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11月例会『崩れた石垣、のぼる鮭たち』

作家、演出家、俳優、鑑賞会会員312名が参加

2001年11月例会
中部北陸ブロック・静岡県演鑑連・文学座との共同企画
『崩れた石垣、のぼる鮭たち』の成功にむけて崩れた石垣チラシ

共同企画をめぐるフォーラム in しずおか
2001年4月15日(日)
静岡市民文化会館大会議室 午後1時〜5時

●「共同企画をめぐるフォーラムi n しずおか」は4月15日(日)静岡市民文化会館で開かれました。
 遠くは富山県の魚津演劇鑑賞会から、豊橋からはバス1台で、名古屋も近隣の3鑑賞会との共同で大型バスで参加と、共同企画への熱い思いを背負って参加してきました。参加者は静岡県演鑑連、中部北陸ブロックの各鑑賞会と創造側を含め、312名でした。
 第1部は、西川さんの指導によるワーグショツプでした。ワークショップってなに?と好奇心と不安半々で参加された方が多かったと思いますが、西川さんのあざやかな進行で参加者の気持ちが一つにまとまりました
 「千裏剣投げ」「ピンポンパン」などゲームの中で、一人一人の個性や癖を知り合いチームワークを作ることが舞台づくりの始まりであることが理解できました。
 第2部は、土田さんから『崩れた石垣、のぼる鮭たち』のシチュエーションが変わったことや戯曲の脱稿が近くなったことが話されました。西川さんは「スリルもあり次への展開に引き込まれる。民いホンになる予感がする」と読んだ感想を話されました。出演者を代表して加藤さんはみんなを大いに笑わせながらも、この例会を成功させるには創造側も鑑賞会側も共同の責任があるんだと気を引締めてくれました。
 出演者の白己紹介のあと、フロアーからの質問や要望・意見、それに対する応答など時間ぎりぎりまで使ったフォーラムでした。同じ例会に臨む仲間たちの熱い思いと連帯感がおみやげになったと思いますが…。


第1部 
 
 西川信廣さん(演出家)によるワークショップワークショップ

ワークショップ2ワークショップ3ワークショップ4


第2部

いま、なぜ共同企画なのか、経過報告「共同企画をなぜ始めたのか、何をめざすのか。」(鑑賞会)
   
「共同企画への想いを語る」      土田英生(作者)、西川信廣(演出家)。


   出演俳優 加藤武、金内喜久夫、原康義、関輝雄、石川武、高橋克明。
     稲野和子、藤堂陽子、南一恵、富沢亜古、古坂るみ子、阿部桐子。

降り続く雨、沈んでいく陸地、30年ぶりに開かれたクラス会は

≪作家・土田英生さんのお話≫

 申し訳ないのですが、話の設定をだいぶ変えています。舞台は、名古屋あたりを匂わす設定ですがそれも架空の場所なんです。語る土田さん
 この地球では、もう雨が3年も降り続いているんですね。南米辺りでは陸地がだいぶ沈んてきているようです。食料も不足していて配給制になっています。さっき、俳優さんの自己紹介で、リストラされた人物の役と言っていましたが、それも少し前のことて、今でははとんどの人が働いていない状態ですね。
 この店も営業をしていないのを、クラス会を開くためにむりやり聞けたという状態なんです。こんな時期になぜクラス会を開くのかというと、こんな時期だからこそ、ちよっと会ってみたいと…。そこで30年ぶりに集まったというわけです。
 普通の住宅街であった所も、令は水かさが増して川になっていて、その川が日々大きくなって危険な状態になっている…3年間も雨が降り続いていますから。
 「今日のレベルは70らしい」とか「レベル50前後だから景色が見えますね」と日常の会話として雨の量が話されているんてすね。ニュースでは「1年くらいしか日本はもたないのではないか」と言っています。お金のある人はチベットの方に逃げたりしているけれ
ど大部分の人々は世界的な異常気象なので滅亡していくしかないと思っている。そういう状況の中で中学時代を懐かしんでクラス会をやろうという話なんですね。
 さっき会員さんのアンケートの結果についてお話がありました。こんな内容を書いて欲しいという要望と比較し、お前は一体なにを書いているのかと思っているかも知れませんが、ぼくは時代の状況を大げさな設定にしていますが、中味は抽象化せずに書いています。
 今、日本はすごい不景気ですよね。若い子がいらいらするという間題がある。それなら45歳ぐらいの方はどんなふうな生き方をしてきたのかという事もある。そんな事を軸にして考え書いています。
 もう一つは、先のない時代、しかし後1年間の日常は続いていくという極限の閉塞状態の中で人はどう行動するのかを書くことで、今ぼくらが抱えているものをえぐり出せたらなぁと思っています。
 もちろん抱えている間題は人によって違いはあると思います。中学時代の古傷を抱えていたり、失恋があったり、加藤さんの役のように昔は中学の先生だったけれど教え子に手を出してクビになっている、今でも若い子となんかあり、いつまでたっても自立できなかったりするわけですね。そんな業みたいなものを少しづつ出しているんです。
 個人が抱えている問題とは別に、ここに集まったみんなは、ある共通の思い出を持っているんですね。それは中学時代にクラスメートが川の中州に取り残され流されていくのを見ていたんです。誰かが「助けよう」と言い出せぱ助けることが出来たのではないかという思いを抱いて、30年間生きてきたんですね。
 この屋の上に建つ料理屋が雨の増水で岸が削られ危くなってきます。いま45才になった皆んなが、これからどうするのかがこの物語になってくるんです。
 終わりには、ちよっと光がさす良いところもあるんですよ。でも、ぼくはハッピーエンドには書きません。結末はハッピーエンドでなくても見た人がハッピーエンドになることは可能だと思っていますから。
 いま、80%までいっています。いろいろ不安も不満もあるでしようがご心配なく待って頂きたいんです。

