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最終更新 00/12/11 |
末廣 誠氏 写真は本番より、牛山氏提供
末廣氏紹介 |
![]() 第45回定演プログラムより ヨーロッパの文化は即ち、「石」の文化だ。その「石」が造り上げる教会やカテドラルは、また完全な空間となる。冷たい「石」のまなざしの中で、様々な音がはね返され、まじり合う。まさしく「響く」のである。しかしそれは、不思議とあたたかい。ステンドグラスの柔らかい光の中に沈んでいくこの「石」の「響き」の中に、ヨーロッパ音楽の魂を感じる時、多くの楽聖達への狂おしいほどの想いが私をつらぬく。ちょうど、柔らかい弦のトレモロの「光」の中に、はてしない「響き」を秘めたホルンのテーマを耳にする時のように。この熱い想いこそが"ロマンティツシェ"だ。 |
![]() 第46回定演プログラムより 冬。凍てついた時間の中で、襟を合わせ身を抱み、雪と風に震える木々と、重く厚く閉ざされた灰色の雲を私は見る。また、冷え冷えとさえわたった星空の下、蒼く透き通った月の光に照らされた白い原野を、私は見る。一つとして動く物の無い、リンとした静寂の中にあってさえ、心の奥底のヒダには様々な想いが、熱く、深く息づいている。冬は、その自然の様相をもって、なんと多くの憧景を心に呼び覚ますことだろう。 その全ての憧景が、一人のロシア人をして一連の音の世界を生まれさせた。冬こそは、多くの芸術の、力強い原動力なのだ。そして今、チャイコフスキーの熱い想いが、私の中をかけめぐる。 |