ピコ通信/第129号
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EUが16年間の農薬リスク評価完了
ほとんどの有機リン農薬を不認可 本紙125号(09年1月23日発行)で紹介しましたが、EUの新たな農薬法案が09年1月13日にEU議会で採択されました。本年後半には発効する農薬に関する新しい規則は、環境と健康に関する基準が強化されます(末尾に概要紹介)。 また、3月16日、1993年から16年間にわたって進められてきた農薬のリスク評価が完了したことが発表されました。公表されたデータベース(注1)によると、日本では広く使われている有機リン農薬や有機塩素系農薬のほとんどが、不登録農薬、すなわち不認可とされています。 有機リン系農薬は神経毒性等による深刻な影響から、製造・使用をやめるべきだと私たちは主張してきていますが、EUではそのほとんどが不認可農薬とされたのです。 ■EurActivの報告 EurActiv(EUの行政、議会の動きを伝える民間の情報機関) 2009年3月16日付解説記事は、今回の動きを以下のように報告しています。
公表されたデータベースを見ると(注1)、活性成分の総数は1,209、そのうち認可成分が334、不認可成分が766、保留が67、農薬に使われていない物質(エタノール、ワックス等)42となっています。 【不認可成分リストに記載】 ▼有機リン系農薬のほとんど アセフェート、カズサホス、ダイアジノン、ジクロフェンチオン、ジクロルボス、フェニトロチオン(スミチオン)、トリクロルホン、マラチオン(マラソン)、チオメトン、イソキサチオン、エチオン、フェンチオンなど。(クロルピリホス、クロルピリホスメチルは認可リストに入っている)。 ▼有機塩素系農薬のほとんど D-D、2,4,5-T、DDT、クロルピクリン、クロルフルアズロン、ジコホル、エンドスルファンなど ▼ピレスロイド系農薬の多く ペルメトリン、フェンバレレート、アレスリン、ビオアレスリン、テフルトリン、テトラメトリン(フタルスリン)、レスメトリンなど。(シペルメトリンは認可リストに入っている)。 ▼その他不認可成分 ディート(注)等 注:日本でも農薬としては非登録だが、虫よけ剤によく使われている。 ■ネオニコチノイド系農薬は認可 認可農薬の中には、ハチの蜂群崩壊症候群の原因として疑われている以下のネオニコチノイド系農薬が含まれています。 イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、チアクロプリドなど。 イミダクロプリドの評価書を見ると、「イミダクロプリドを含む農薬は、指令 91/414/EECに規定される安全要求を満たすであろうと期待してもよい」とあるのですが、但し書き条件の中には特別に注意を払うべきことの中に「ミツバチの保護、特に散布時に」とあります(注2)。 ドイツでは2008年にミツバチへの影響を理由にクロチアニジンと他の7種の殺虫剤の使用を禁止、フランスでは1999年にイミダクロプリドが禁止されたという情報があります。 今後、新たな農薬規則によって、再評価が行われることが予想されます。 ■新しい規則に基づく更なる評価が始まる このように、日本で一般に広く使われている農薬の多くが不認可農薬とされているわけです。我々が製造・使用をやめるべきだと主張している有機リン系農薬は、ほとんど認可されていません。そして、EUでは今後は環境と健康に関する基準がさらに強化された新しい規則に基づいて、現在認可リストに入っている農薬の評価が再開されるということです。 さらには、農薬の空中散布の禁止、公共の場所での農薬使用の禁止などの農薬使用に関する規制についても期待されます。 EUにひきかえ、日本の農薬行政の全くの遅れを痛感します。 ■おさらい:EUの新たな農薬規則 ▼農薬使用と認可規定に関する合意
(注1):欧州連合(EU)の農薬データベース(EU Pesticides database) について http://ec.europa.eu/sanco_pesticides/public/index.cfm
2009年3月16日に立ち上げられた欧州連合(EU)の農薬データベース(EU Pesticides database)からは、 活性成分(Active Substances)と残留農薬基準(MRLs)に関する情報が得られる。 ■活性成分(Active Substances) 下記のStaus を選択できる 。(entries数は2009年5月22日現在)
下記のアプローチができる。
欧州委員会健康・消費者保護総局 2008年6月20日 活性成分イミダクロプリドのレビュー・レポート 2008年9月26日 食物連鎖と動物健康に関する常任委員会で決定 |