8月30日 晴れのち曇り


カレーうどんの朝食をとり、テントの撤収をしているとちょうど夜が明けてきた。手を休めて朝焼けの剱岳を堪能した。
6:10 キャンプ場発(高度計:2580m)

6:29 分岐(2690m)
20分ほどで分岐に到着。右が剱御前小舎、左が別山への直登の道だ。ここは直登の道をとる。この道はうんざりするくらいのザレザレの道だった。下りには使いたくないなあ。唯一の救いは朝早くてまだ日陰だということだった。
稜線で左に進路を変えてさらに登る。稜線は直射日光を浴びてまぶしいが、まだ早いので暑いというほどではない。
7:14 別山(2910m)
かなり歩いてからようやく別山山頂の祠が見えた。かなり遠く感じた。まだ朝早く誰もいない山頂からはぐるり大パノラマ。この日も素晴らしい快晴で、前日に剱の山頂から見えた山は、立山に隠れた北アの山々以外はすべて見えた。富山の街と能登半島もよく見えた。前日見えなかった妙高などの頸城の山も見えたので、これは前日以上の超快晴だ。
7:24 別山北峰(2915m)

北峰の方が本峰よりもわずかに標高が高い。別山本峰は山頂がなだらかなので、遠景を撮ろうとすると手前の地面が入ってしまうが、北峰は幾分か切り立っているので、あまり邪魔にならなくて済む。テント場も覗きこめた。しかし逆に、黒部五郎や薬師が本峰に隠れてしまって見えなかった。
確かに、北峰からの剱岳は素晴らしい。テント場から見ると前剱が大きく自己主張していてゴツゴツと武骨な印象だが、ここではその前剱が控えめなので、すっきり整っていてスタイリッシュだ。
別山に戻る


8:10 別山発(2910m)

9:06 真砂岳(2875m)

有名な化石氷体はさすがに分からなかった。残雪の下なのに違いない。雷鳥平へ向かう大走りの分岐を分けて、富士ノ折立への登りの直前で休憩をとり、なかなか険しそうな登りに挑む。
ここもガレたキツい道だ。好調の相棒を先行させて、かつりんは室堂平の景色を眺めながら亀足で行く。上の方の稜線に標識が見えてきて、いよいよかと思ったところで上から下りて来た人に富士ノ折立はこっちですか、と尋ねられた。え、この上じゃないの。双方の話を総合すると、どうやら山頂へは縦走路からピストンする必要があるらしい。標識まで行ってから往復するのだろうと思ったが、この人の言うには標識からの道はないという。いかにも道がついていそうな雰囲気だったが、その後ろの人たちもみんな下りてくるし、ここは仕方なく言われたことを信じてみる。
登山道脇の適当なところにザックをデポして、あちこちにある踏み跡のひとつを適当に選んで、岩をよじのぼった。
10:06 富士ノ折立(3020m)


ここもまた眺めが素晴らしく、今までの山からは見えなかった黒部湖が見えた。反対側は室堂平が広がり、大日岳の奥に富山の街や富山湾が見えた。剱岳も相変わらずよく見えたが、手前に別山が入るため、より距離感が増して見えた。この富士ノ折立は剱岳と同じ標高2999m。岩がちな山頂は狭く、ちょっと休んでからすぐに下って大汝に向かう。
10:21 ライチョウに遭遇
下り始めると人だかりがあった。何かと思ったらライチョウだった。このライチョウが人間をまったく恐れないヤツで、人が集まろうがお構いなしに草をついばんだりしていた。ライチョウを見るのは初めてではないが、こんなに近くでじっくりと見たのは初めてだった。人間どもの視線を一身に集め、ツンとすました顔で闊歩する姿はまるでファッションモデルのようだった。結局、富士ノ折立から稜線の標識へも踏み跡があって、重荷の相棒はそっちの道をとった。
10:44 大汝山(3020m)

大汝山には休憩所があり、山頂はその目の前から片道2分程度ピストンすることになる。山頂は暑いだろうと休憩所に入ろうと思ったら、休憩料100円とあったので、ケチって建物の陰に入って休んだ。
パンなどを食べてから少しして山頂へ向かった。この山行の最高地点だ。大汝の山頂は富士ノ折立よりは少し広く、なかなかの賑わいだった。雄山まで登った人がここまで足を伸ばしてくるようだ。眺めは富士ノ折立とだいたい同じ感じ。すぐ近くだから当たり前だが。
11:20 大汝山発(3025m)

11:39 雄山着(3020m)


山頂神社にお参り。登拝料はひとり500円。神社に参拝なんて、何年ぶりだろう。脱帽すると暑い暑い。宮司の祝詞を聞いていると、まだまだ下りがあるにもかかわらずゴールに到着した気がしてきた。
12:19 雄山発(3020m)

13:01 一ノ越(2745m)
一ノ越には40分ほどで着いた。小屋の日陰にザックを下ろして水をがぶ飲みした。本日は雷鳥沢でテント泊の予定だったが、この下りですっかり意気阻喪。暑さで疲労がピークに達し、さらに雄山山頂でゴールした気分になってしまいモチベーションも右肩下がり。テントを張るにしても、晴れていればまだしも雲で山は見えないし、予報では今夜は雨なのだ。今朝、乾いたテントを撤収したのに濡らしてしまってはもったいない。翌朝も、あの滑りやすく歩きにくい石畳の道を1時間もかけて室堂へ上がらないといけないし。と理由をいくつも並べて自らを説得し、ダメ元で室堂のホテル立山に電話してみると、なんと空きがあるという。というわけで、日和ってしまったのだった。山小屋3泊分の料金だが、この3泊をすべて山小屋泊まりだったと思えばいいのだ。
13:33 一ノ越発(2745m)

ここでふと、大雪山を下山するときと同じような気分になっている自分に気づいた。雄山は旭岳で、室堂は姿見だ。観光客にまみれて下山し、石畳の歩きにくい道を行き、下りきったところは花がきれいで人がいっぱいなのだ。温泉もあるし、山が映る池があるところなんかも同じだ。大雪山姿見は自分にとっては完全にスタート・ゴール地点だ。旭岳温泉にもキャンプ場はあるが、自分はあそこで幕営する気にはとうていなれず、下山したらどこか宿をとってゆっくりしたい。今の状況とそっくりだった。
14:26 室堂着(2505m)

立山ホテル

夕食はチェックイン時に和食か洋食を選ぶのだが、とりあえず洋食にした。コース料理だったが、前菜の量からして足りなさそうな予感がしたので、富山名産の白えびの掻揚げを追加で注文してしまった(山の中なのに・・・)。ワインは、山奥なのに驚くほど充実したリストでたいそう迷ったが、結局地元の立山ワインの赤を注文した。ぶどうが富山県産というのが第一の理由だ。ベリーAの軽いワインだが、そのせいか赤なのに白えびにもよく合った。メインのステーキは予想外に量が多くて、おかげで満腹になった。
食事の最中には雷雨があった。雨音からするとかなりの土砂降りのようだったし、結構近くに落ちたような音もしたので、テントだったら生きた心地がしなかっただろう。ホテル泊まりにして結果オーライだった。
この日の最大高度は3,040m、最低高度2,500m、積算上昇700m、積算下降780m。積算高度は上昇・下降ともに前日の剱岳登頂日よりも若干大きかった。そりゃあ道理で疲れたわけだ。