名演2007年7月例会
秋田雨雀・土方与志記念青年劇場公演
原作/三浦綾子
脚本/布勢博一 演出/堀口始
魂をゆさぶる、三浦文学、最後のメッセージ
戦争から平和へ、軍国主義から民主主義へ、敗戦を境に大きく変貌を遂げた「昭和」という時代。軍国少女であり、軍国の小学校教師であった自分への深い憤りと懺悔。
「教育」への限りない理想と情熱を、一人の青年教師“北森竜太”に託して書き上げた。三浦綾子の傑作。これをテレビ界で活躍中の作家、布勢博一がNHKでドラマ化した同名の小説を新たに舞台に蘇らせ、青年劇場が総力をあげて、現代を生きる人々に問いかける作品です。7月12日(木)6時30分
13日(金)1時30分
6時30分
名古屋市民会館中ホール
(7月1日より中京大学文化市民会館プルニエホール) 地図
あらすじ
解説
キャスト・スタッフ
関連サイトリンク
会費 月額一般 2600円 22歳以下 2000円
高校生以下 1300円
入会金 一般 2900円 22歳以下 2300円
高校生以下 1600円
新入会の方は、会費と入会金が必要です。それ以外の入場料は必要ありません。 くわしい名演の入会方法はこちら日程申込フォームはこちら(会員専用) 昭和12年、師範学校を卒業したばかりの北森竜太は、北海道の小さな炭鉱町幌志内の小学校に新任教師として赴いた。「良心の尊さ」「人間の平等」を教えてくれた恩師、坂部久弥を理想の教師と仰ぎ、希望と情熱に燃えての出発だった。
ところが、昭和16年、竜太は突然姿を消す。治安維持法違反の容疑で特高警察に逮捕されたというのだ。子ども達に良い教育をと願う竜太がなぜ…?
旭川警察署の取調室で竜太は、逮捕、拷問を受けた坂部と面会する。坂部の釈放と引き換えに退職願に署名しろとの要求を竜太は受け入れる。
教師の職を失った竜太は、再び教育に携わりたいと願い、満州へ渡ることを思い立つ。恋人・芳子とともにその願いをかなえようとした矢先、竜太に召集令状が届く。
2002年初演。2005年10月からほぼ1カ月にわたって、日韓友情年2005・戦後60周年記念企画として、韓国各地14都市(24ステージ)を40日間かけて巡演しました。
『銃口』には、かって戦争の中にも存在した日韓両国民の友情の絆もエピソードとして描かれており、韓国でも三浦綾子のファンも多く、近年の三浦文学ブームの影響もあり暖かく迎えられ、どの地域でも、植民地時代を経験したお年寄りから、中学生・高校生の若者達まで幅広い年令層が観劇。
三浦綾子の夫で「三浦綾子記念文学館」館長の三浦光世さんは語っています。
「『銃口』は綾子最後の小説である。綾子は教え子の一人から、『北海道綴方教育連盟事件』なるものを聞かされた。彼は古書店を経営し、よく綾子に小説の参考資料を提供してくれていた。右の事件は1941年、治安維持法逮反容疑のもとに、北海道の教師たち50人が検挙された事件である。それら教師たちは、共産主義者ではなかったが、当時の特高警察によってその嫌疑をかけられ、教職を追われたり、投獄されたりした。たとえ主義者であったとしても、それだけで検挙される筋合はない。が、当時は天皇は現人神(あらひとがみ)、その天皇を中心とした神国日本ということで、考えられないような不当なことがまかり通っていた。この事件を題材に、綾子は求められて小学館「本の窓」に「銃口」と題して連載小説を書いた。1990年1月から1993年8月まで、37回に及ぶ長篇であった。難病パーキンソン病が発症し始めた頃である。1100枚を越える長篇との取組みは、大変であったろう。」
北森竜太は拷問を受け、恩師の命と引き換えに教職を剥奪されました。日本では教職につけないことで満州にいって教壇に立とうと決意しますが、召集されてしまいます。舞台は、竜太が戦後にあらためて教職に就こうとする設定にしていますが、三浦綾子はなぜ教職に戻らなかったのか。夫の光世さんは、「(本人は)戦中に教師として軍国教育に加担したことを後悔し続けていた。中国や韓国に行くことがあれば日本のしたことを土下座して謝りたいといっていた。『銃口』の上演をきっかけに、綾子に代わって韓国の人たちにお詫びしたい」と話しています。
