EWG プレスリリース 2006年4月4日
ソフト・ドリンク中のベンゼン
FDA首脳がデータを隠して公衆に安全を保証

過去のFDAテストがサンプルの79%のダイエット・ソーダに
飲料水での基準値を超えるベンゼン汚染を示す

情報源:EWG Press Release, April 4, 2006
FDA Data Undercut Public Safety Assurances by Top Agency Official
http://www.ewg.org/issues/toxics/20060404/index.php

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年4月13日
更新日:2006年7月29日(*)
(*)清涼飲料水中のベンゼンについて
平成18年7月28日厚生労働省医薬食品局食品安全部にリンク


 【ワシントン4月4日】 米食品医薬品局(FDA)のテスト・プログラムの結果を分析したエンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)のコンピュータによる調査が、2006年3月21日にFDA首脳によってなされたソフト・ドリンク中のベンゼン汚染についての全面的な安全保証と矛盾する結果を暴露した。FDAのデータは、1995年から2001年までの6年間にわたりテストされたダイエット・ソーダのサンプルの79%が水道水中の連邦政府ベンゼン基準を超えるレベルでベンゼンにより汚染されていたことを示している。

 ”トータル・ダイエット調査”と呼ばれるあいまいなFDAの食品テスト・プログラムの中に深く葬られていたFDAのテスト結果が、FDAの首脳の一人がソフト・ドリンク中の有毒化学物質の存在による脅威はないと国民に保証した数日後に、EWGのウェブサイトに掲載された。イギリスでは先週末、公衆衛生当局がベンゼンで汚染されているという理由で店頭からいくつかのソフト・ドリンクを撤去した。

 2006年3月28日、AP通信は、FDAの食品安全応用栄養センターのディレクター、ロバート E. ブラケットによる”飲料中のベンゼンのレベルは安全の懸念を示唆するものではない”という断定に基づき、全国消費者向けに”ソーダー中のベンゼン・テストで安全の懸念はない”と発表した。ブラケットはFDAの1993年のテスト結果は、”ソフト・ドリンク中でベンゼンがわずかなレベルで検出されたことを示した”−と述べた。

 しかし、ブラケットが発表した時には入手可能であったもっと最近の1995年から2001年のテスト結果はダイエット・ソーダ及びその他のポピュラーな飲料製品中にもっと高い汚染が存在していたことを明らかにしている。

 1995年から2001年の間に、FDAはベンゼンについて24サンプルのダイエット・ソーダを”トータル・ダイエット調査”でテストした。79%が連邦政府の水道水基準である5ppbを超えるベンゼンで汚染されていた。ベンゼンの平均レベルは19ppbであり、水道水基準のほとんど4倍であった。最大検出レベルは55ppbで水道水基準の11倍であった。各テスト結果は3つの異なる都市で購入した個々のソーダを混合してひとつのサンプルとしたものから得られた。

 FDAのテスト結果にはブランド名とメーカー名は明らかにされていなかった。

 他の飲料のテスト結果もまた、高い濃度のベンゼンの存在を明らかにした。FDAがテストしたひとつのコーラ飲料は水道水基準5ppbの27倍の濃度である138ppbのベンゼンで汚染されており、ある果汁飲料は95ppbであった。オレンジとグレープフルーツのジュースもまた懸念あるFDAの5ppb基準値を十分に超えていた。

 これらの結果は、いくつかの非常にポピュラーな飲料中に高いレベルのベンゼンが存在するという我々の疑いを確認するものである”−とエンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)の副代表リチャード・ワイルスは述べた。”またまた、FDAは食品大企業の側に立ち、飲料中のベンゼンの問題について、データを隠し、FDA自身のテスト結果と矛盾する安全の再確認を発表して消費者を欺いた。”

 先週末、イギリスの当局はベンゼン汚染のために4つの銘柄のソーダーを店頭の棚から撤去するよう命令を下した。国民からテスト結果を隠すというFDAの方針と対照的に、2006年4月19日付ロンドン・タイムズ紙の記事によれば、”イギリスの食品基準局は果物ジュース、アイスティー、スカッシュ、フィジー(気泡性飲料)及び低糖分飲料を含む広い範囲の飲料149銘柄に関するテスト結果を急遽昨日、発表した。”

