7月25日 曇り時々雨
2時に起床。テント内の気温は13.4℃だった。天気の状況は前日と変わらず。テンションがあがらないが、とりあえず4時出発を目指して準備を進めた。前日の花がよかったので自分はもう満足してしまい、白雲連泊で周辺散歩に変更してもよかった。天気が悪ければなおのことだ。しかしここは初志貫徹でヒサゴ行きに決定。幸い、時間がたつにつれて雲は高くなってきた。
4:50 白雲小屋テント場発(高度計:2005m)

エゾツガザクラが咲き乱れる雪渓沿いの道を下って行って、あるところで右のハイマツ林を抜けて稜線--と言ってもだだっ広い高原で「稜線」のイメージはないのだが--に上がると、いよいよ高根が原の高原漫歩が始まる。荒涼とした大地は、実は高山植物がたくさん咲いている。まず目についたのはチシマキンレイカだ。メアカンキンバイも咲いている。そして少し歩くとエゾツツジが混じってきた。
割と近くに地味な鳥が派手に鳴いていた。写真を撮って拡大して見てみると、マシコ系の鳥だった。そこで、ギンザンマシコの雌と勝手に認定した。
5:57 三笠新道分岐(1785m)


なおも拳大の石がごろごろして歩きにくい道を進んでいくと、ようやくコマクサが近くで見られるようになってきた。やはり、赤岳のコマクサ平よりも量・密度ともにはるかに多い。それでも、過去に見た最盛期の花はもっと凄かった。
エゾツツジとチシマキンレイカの組み合わせもヴィヴィッドでいい。そのチシマキンレイカが単体で群落を作っているところは、地面が黄色く染まって見える。
6:51 平が岳あたりを通過


ブッシュ道の中間には開けた湿原状の広場があって、いつもチングルマとエゾコザクラの群落が美しいところなのだが、今回はちょっと時季が違ったようだ。代わりに、と言っては何だが、ハクサンボウフウがきれいで、ほかにエゾカンゾウがちらほらと咲いていた。
ふたたび笹の道を抜けると、また石ゴロの道になる。
7:50 チシマキンレイカ大群落


8:10 忠別沼着(1800m)


8:35 忠別沼発(1795m)


9:21 忠別岳(1960)

さて、この下り道は何度もハイマツ漕ぎで苦しめられたところ。しかし先般購入した2011年版山と高原地図には、2010年にハイマツを刈り払ったとある。これは歩きやすくなったはずと期待満々で下り始めた・・・
10:22 忠別小屋分岐(1710m)

避難小屋分岐へは、下りきってからの水平移動が長すぎるのが精神的によくない。もう着くだろう、次の岩の向こうが分岐だろう、と思うがそのたびに裏切られるので、精神的なダメージが大きいのだ。
それでも、過去はいつも1時間以上かかっていた道を、45分という史上最短タイムで突破。ちなみに山と高原地図のコースタイムは40分だ。ずっと歩いていて暑くなったし、次は登りなのでここでカッパを脱いだ。
五色岳への登りも2009年にブッシュの刈り払い完了とあり、期待したところやはりこちらも歩きやすくなっていた。ただし刈り払い度は忠別の下りに比べると控えめだった。こちらの方がハンノキなどが多くて再生が早いのかもしれない。
11:15 五色岳(1860m)


20分ほど休んでいる間にまた小雨が降ってきたので、再びカッパを着てから出発。五色岳から化雲岳への道の五色岳寄りもやはりハイマツのブッシュだが、やはり刈り払われていて、歩きやすくなった印象。20分ほどでハイマツ林を抜け出ると、この山旅で初めてトムラウシの裾野が見えた。が、またすぐにガスに隠れてしまった。
12:23 化雲平着(1865m)


化雲岳への分岐の標識に着いて、少し過ぎたところの木道の待避線にザックを降ろして大休止。この化雲平は、大雪山の中でも我々の一番のお気に入りスポットだ。なんと言っても花がきれいなのだ。この日はエゾコザクラとミヤマキンバイの混生群落と、チングルマとハクサンイチゲが凄かった。晴れていればバックがトムラウシ山で最高なのだが、まあしかたない。
13:06 化雲平発(1900m)


雪渓の下りは視界が心配だったが、この時間は幸い雲が上がっていて見通しはバッチリだった。この雪渓は、真下ではなくて少し斜めに下りるので分かりにくい。この日は踏み跡すらほとんどなかったので、ガスに巻かれたらかなり危険だったろうと思う。まあ、晴れてりゃあどうってことないのだけど。
13:49 ヒサゴ沼テント場着(1690m)

この日の最高高度は2005m、最低高度は1690m、積算上昇は455m、積算下降は820mだった。標高差300mあまりの間を細かく登降しているのが分かる数字だ。
テント場は奥が空いていたので確保。このサイトは個室感がイイ。テント場から振り返ると、午前中に忠別沼の手前で我々を抜いて行った人が、ヒサゴのコルの方から雪渓をトラバースしてくるのが見えた。
まったりとしたヒサゴ沼の午後
早く着いたがヒサゴ沼には陽射しがあって暑く、なかなかテントには入れなかった。15時を過ぎてちょっと陰ってきてようやく入れるようになったので、テントの中でコーヒーブレイク。カフェオレを淹れ、サン蔵人のお菓子などを食べてくつろいだ。16時になって気象通報を聴き天気図をつけたが、前日朝にホテルのテレビで見たものと、台風の位置以外はあまり変わらなかった。それから夕食を食べた。食事を終えて一息ついていると、沼の奥の方にエゾシカがいるのが見えた。子鹿を含む10数頭の群れだった。シカは遅くまでずっと草を食べていた。
ラジオの天気予報によると、翌日の道内はおおむね晴れるということだった。良い傾向だ。ただし山沿いなどでは午前中まで雲が残るらしかった。この日のテントは6張りだった。ここもまたえらく静かだった。20時前には眠りについた。
森の木がガサガサいう音で目が覚めた。21時だ。何かがいる。ガサガサがずっと続く。どうしても気になって、テントから顔を出して外を見てみた。何も見えない。・・・思い切って、ヘッドライトで照らしてみた。ライトに反応し暗闇に青白く光る8つの眼がじっとこちらを見ていた。ま、まさか、キツネに囲まれている!? ・・・(汗)・・・動きで分かった。シカだった。シカは人間がいると理解したらしくて、ゆっくりとその場を離れて行った。