84. 新人公演ドキュメント1

今年2002年の4月に、日本フラメンコ協会の会報が

送られてきて、その中に7月下旬に行われる新人公

演の申込み用紙が同封されていた。私は迷うこと

なく、去年推薦して下さった協会の事務局長さん

に電話して、今年も出演したいので推薦をして欲

しいとお願いし、二つ返事で承諾をいただいた。

問題は、バックアーティストをどうするかだった。

昨年は、東京の先生にお任せしていたが、フリー

になった今年は全て自分でしないといけない。大

阪在住の身にとって、よく知らない東京のアーティ

ストを探すだけでも、一苦労だ。一番いいのはスペ

イン人にお願いすることだが、東京まで交渉に行く

のは大変だし、本番前に稽古に遅れてきたり、すっ

ぽかされたりしたら神経が疲れそうなので、今年は

余計なエネルギーを使わない安全策を優先させ、日

本人で固めることにした。

まずは、一度仕事をしてみたかった日本人カンタ

オーラに電話して、お願いしてみた。快く引き受け

てくれた彼女に、相性の合うギタリストは誰か聞い

てみた。何故って、相性の悪い組み合わせにすると、

後が大変だからだ。 「私は誰でもいいですよ。もし

東京に知り合いのギタリストがいれば、頼みやすい

人に頼んでみたらどうでしょう?」

彼女の言葉を受けて、私は悩んだ。東京のギタリス

トを二人しか知らない上、二人とも人気の高いギタ

リストで、きっと今年の新人公演も引っぱりだこで

稽古合わせの時間を取るのが大変なことを今から想

像できたからだ。私は悩んだ末、キャリアが長くて

厳しく接してくれるギタリストに電話した。

「今年はもう新人公演で伴奏するのを止めようと

思っているんだけど・・・。」

意外な返答に私は動揺した。

「他に頼める人がいないんです。お願いします。」

人のいいギタリストは悩みながらこう応えてくれた。

「分かった。他に頼める人がいないなら引き受け

るよ。でも、やるからにはいいもの(フラメンコ)

にしたいから、厳しくするよ。泣く覚悟で望んで

ね。」

願ったり叶ったりの答えに体が震えた。今の私に

必要なのは、人一倍厳しく接してくれる人なのだ。

それから、パルメロをどうするか、いろんな人に

相談して、電話で交渉して決めた。

こうして日本人のバックアーティスト3人を決め

たのだ。

2002.08.01.

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