 ”これは、問題解決のための簡単な方法である”−とワイルスは述べた。”FDAは、イギリス食品安全当局がやったようにすべきである。すなわち、税金で行ったテスト結果を公表すること。どの製品が高いレベルのベンゼンを含んでいるかを消費者に公表すること。どのような環境で、例えば高温化での長期保存など、ベンゼンが生成されやすいのかを消費者に伝えること。”

 ”イギリスでは人々は今でもダイエット飲料を買い、飲んでいる。大丈夫であると考えられる銘柄について、人々はソーダやジュースを消費している。イギリスでは政府がヒトに対する発がん性のあるベンゼンのレベルが許容できないレベルではなくなるまで購入を避けるべきブランド名を発表しているので、人々は安心して消費できるのである。。

 ベンゼンの有毒性については議論の余地がない。世界保健機関(WHO)によれば、”ベンゼンはヒトに対する発がん性物質であり、安全な暴露レベルは勧告できない。”それは白血病と直接的に関連性があり、母親の血中レベルと等しいかそれ以上のレベルで胎盤を通じて胎児に伝わる。ベンゼンは、余計であり本来は避けることができる懸念ある暴露をもたらす産業汚染の結果として、しばしば食物中で検出される。

 ワイルは、いくつかの州は水道水中のベンゼン基準としてもっと厳しい値を採用していると指摘している。5ppb以上のベンゼンを含む水道水は違法であり、連邦政府の法の下では摂取することは許されない。実際、5ppb以上のベンゼンを含むボトル飲料水は販売することができない。しかし、同等あるいはそれ以上のベンゼンを含むダイエット・ソーダは完全に合法的である。ニュージャージー州の水道水中のベンゼン基準値は1ppbであり、カリフォルニア州は環境保護局(EPA)の基準値よりはるかに予防的で33倍、015ppbである。

 ダイエット・ソーダ以外に、FDAデータはある製品の追加的テストのための基準を示唆しているように見える。例えば:
  • FDAは、ひとつの粉末果汁飲料中に95ppbという高い濃度のベンゼンを報告しているが、その後たった1つの追加サンプルからの結果を報告しているだけで、これでは粉末果汁飲料中のレベルが5ppb以下であると結論付けるために十分な根拠とならない。

  • FDAはまた、非ダイエット・コーラの結果として138ppbという厳しい値を報告しており、FDAの以前の調査はその製品がどのように輸送され保管されたのかの結果によることを示している。
 ”FDAがこのデータを公開しなかったことには罪のない理由があるのかもしれないが、消費者は間違いなく何があるのか知りたいと思う”−とワイルスは述べた。

 1961年に始まった”トータル・ダイエット調査”は、当初は核兵器の実験による放射性降下物の食物中での存在を監視するために設計されていた。それ以来、アメリカの食糧供給における化学物質汚染の詳細を描くよう拡張されてきた。

 食糧供給における汚染の完全な全体像を作り出すために、FDA職員は、年に4回、全米4つの地域(西部、北部中央、南部、及び北東部)のそれぞれで、3つの異なる場所のスパーマーケット、雑貨店、及びファーストフード・レストランに出かけ、280の異なる食品カテゴリーの食品を購入する。各地域は少なくとも年に1回はサンプルされる。サンプルは冷凍され中央のFDA試験所に急送されるが、そこでは3つの都市からのそれぞれの食品カテゴリーのサンプルが一緒にされ、あたかも消費者が飲食するように準備される。ひとつの地域内の3つの都市で購入されたソーダはひとつのサンプルとして混ぜ合わされ、粉末ジュースと濃縮液はジュースとして準備される。


訳注(参照):
清涼飲料水中のベンゼンについて/厚生労働省医薬食品局食品安全部(06/07/29)

EWG プレスリリース 2006年2月28日 子ども用飲料中に混合するとベンゼンを生成可能な2成分/食品医薬品局(FDA)は知っていて沈黙
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
食品安全情報 No. 5 / 2006 (2006. 03.01) 3.食品中の安息香酸からベンゼンが生成される可能性について(p30/37)
コカコーラ/ファンタ

訳注(参考):水質基準(ベンゼン)の国際比較
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/11/s1108-5g.html
基準基準値(mg/l)参考(ppb)
水道法第4条(日本)0.0110
WHOガイドライン値0.0110
USEPA飲料水基準0.0055
EU指令0.0011



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