞することによって、その気持ちは払拭された。若井なおみという八重役を演じる若手俳優を中心にビデオは進んでいたので、彼女から今回の足摺岬についての話を伺えるということで楽しみにしている。この学習会を機に一人でも多く会員を増やしたい。
◎ 台本を読んだ限りではとても暗い作品でこれが芝居になったらどうなるのかと思った。でも、第1回の運営サークル会でビデオを鑑賞してみて、とても良い芝居に出来上がっていて決して暗い芝居ではないと思ったので期待が持てました。
老遍路(朴沢(ほうざわ)健二郎)
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薬売り(三神参吉)
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間宮龍彦
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若き健二郎・漁師
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お内儀
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おちせ
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八重
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母遍路
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娘遍路・名緒(健二郎の妻)
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福井義治
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龍喜
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松田 佳祐
松井 佳祐
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<スタッフ>
最終更新日 2008/04/18