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No.69 東天狗岳 |
今年になって最初の山行です。黒百合ヒュッテに一泊して東天狗岳(2646m)に登りました。?十年ぶりにピッケルを持参し、ちょっぴり雪山の緊張感を味わってきました。 日時 2006年(平成18年)3月7日(火)〜3月8日(水) 天候 3月7日 晴 3月8日 曇のち晴 同行 なし 所要時間 3月7日 渋の湯(11.45) ←30分→ (12.15)高見石分岐(12.15) ←40分→ (12.55)八方台分岐(13.00) ←30分→ (13.30)唐沢鉱泉分岐(13.45) ←1時間→ (14.45)黒百合ヒュッテ 3月8日 黒百合ヒュッテ(8.00) ←10分→ (8.10)中山峠(8.15) ←1時間20分→ (9.35)天狗の奥庭分岐(9.35) ←35分→ (10.10)東天狗岳(10.25) ←25分→ (10.50)天狗の奥庭分岐(10.50) ←55分→ (11.45)黒百合ヒュッテ(12.30) ←30分→ (13.00)唐沢鉱泉分岐(13.00) ←20分→ (13.20)八方台分岐(13.20) ←20分→ (13.40)高見石分岐(13.45) ←15分→ (14.00)渋の湯 山行概要 3月7日
バス停の先で小さな橋を渡り、山道に入ります。渋の湯で降りた他の乗客はいずれも高見石の方へ向かったので、黒百合平へ向かうのは私一人です。周りの樹木が雪に覆われた、雪道の登りが始まりました。時折木に積もった雪の落ちる音がするぐらいで、静かな雪道です。歩き出して30分ほどして高見石方面への分岐に着き、汗をかき出したので、ここでセーターを脱ぎました。ここから八方台分岐までは、渋の湯〜黒百合平間で一番きつい登りが続きます。登山靴の重さは感じませんでしたが、何せ大きな足かせがついていますので、オーバーペースにならないように、ゆっくり歩きました。そのせいか八方台分岐まではずいぶん時間がかかったような気がしました。 八方台分岐で一息入れ、先へ進みました。道はここからしばらく比較的平坦です。気温が上がって時折雪がアイゼンに団子のように付きます。やがて道が少し下りになり、唐沢温泉分岐に着きました。ここには上から下って来たにぎやかな男性4人組の先客がいましたが、私が着くと同時に下って行きました。ここまで来れば今日の行程は半分以上歩いたことになりますので、休憩がてら魔法瓶の湯でインスタント味噌汁を作り、持参のアンパンを食べて、昼食代わりにしました。味噌汁とアンパンは山でしかあり得ない組み合わせです。 この辺りから、雪はいっそう深くなり、周りの木々も雪の白さが増してきます。そろそろ疲労感が出てきたころ、オオシラビソ(シラビソ?・・・私は両者の区別が良く分かりません)が多くなり、目の前に黒百合ヒュッテが現れました。 小屋へ着いた時、今日の泊まりは私だけだと言われましたが、4時過ぎにもう一人小屋に着き、この日の泊り客は2名でした。夕食後暗くなってからヒュッテの外へ出てみると満天の星空が広がっていました。 3月8日 6時前に目が覚め、しばらく布団の中でうとうとしたあと起き出して、いつものように湯を沸かし、ココアを作って魔法瓶に入れておきました。朝食は7時からで、朝食後同宿になったと登山者と少し雑談をして、ヒュッテを出たのは8時でした。ヒュッテの前の温度計は−7℃を示しています。昨夜の天気予報では今日は晴れでしたが、上空は雲で覆われ、風もあって、お世辞にも良い天気とはいえません。これから向かう東天狗岳も山頂付近は雲の中で、山頂手前の「天狗の鼻」は見えません。視界が無くなったら引き返すつもりで歩き始めました。今日は頂上まで行けないかもしれない、という思いが頭をよぎり、気持ちは今ひとつ冴えません。 中山峠で防風対策をして、樹林の中の道を進みます。一度樹林が切れ、天狗の奥庭が眺められますが、風が強く眺めを楽しむ気持ちになれません。やがて樹林が切れるところで、高さ2〜30mの雪の壁が現れました。昨年6月にここを通ったとき、雪が付いたら嫌な所だと感じたところです。トレースは風に飛ばされていて、よく分かりません。夏道は向かって左側だったのですが、そちら側は壁が一番高いので、壁の真ん中辺りからジグザグに登りだしました。足をけりこんでステップを作りながら登りますが、雪が柔らかくひざの上まで足がもぐります。なかなか上に進まず、この雪の壁を通過するのに20分以上かかったような気がします。結構体力も消耗しました。 ![]() ここから先は、一昨年、去年と2回歩いています。左方向の山側へ行き易いので、右方向、つまり谷側方向を歩かなければいけないという印象が残っています。そのため、谷側のトレースを探してウロウロ歩いたのですが、中々見つけられず、そのうち何とスリップ、転倒、滑落です。仰向け状態で滑り落ちましたが、幸い荷物が軽く斜面も緩かったので、ずるずる滑った所でうつ伏せになり、ピッケルを使って止められました。滑落停止の練習は若い時やりましたが、本番でやったのは後にも先にもこれが初めてです。止まった後、足場を固めて一息入れて気持ちを落ち着かせました。この後、しばらく歩いて頂上近くの「天狗の鼻」の少し手前でやっと残っていたトレースを見つけましたが、ここまでだいぶ谷側を歩いていました。 頂上に着いた時、上空には時折青空が見え出しましたが、視界は良くなく、、時折阿弥陀岳がぼんやり見えるぐらいで、反対側の蓼科山は全く見えません。しばらく視界がよくなるのを待ってみたのですが、短時間では視界の回復は望み薄で、風も強くあまり落ち着いていられる状態ではなかったので、適当なところで頂上を後にしました。今朝作ったココアも飲まずじまいでした。下山は天狗の奥庭コースを取り、黒百合ヒュッテでコーヒーを頼んで一息入れて着ていた衣類の整理をして、渋の湯に下りました。渋の湯までは、登山道の石や岩がすっかり雪に覆われて、凹凸がありませんので歩きやすく、実に気持ちの良い下りです。