土田英生の個性&伝統を受け継ぐ文学座の演技陣
新しい才能と人間造形が巧みな俳優たち

 ≪演出・西川信廣さんのお話≫
 

 このホンを読んだとき「あれっ、これは日本?」とか「いつの話?」とかがだんだん見えてくるスリルがありました。いろいろな事情を抱えた人々が集まって来て、どう出会って、どんな事件が起こるか十分に楽しめる作品になりつつあると思います。
 土田さんの作品は非常にエンターティメントでありますが、良く読んで時代と重ね合わせてみると非常にするどい視点で現代というものをついている作品が多いと思いますね。一言で言ってしまえぱ反戦劇であるとか自然破壊に対するアンチテーゼであるとか差別に対する批判的なものであるとかが、声高にしやべらないけれど十分あると思うんですね。テーマがあれぱ面白くなくてもいいって話じゃなくて、面白くてテーマもあるのがいちばんですよね。
 今回の土田さんのホンを文学座で作り上げるわけだけれど、文学座の伝統的なと言うのかな、久保田万太郎、岩田豊雄、岸田国士たちが目指した近代演技術という細かい生活感覚を含めた等身大の人間をきちんと演じる俳優さんたちが沢山いらして、それをいろんな
形で受け継いでいる劇団だと思うのです。
 かって別役実さんがうちに作品を書き下ろした時に、他の集団でやった時は抽象的で非常に分かりにくかったけれど、文学座の舞台は生活感がありながらすごく不条理で良いマッチングができたと評価された時代がありました。そういう演技が出来る俳優たちと土田さんの、ある種のユーモアを含めた新しい感覚、文学座がいままでやってきた劇構造とちょっと違うことを含めて、その出会いがうまくマッチして面白さにつながればいいなと思っています。

はじめにホンありき……加藤武さん
≪加藤 武さんのお話≫
 

 「はじめに国ありき…」って古事記にあるでしよ。芝居って「はじめにホンありき」なんだよ。ホンが良くなけりゃぁだめなんだよ。どんな役者がやろうと、どんな演出家がや
ろうと、まずホンなんだよ。長くやってきてそう思う。
 実は新幹線の中で三分の一読んで来たんだよ。さすがだ。こういうのが才能なんだね一人一人の個性を設定してまとめて構築する。日本が近いうちに沈没するかも知れないなんてことを下敷きにしてね。なんか面白そうだなという気にはさせられた。だけど、呑気
なことは言っていられないよ。僕等には責任があるからね。作者、演出家、俳優…そっち(鑑賞会)もあるんだよ、やることになったんだから。
 この2ブロツクは長いんだよね。8月に稽古に入るでしょ。全部廻るまで12月までかかるの、延々と。だからさ、役者はセリフが頼りなんだからね。頼むよ本当に。しっかりやろうじゃないか。

 参加者の感想
・想像以上に楽しい集会で、参加してよかったと思いました。ワークショツプは初めての経験でしたが自分もゲームに参加できて改めて白分の本質がわかった感じがしました。 (ちよっぴり、がっかりも…)今回の作品は今までの鑑賞会でやったことのないタイプの作品のようでとても期待しています。あらすじを読んだだけの時は、こんなものか?という気持ちでしたがやはり作家や演出家のお話を聞くと違います。島田からも担当サークルの参加があれば盛り上がっただろうと少し残念でした。

(「共同企画ニュース」第8号より転載)


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最終更新日 2001/06/22