ピコ通信/第18号
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2.第2期・連続講座 第9回「合成洗剤と人体汚染」 −基礎からアトピー・環境ホルモンまで− 2000年2月5日(土)に行われた坂下 栄さん(生活クラブ連合会顧問)の講演より(文責・当研究会) 洗剤の話というと、女にしか関係がないと考えられがちですが、男にも関係があります。今日は男性が多いので、大変うれしく思います。私は医学部出身なので、体の中の働きという視点から話します。実験のスライドを見ていただきながら、話を進めます。
洗浄剤とは 洗浄する第一の成分は界面活性剤です。界面活性剤は2千数百種類あって、次々に新しいものが開発されています。合成界面活性剤はせっけんより洗浄力が弱いから、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩というアルカリ性の助剤を添加しています。LAS(注1)はタールみたいなもので、粉にならないので、ゼオライトに染み込ませます。溶けにくいし、かすもいっぱい出ます。
洗剤の種類 せっけんも陰イオン系です。紀元前にサポーの丘で、犠牲の羊の脂と木の灰から偶然せっけんができました。作り方はそれ以来原則的には同じです。天然の油とソーダを反応させると固形になり、これを砕いたら粉せっけんになります。カリ反応をさせると液状になり、液体せっけんとなります。 分解性の悪いハード型(ABS 注2)は、多摩川の泡公害でソフト型(LAS)に移行しました。最近は陰イオン系から非イオン系に移行しています。メーカーが陰イオン系の毒性を認めて、LASは洗濯用に残っている程度です。歯磨き剤はさらに毒性の低いASです。陽イオン系は殺菌作用や帯電防止作用があり、新しい衣類に塗ってあるので、洗い落としてから着て下さい。 非イオン系は、アルキル基を脂肪酸で作る脂肪酸系、鉱油系にはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとポリオキシエチレンアルキルエーテルがあり、前者が環境ホルモンとされています。脂肪酸系はほとんどの市販品に配合されていますが、急性毒性試験では、一番悪いという結果が出ています。
界面活性作用の仕組み 第二次大戦後は石油をくまなく使うということで、合成洗剤、農薬、グルタミン酸ソーダ、プラスチックがどんどん使用されました。洗剤の問題は、石油文明の一つとして見なくてはなりません。
わかりやすい実験 お婆さんがポリデントを使って味を感じなくなり、やめたら治ったというケースもあります。このスライドでは、毛根が死んでいるのがわかります。男性も、シャンプーの原液を頭にかけているから、髪が薄くなっているのです。皮膚は本来何も入れない保護装置になっています。ところが洗剤は油溶性の有毒化学物質を皮膚から入りやすくします。 肝臓は解毒する中枢で、有害な物を分解する酵素を作ります。洗剤に放射性同位元素をつけて実験した科学技術庁の研究では、肝臓では分解しないで他の内臓へ行っています。経口摂取では、1週間でほとんどを排泄しますが、経皮摂取では、10日たっても10%しか排泄せず、他の体内に残っています。 細胞を見ても、ミトコンドリアが変形、萎縮しています。外側から溶かして行くのが、陰イオン界面活性剤の特徴です。非イオン系は一部に配合されているだけでも、強い毒性が出ます。 稲を洗浄剤の水溶液で育てた実験では、せっけんでは大きく育っています。栄養になるので自然の循環にあっているのです。LASでは立ち枯れているので、生物を殺すものだということがわかります。 私の実験は濃い濃度でやっていると批判されますが、昔の水道基準0.5ppmでやっても、日にちが経つとメダカのエラが溶けます。薄くても、日数をかければ、全部死ぬので、濃い実験と結果は同じです。 合成洗剤によるネズミの半数致死量LD50は、東京都衛生研究所の400ミリグラムが一番厳しい結果です。2,800か3,500ミリグラムがゆるやかなデータです。坂下は一番厳しいデータで消費者を煽っていると論文を書いた人までいます。メダカは一生が短いから早く結果が出ますが、人間が一般的に使うものは100年、200年のタイムラグで考えないといけません。それで動物実験のデータを使うのですが、その時には一番厳しいデータをとるべきです。
