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2010年9月1日
 厚生労働大臣
   長妻  昭  様
ワクチントーク全国事務局
青野 典子
                  同       古賀 真子
特定非営利活動法人日本消費者連盟 運営委員長  富山 洋子
新型インフルエンザ市民対策会議 代表 母里 啓子
子宮頸がんワクチンの公費助成に反対する申し入れ書
 2009年の新型インフルエンザ騒動以降、うつる病気にどう対応するかについての問題点が露呈する中、新規ワクチン、リニューアルワクチンの必要性が検討され、防げる病気に対してはワクチンの必要性が強調され、国の検討会でも各界の意見を聞くという前提のもとに議論が進められています。これらの新しいワクチンの一部は、自治体では公費負担が決められ、待ったなしで接種が推進されています。
 
 子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV:人乳頭腫ウイルス)の感染によって発症するとされ、原因がほぼ特定されたとしてワクチンが開発されてきました。
 しかしながら、ヒトパピローマウイルスには100種類以上のタイプがあります。ヒトパピローマウイルスによって引き起こされる疾患は尖圭コンジローマ、ボーエン様丘疹症、子宮頸がんなどがあります。尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルスのうち6型、11型などの低リスク型によって引き起こされますが、子宮頸がんはヒトパピローマウイルスのうち16,18,33,52,58型、などの中〜高リスク型によっておこります。
 日本では英国のグラクソスミス・クライン社のワクチン「サーバリックス」が承認されています。このワクチンは有効性が強調されていますが、発がん性があるHPV15種類中、HPV16型、18型の2抗原のみに対応したものです。
 
 HPV16型、18型の2つの型で子宮頸がんが発症するのは、全体のほぼ60%というデータがあります。しかし、日本では、HPV52型58型等も発がん性がありますから、40%はワクチンをしても効かないということになると思われます。
 WHOの推定では、子宮頚がんの発がん性HPV感染者3億人のうちがんになるのは感染者の0.15%だということです。感染後の進行についてはがん化することが必至のものではありません。抗体ができる以前に、はがれて治癒することも多く、子宮頸がんウイルスに感染しても、発病しないで自然に治るケースが大半なのです。抗体ができる前に治癒する病気に、ワクチンで抗体を産生して防げるということについての証明はまだなされていないのです。海外でも臨床経験が2006年からはじまったということで実績評価が十分とは言えません。
 日本では、このサーバリックスが、子宮頸がん予防のために選択すべき対策であるかのように喧伝され、感染前接種でなければ効果がないとして女子中学生への接種が勧められていますが、副作用や有効性についての検証は十分なされていません。性教育の在り方も含め、病気、ワクチンの効果、副作用についての説明がきちんとなされているとは到底言えません。
 国のファクトシートによる情報提供においてすら、「実際にHPVワクチン導入が全人口レベルで子宮頸がん患者・死亡の減少につながるかは、今後の長期にわたる調査研究が必要である」とされています。実際、国の審議会においても有効性や副作用被害の在り方について疑問とする発言が出ています。

 厚生労働省の来年度予算概算要求の概要によれば、一般会計の総額は28兆7954億円で、今年度当初予算の27兆5561億円から1兆2393億円増額されたとのことですが、総予算組み替え対象経費を1割削減することで、特別枠の要望基礎枠1287億円を捻出し、子宮頸がん予防事業に150億円、医師の地域偏在を是正するための「地域医療支援センター」(仮称)設置費用17億円などを要望したとされています。
 子宮頸がんワクチン接種が不十分ながら、感染症対策の1つだとしても、他の喫緊の医療助成を後回しにしてまで150億円もの助成をすることは軽率のそしりをまぬかれません。
 ワクチンの値段は1回につき、15,000円で、3回の接種が必要とされています。その15,000円のうち、ワクチン会社の原価が12,000円であるとされており、公衆衛生的コストバランスからみても疑問があります。ワクチンの製造元であるグラクソスミス・クライン社は、今年輸入された新型インフルエンザワクチンと同じ会社であることから同社のワクチンのみが承認されている合理的な理由の説明も必要であると思われます。
 
 そもそもワクチン接種には医療行為として十分な説明がなされた上で、選択には個人の自由な判断が最大限尊重されなければなりません。学校現場での性教育すら適切に行われていない現状で、予防効果も不完全で副作用が未知数であるワクチン接種が、子宮がんを予防するために必須であるかのような説明のもとに、自治体が安易に接種に踏み切ることに対して、待ったをかけることこそが今厚生労働省に求められていると考えます。
 公費助成は、国が接種を推進するという強力なメッセージとなり、学校現場では強制力を伴う接種推進につながる一方で、あくまでも任意接種である以上、副作用による被害者は予防接種法上の公的救済がなされないということになります。
 子宮頸がんワクチンを公費負担するほどの議論は尽くされているとはいえません。接種を後押しするような自治体への公費助成はするべきではありません。厚生労働省におかれましては、子宮頸がんワクチンについての適確な判断をされ、無駄な公費助成をしないよう、子宮頸がんワクチンへの予算要求を撤回されることを要請します。

                (連絡先)
             ワクチントーク全国事務局
              東京都大田区山王4−1−16 青い保育園内
                        /fax 03-3777-1946