Top | 浮世絵文献資料館 | 名所編 |
名所編 【む】 | 大田南畝(四方赤良・蜀山人)の詩・狂歌 〔名所編〕 | 大田南畝関係 |
詞書・詩歌 | 出典 | 巻・頁 | 年月日 |
---|---|---|---|
「春日、牛渚に遊ぶ 春草侵牛渚 風光好繋船 三囲攀社樹 万戸満花川 何用燃犀照 唯看膾鯉鮮 青旗行処有 取酔且留連」 〈「牛渚」は「ウシジマ(牛島)」〉 | 南畝集6 漢詩番号1081 杏園詩集二 | ③373 ⑥66 | 天明2年 1782/03/ |
「向島 早うしもおそ牛島もよどみなくいけすのこひにこがれよする船 歌人の居ながらしるの赤味噌の鯉の名所は隅田川かな」 | 巴人集 | ②412 | 天明3年 1783/07/ |
「向島賦 花のお江戸のすみだ川、まつち山からむかふ島のけしきは、みめぐりのみめぐりありきても、洲崎のまさごのよみつくしがたし。春はやう/\土手の若草火縄とゝもにもえそめ、牛島のつのぐむあし酒樽に錐もみし、軒端の藤波見せさきにかゝれば、池のかきつばた川骨(カウホネ)の色をあらそふ。生酔の目に青葉して、山ほとゝぎすおちかへりなく此より、屋かた屋根ぶね似たり猪牙もあひをつなぎ、あゆみをかく。秋は千葉の山の紅葉、はなの高尾の色をあらはし、ぶら桃灯のぶらつきしはては、灯籠にはかに心かはり、いつしか時雨に落葉きく。雪見酉の町のうき船に、炬燵の灰のかきたてゝいひつゞくれば、みな源氏の宇治十帖のかし座敷、いせ物がたりの乗合ぶねのはなしめきたり。日もくれぬはや舟にのれとは、むかふへわたれといふ事歟。いざことゝはん、あそぶ気はありやなしや。しゐのはならぬあしのはの、筏にいり酒のあらひ鯉をもり、山椒の実は小粒でも、蒲焼のうなぎの長ざきにともなふ。吸物の赤味噌あかずして、どんぶりのどんぶりはまる生簀のほとりに、芸者の三線堀の名の薬研でおろすかとうたがひ、太神楽の曲太鼓、日ごとに一万度もまはるべし。かくうかれたる世にしあれば、都鳥のはしとあしのあかきも、秋葉の猿のしりの様に覚え、晋子が夕立の句も、稲荷の狂歌の額の事かと、をのが田へひく水草の、きよき所のとつ国より、北のくにとははひわたるほどちかきわたりの、四方のながめは名におふ葛西の太郎月より、いほざき(庵崎)の大黒屋、夕こえくれのせはしきまで、いづくはあれどむさし屋と、地口有武がもとむるにまかせて、紫の一本ならぬ、赤良が一筆しめすになん 狂歌湧くが如し角田の汀 短冊頻に飛ぶ秋葉の庭 向ふ島の風流此れより始る 武蔵屋の額権三が亭 はや牛もおそ牛島もよどみなくいけすの鯉にこがれよる船 腹からの秋人 いつみてもけしきはたれかあか味噌の鯉と恋とにさしむかふ島 酒上不埒 みめぐりへたえずに舟のつき雪や花のお江戸のまんむかふ島 地口有武 牛島の亭主のすきの赤味噌は時をゑぼしの鯉の包丁」 | 四方のあか | ①145 | 天明3年 1783/07/ 天明8年刊 1788/01/ |
「向島の吟 紫檀の棹華梨の舟 継三線の箱船頭に渡す 美酒隅田諸白を置き 婦を入れ波に随ふて自由に任す 太郎待つこと有りて洗鯉を割(サ)き 酔客心無くして泥鰌(ドヂヤウ)に随ふ 其角の発句夕立を懸け 業平が都鳥空しく白鴎 興(ケウ)酣(タケナハ)にして船宿待乳(マツチ)を呼び 歌成つて一曲蘭洲(ランジウ)を凌ぐ 孔明張良若し此に在りとも 鉄石も亦(マタ)北国に流るべし」 〈料亭・葛西太郎や三囲稲荷のある向島を詠んだ狂詩。『唐詩選』所収、李白の「江上吟」のパロディ〉 | 通詩選 | ①439 | 天明4年刊 1784 |