高い胎児のリスク 卵子も精子も胎児中に全部できるので、思春期に病気になったとして、その原因はお祖母さんの代にあるかもしれません。避妊薬のマイルーラは、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルそのものです。マイルーラを使って、もし受精してしまったら、胎児が直接影響を受けます。
洗剤の表示
アトピー アトピーの原因物質をやめても治らない時に、洗剤をせっけんにかえると治るということがあるので、洗剤が細胞膜を弱くするかして、アトピーをひどくしていると考えられます。アレルギーで涙、鼻汁が出るのは、物質を入れまいとして、自分の体を守る生物の防御反応の一つと考えて下さい。
ホルモン撹乱物質 脳下垂体が内分泌をコントロールし、血液でフィードバックして、体のホメオスタシス、恒常性を維持しますが、ホルモン撹乱物質はこれをあちこちでぶつ切りにしています。細胞のリセプターは、10億分の1モルで反応するので、いかに微量で体の中の反応が起きているかがわかります。 育児中、哺乳瓶を洗うと白くなるので何か出ていると思い、実験をしてみました。2年間それぞれの容器にいれた水を飲ませて、ネズミの体重を計ると、水道水だけのが一番大きく、次がポリエチレン、発泡スチロール、スチロールコップの順でした。 スチロールの水を飲ませたうちの残った7匹の4匹に腫瘍ができました。この方法では何が溶け出したかはわかりませんが、成長に影響していることは分かります。私たちは以前はppmオーダーの、死ぬかどうかという実験をしていましたが、ppb、ppt の水準でやっていたら、ホルモンの変化もわかったろうと思います。 ppm から ppb、ppt へ、研究手段が発達したから極微量での影響が分かってきたと言いますが、最近、生物にいろいろな異常が見つかるようになったのは、世代が渡ってはっきり結果が出てきたからだと思います。人間の世代交代はもっと長いので、簡単には証明ができないのです。
注1:リニア・アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
![]() −日本の海外援助が、途上国の焼却炉建設に使われる− タイではいま、二つの焼却炉が稼働中、二つとも日本のメーカーによるものですが、周囲の環境へ重金属等の汚染を引き起こしてきました。(注1) さらに首都のバンコクでは、焼却炉(1日の処理量1,300トン)4基でバンコクの廃棄物を焼却するというプロジェクトの提案が進めれられつつあります。提案されているモデル炉は、現在東京都の北区や練馬区光が丘で稼働中の発電/熱回収つきの焼却炉で、バンコク当局の資料に写真付きで載っています。 このプロジェクトには日本政府から200億バーツ(約600億円)が提供されることになりますが、このプロジェクトが提案どおりに決定すれば、それを日本の焼却炉メーカーが受注することになります。日本の開発援助や融資機関の名の下に、税金で焼却炉市場を拡大している日本。アジア諸国がその格好の対象となっています。 世界最多の焼却炉が稼動する日本国内では、焼却炉周辺の著しいダイオキシン汚染や焼却灰の持ち込み先などでの環境汚染によって、市民の懸念がますます高まっているのに、その一方で、海外経済協力基金(OECF)など日本の援助および融資機関が海外、ことに途上国における焼却炉建設に資金を提供し、焼却炉の拡大に荷担しているのです。このことは私達日本の市民にとっても重大な問題です。 オランダやドイツ、日本などの国では、焼却炉への規制が厳しくなるにつれ、焼却炉からの汚染排出をモニターしたり、あるいは抑制するために膨大な出費を余儀なくされています。 国内で汚染を引き起こしたり、そのために膨大な経費をかけてきているにもかかわらず、日本の経済援助資金に支えられて、日本の焼却炉メーカーはタイなど途上国へと有害物質汚染を拡大する方向へ動いています。焼却によってこれ以上他国や将来の環境を犠牲にするのは許されないことです。もし日本がタイのごみ処理に援助をするのであれば、廃棄物の排出削減や分別、再使用、堆肥化を推進できるような支援をすべきなのです。 (関根:2月8日、バンコク日本大使館前で横断幕を掲げてのグリーンピースの抗議行動に参加してきました。この活動はグリーンピースの船「虹の戦士」号の“汚染なきアジア”ツアーの一環。タイの後、フィリピン、香港を経て4月中旬から日本でキャンペーンツアーを行う予定です。)
(注1)
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