◯『嬉遊笑覧』巻三「書画」p409(喜多村筠庭信節著・文政十三年(1830)自序)
〝江戸絵は菱川より起りて、後鳥居庄兵衛清信と云者あり。初め菱川やうを学びしが、中頃画風を書かへ
歌舞伎の看板をかく。今に相続きて其家の一流たり。勝川流は宮川長春を祖とす。長春は菱川の弟子に
はあらねども、よく其風を学びたる者也。勝川流にては春章すぐれたり。歌川流は豊春より起る。豊春
は西村重長の弟子なり【重長は初めの鳥居清信の弟子なり。後に石川豊信といふ】此流にてはこの頃ま
で歌麿が絵世にもてはやされたり。其外あまたあれ共枚挙にたえず〟
◯『紙屑籠』〔続燕石〕③72(三升屋二三治著・天保十五年(1844)成立)
(「役者似顔絵師」の項)
〝勝川春章 春章門人春英【九徳斎】 春英門人春亭〟
◯『画家大系図』(西村兼文編・嘉永年間以降未定稿・坂崎坦著『日本画論大観』所収)
「宮川・勝川画系」
◯『暁斎画談』河鍋洞都(暁斎)画 瓜生政和編 植竹新/岩本俊板 明治二十年(I887)刊
「外編 巻之二」(早稲田大学図書館「古典籍総合データベース」)
〝宮川長春【正徳中】→ 同春水【長春門人】→ 勝川春水【長春門人/俗称藤四郎】→ 同薪水 →
勝川春章 → 同春好 → 同春朗【北斎辰政/為一戴斗/文化中】→ 同春紅 → 同春英【寛政中】→
勝川春亭 → 同春玉 → 同春陽 → 同春林 → 同春琳 → 同春扇 → 同春青 →
勝川春和 → 同春久 → 同春徳 → 同春洞 → 同春雪 → 同春山
勝川春常【春章門人】
◯『諸画家系普鑑及年代図形高評品』東京(吉田竹次郎編 前羽商店 明治二十九年(1896)十二月刊)
(国立国会図書館デジタルコレクション)
(浮世絵之部 宮川長春ノ系)
宮川長春
宝永正徳頃ノ人ニシテ、初土佐ノ門人トナリ、子ノ為ニ故アリテ流罪トナリ、放免ノ後、好テ浮世絵ヲ学
デ一家ヲナス
同 春水 長春門人
勝川春水 長春男 元文
同 薪水 寛保
勝川春章 似顔名人 寛政四年没
春好 小壺ト云
春朗 北斎
春紅 春江男
春英 九徳斎 文政二
春亭 武者画上手 三代迄アリ
春常 春潮 春玉 春和 春徳 春陽 春久 春琳
春雪 春洞 春扇 春山 春祥 以上文政ヨリ安政〟
◯『浮世絵の諸派』上下(原栄 弘学館書店 大正五年(1916)刊
(国立国会図書館デジタルコレクション)
〝勝川派 上(22/110コマ)
宮川春水の門人春章は役者絵が上手で、且つ嬌態の美人を描くことが巧みであるから、大の名声を博し
て、春章以下を特に勝川派といふやうになつた。春章の門人から春潮・春英・春朗(後に北斎)などが出
で、春英の門人には春亭・春扇等居たけれども、余り世に著はれないで勝川の流は枯れた〟
〝勝川春章 下(20/110コマ)
門人では春英・春好・春潮・春朗(後に北斎)などいづれも世に著はれて居る
春英の弟子には春亭・春山・春扇・春常・春鶴・春泉など聞えて居る〟
宮川-勝川-西村派系図(『浮世絵の諸派』上 所収)