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2:軍艦の塗装
日本の軍艦の塗装や考証については衣島尚一氏をはじめ多くの方々が苦労を重ねて積み重ねた研究があり
生半可な知識しかもたない者が推測を入れるのは厳に慎しむべきですが、
咀嚼して簡潔にまとめておくことはやっておきたいと思います。
ただ、ここでの色の選択は「厳密な正確さよりも入手しやすく、作った物毎に色がばらつかない」
をまず優先していますので御了解下さい。

空物 海物 陸物 その他

海物2−B−1(英国海軍の塗装)
2−A−1 日本海軍艦船の塗装色(1)
戦中の大和の塗装やトラック島をはじめとする最前線でのでの塗装とか諸説いろいろある事柄はあると思いますが
こだわらずに割り切ってしまえば船体色の基本色はクレオス32の軍艦色一つで括ってしまっても別に構わないんでしょうね。
どちらかというとややこしいのは標準色に至るまでの明治期の軍艦での目まぐるしく変わる塗装指定等の区切りでしょうか。
カラーチップ 色名 市販カラー 備考
横須賀海軍工廠標準軍艦色 クレオス 32 軍艦色2
「軍艦の塗装」によると、クレオスの32番は横須賀海軍工廠の塗装色ということになるそうですが、この塗料はいろいろ発売になっている日本軍艦塗装色で唯一缶スプレーになっている点が非常に重宝します。基本的なベース色をこの色として全体を吹いた後各海軍工廠の塗装色をガンで吹くようにすればコレクションでの色のバランスがマイルドになり作業の効率も非常に良くなると思います。
呉海軍工廠標準軍艦色 クレオス SC01
ピットロード9
呉海軍工廠軍艦色よりやや明るめのグレー、指定通りで特に問題なしです。
佐世保海軍工廠標準軍艦色 クレオス SC02
ピットロード8
日本の軍艦色の中で一番暗いグレー、1/700の場合あまり暗いと違和感が出るので正直言ってそのまま使うのはためらわれます。明るい色で光の当たる部分等をオーバーコートするなどの調整はやった方が良いかと
舞鶴海軍工廠標準軍艦色 クレオスSC03
軍艦色の中では一番明るいグレー。建造艦種から見て舞鶴の場合小型艦の標準色とするのが良いと思います。
甲板色1 クレオス 44 タン 甲板色は好みの選択としか言いようがないのですが、ベースとしてウッドブラウンを吹いた上で吹いたり、木甲板の生っぽさを狙えばクリヤーオレンジ、クリヤーイエローなどの混色を組み合わせて面相筆にてパターンを描き込みメリハリをつける方法もあります(見栄えはこれが一番派手でしょうか)、また年月が立つほど木材の表面はグレーに近づいていくので、もっとトーンを落としたセールカラーやバフといった色を使って落ち着いたモデルにするというのもありですし、極端なコントラストを狙うのであればクレオス19サンディブラウンを使うのも見栄えはかなり良い物になります。
甲板色2 ピットロードPC10
リノリウム ピットロード
PC11
クレオス41
レッドブラウン
これもあまり悩まない方が良い色です。学研「真実の艦艇史2」中に出てくる長門作例ではかなり赤っぽいリノリウムが設定されていますが,考証の結果とはいえかなり違和感が。あれがそのまま巡洋艦の甲板色になるとか総合的に考えるとちょっと抵抗があります。
木貼りの甲板と違ってあまりパターンが付けられる色でもないので統一性を重視した方が良いのではないでしょうか
艦底色 クレオス29 WLシリーズにおいてはあまり神経質になる必要もない色だと思いますが、最近潜水艦などでフルハルのモデルも多くなってきましたので指定を追加。いずれにせよ水面下の色ですから既存の指定色で問題はないと思います。
2−A−2
年代による外舷色の変遷(一応キットがある年代以降)

1:明治10年代後半から明治28年8月29日までの指定色
クレオス311
ライトグレー
クレオス62
つや消し白
塗装既定のなかった明治10年代後半から明治21年5月29日までの期間、及び5月30日に海軍大臣からの通達により初めて鼠色の既定が通達(但し鼠色への変更は各艦の外舷塗り直し時からの順次実施でOKとされていたため実際の変更時期は各艦によりまちまちである。)され、明治24年6月24日に再び変更通達が出されるまでの期間を除き、以後明治28年8月29日までの期間の外舷色指定色は白。また、外舷上端に識別線を幅20センチで入れる様指示色は同型艦一番艦は黒以下、二番以降赤、黄、あさぎ色(薄い青)
五隻以上の同型艦がある場合は鎮守府長官が定め海軍大臣の認可を得る事

色指定はクレオス62のつや消し白でも良いのですが、多少のくすみも考慮してクレオスの311ライトグレーをチョイスしてみました(中間において使用された鼠色も明度は高めのライトグレー:クレオス325程度でしょうか)
識別線の幅は1/700で0.3ミリ弱になります。
淡黄色 C-17
近鉄オレンジ
SDEカラー
J7
黄橙色
上記期間を通じてのマスト、煙突色(おそらく鼠色指定時期も変更無し)当時英仏露各国等の軍艦に用いられた淡黄色とほぼ同じ色という事でしょう。黄色といっても黄土色に近い色で既存の色ではクレオスの鉄道色の中に近い色があります。
クレオス33 上記通達にて煙突上部の塗装についても規定。煙突直径の1/3の上端部を黒とする。
2:明治28年8月30日通達、以後明治34年9月9日までの指定色
鼠色1 クレオス325
グレー
明治28年8月30日通達により、外舷、煙突、砲等構造物の塗装色を鼠色に変更
鼠色については当初配合指定がありませんが、明治29年1月22日に指定通達があり、白色顔料に1/1400の比率でカーボンブラックを混合と規定。外舷線の指定についても変更があり、1番艦から黒、赤、青、4番艦以降は同色の複線と指定される。
外舷線幅は10センチ、及び複線の場合の間隔も同じく10センチに規定。

色指定ですが上記配合指定だと鼠色といっても相当明るいグレーということになります。前の段階でクレオス311で指定しましたので、クレオス325のライトグレー程度が妥当でしょうか。
識別線の幅は1/700で0.15ミリ弱になります。
クレオス33 上記通達にて煙突上部の塗装については変更無し。煙突直径の1/3の上端部を黒とする。
一部改訂 明治33年12月21日
クレオス33 軍艦のうち戦艦については外舷線以下を黒とする。他の艦艇は従来通り
3:明治34年9月10日通達、以後明治37年1月8日までの指定色
鼠色1 クレオス325
グレー
明治34年9月10日通達により、外舷上甲板以下と外舷部と煙突ケーシングより上、シェルターデッキ以上のマスト、ヤード、デリックの塗装色を黒とし、その他の部分を従来の鼠色とする。塗装外舷線は廃止
クレオス33
4:明治37年1月9日通達以降の指定色
鼠色 クレオス 32 
軍艦色2
連合艦隊の諸艦は水線以上の全面を濃い鼠色とする。
これは暫定で37年7月2日に正式通達が出され、内容は細部の規定が追加されたものの基本的には変更なく
以後の基本的な日本海軍艦艇の塗装色がここで確立する事になります。
参考資料 モデルアート社刊 「軍艦の塗装」
シールズモデル 1/700戦艦「三笠」他塗装説明書