三浦綾子は、戦前の7年間教職についていましたが、天皇は神様だ、この戦争は聖戦だと信じ込んで、教え子にひたすらに軍国主義を教えたことに戦後ずっと後悔、懺悔。「その痛恨と慙愧の思いが底流にあって『銃口』が生まれたのではないでしょうか」と元同僚教師は語っています。
今は自由にものを言える時代ですが、最近徐々に周りから危ない風が吹いてきているのを感じます。『銃口』を観ることを通して、今一度自分の周りのことを考えてみませんか。
何といっても、舞台からは、人間に対する深い愛情と真摯なまなざしが脈々と伝わってきます。恩師、家族そして恋人芳子などまわりの暖かい優しさが胸を打ちます。三浦綾子のこころの底に流れる人間への愛でしょう。
三浦綾子(1922〜99)
1922年、北海道旭川生まれ。小学校の教員を7年勤めるが、敗戦後退職。肺結核と脊椎カリエスのため13年間の療養生活を送り、この間洗礼を受ける。1964年、朝日新聞の懸賞小説に『氷点』で入選、作家生活に入る。代表作に『塩狩峠』『道ありき』『天北原野』など多数。『銃口』への期待
この舞台は、初心なんてすっかり遠くへ置いてきてしまった、といいながらやっぱり忘れられないで生きている多くの人たちと、これから希望を持って長い人生を生きることになる若い人たちに、ぜひ観てほしいと思いました。
子どもを人間として尊重する教育を目指すだけで、教職を追われてしまう不合理な時代。しかし、そんな、みんなが黙らざるを得ない時代にも、竜太の損得ではなく善悪で考える生き方は、教え子や、周りの人たちに竜太の意思を超えてどんどん広がり、竜太自身も、人との関わりで成長し、教師の仕事の大切さに気付く。
「時代」が変化しても変わらない自分を持ち続けるには、素直に自分を表現し、人のことを認められる子ども時代が必要と感じました。
一粒の種が、時間をかけて成長したくさんの実りになる。自分の思いと異なる生き方をせざるを得ない現在の私達も、理想の種は忘れずにと思いました。
北森竜太(幌志内小学校教諭)
|
|
中原芳子(竜太の恋人・旭川の小学校教諭)
|
大山 秋 |
北森政太郎(竜太の父親)
|
|
北森キクエ(竜太の母親)
|
名川 伸子
|
北森美千代(竜太の姉)
|
|
沖島浩三(竜太の同僚教師)
|
清原 達之
|
木下 悟(竜太の同僚教師)
|
広戸 聡
|
小山光子(竜太の同僚教師)
|
湯本 弘美
|
沢本庄平(幌志内小学校校長)
|
|
万田忠一(幌志内小学校教頭)
|
北 直樹
|
堀 松雄(竜太の同僚教師)
|
高山 康宏
|
崎谷ふで(竜太の同僚教師)
|
井上 昭子
|
石川正義(竜太の同僚教師)
|
森山 司
|
今村雄一(竜太の教え子)
|
平井 光子
|
宮川秋子(下宿先の娘)
|
松村有希子
|
菅井富男(刑事)
|
原 陽三
|
坂部久哉(竜太の恩師)
|
島田 静仁
|
山田宗一(竜太の上官・曹長)
|
北 直樹
|
近堂信吉(竜太の上官・伍長)
|
|
近堂トキ(近堂伍長の母親)
|
井上 昭子
|
金 俊明(田中俊明・パルチザン隊長)
|
島本 真治
|
大里重吉(特高警察)
|
大木 章
|
三上久兵ヱ(特高警察)
|
高山 康宏
|
<スタッフ>
関連サイト
青年劇場ウェブサイト
http://www.seinengekijo.co.jp/大嶋恵子さんウェブサイト マイケル・ピット
『銃口』韓国公演の旅日記がなどあります。
http://www.ne.jp/asahi/michael/pit/吉村直さんブログ 吉村直の俳優生活
http://y-sunao.jugem.jp/菊池弘二さん(音響効果)ウェブサイト「音と旅」
「韓国で見つけたもの」はぜひご覧下さい
http://homepage3.nifty.com/k-kikukiku~oto/
演劇で近づく日韓 青年劇場「銃口」の試み
朝日新聞アジアネットワーク
http://www.asahi.com/international/aan/issen/issen66.html
最終更新日 2007/04/03