渋の湯の渋御殿湯で温泉に入り、予定通り2時55分のバスに乗って帰宅の途につきました。バスの中から時折八ヶ岳が眺められますが、雲ひとつ無い青空の中の白い阿弥陀岳が印象的でした。 私の場合、本格的な雪山は昭和40年代の半ば、谷川岳に登ったのが最後ですから、今回は30数年ぶりということになります。天候もまあまあで、久しぶりに雪山の何とも言えない感触を味わうことができました。自分の体力、反射神経等を考えると、来年もまたここを訪れることができるのかどうか、何とも言えませんが、できれば再度同じ時期に訪ねてみたいと考えています。今回の山行を考え、事前に2回コースの下見をしてきましたが、まだまだ見方が甘いと思いました。それにしても、雪山でスリップ、滑落とは、なんとも情けない話です。これは、左足のアイゼンを雪面に平行に置かなかった初歩的なミス、あるいは不注意によるもので、自分の老化現象が主因かもしれません。 |
3月7日 渋の湯〜黒百合ヒュッテ |
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黒百合平への登山道 黒百合平へは写真左側の小さな橋を渡って、山の中へ入る |
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高見石方向分岐 ここから八方台分岐まで、登りがきつくなる ここで上から下ってきた登山者とすれ違った |
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八方台分岐 ここは最初の唐沢鉱泉分岐(この後もう一回唐沢鉱泉分岐が現れる)でもある ここから唐沢温泉分岐までは緩やかな登りで、歩きながら一息つける |
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唐沢温泉分岐 2回目の唐沢鉱泉分岐で、ここまで来ると積雪量が多いのが良く分かる ここでティータイムを取り、一息入れた |
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黒百合平付近 雪化粧をしたオオシラビソ(シラビソ?)が美しい |
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黒百合平の入り口まで来ると右手の小高い丘の景観がすばらしい |
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黒百合ヒュッテの前の小高い丘を登ると東西の天狗岳が良く見える 写真は東天狗岳 |
3月8日 黒百合ヒュッテ〜東天狗岳〜渋の湯 |
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中山峠 ここまで来ると木々の間を通る風の音が大きくなり、これから先の強風が予想された |
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東天狗岳方向 中山峠から歩き始めたとき、東天狗岳の頂上は、まだ雲の中 |
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稜線の道 樹林帯を抜けると東天狗岳頂上の雲は消えていた 左側奥のピークは東天狗岳頂上近くの「天狗の鼻」で、頂上はその向こう側にある |
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稜線から見た稲子岳 大げさな言い方をすれば、ギアナ高地の日本版を思わせる特異な形状をしている |
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天狗の奥庭分岐![]() 中央のピークは東天狗岳頂上近くの「天狗の鼻」(岩峰) 東天狗へは写真中央の導標の上側を行くのが正解 私はこの導標の下側を進んでしまい、途中でトレースを見失ってしまった |
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東天狗岳頂上付近の「天狗の鼻」 写真は頂上側から写したもの 北側から登ってくると、これが頂上に見える |
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東天狗岳頂上付近 頂上手前の「天狗の鼻」を越えると登りは緩やかになり、頂上は目の前 |
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東天狗岳頂上 着いた時は無人 強風でくつろいだ気分には浸れなかった |
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東天狗岳頂上からの眺め かろうじて箕冠山の向こうに阿弥陀岳が見えた |
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西天狗岳 雪の付いた西天狗岳はのっぺりした三角形のおむすび形 |
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天狗の奥庭から東天狗岳 この頃になると上空に青空が広がった 大抵の山と同じように東天狗岳も見る方角によって形が大きく変わる ここから見る東天狗岳は大きい |
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東西天狗岳、手前側が天狗の奥庭 黒百合ヒュッテ前の丘まで来ると東西天狗岳がおなじみの双頭峰となって眺められる |
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黒百合ヒュッテ 中は広く、小屋へ入るとすぐ石油ストーブが置かれた団欒用の一角が目に付く ピアノがあったのには驚かされた ピアノはヘリコプターで運んだとのことだった |