EHN 2009年8月19日
年齢及び化粧品の使用
合成香料化学物質の血中濃度に関連


情報源:Environmental Health News, Aug. 19, 2009
Age, cosmetics use related to levels of synthetic musk chemicals in blood
By Karen Kidd
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
synthetic-musks-in-blood-related-to-cosmetics-use/

Original:
Hutter, HP, P Wallner, H Moshammer, W Hartl, R Sattelberger, G Lorbeer and M Kundi. 2009. Synthetic musks in blood of healthy young adults: Relationship to cosmetics use. Science of the Total Environment 407:4821-4825

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年8月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_090819_cosmetics_synthetic_musk.html


 ローションや香水などの身体手入れ品をよく使用する若い人は、体内の合成香料(訳注1)のあるものの測定レベルが高い。

 香水やボディーローションをたくさん使うと、多環ムスク類と呼ばれる合成香料の血中レベルが高くなる−とオーストリアの大学生を調査した新たな研究が報告している。

 身体手入れ品中で見い出されるニトロムスク類と呼ばれる他のグループの人工ムスク香料のレベルは、1990年代にヨーロッパのいくつかの諸国で禁止されて以来、ヨーロッパ人の間では減少しているように見える。

 多環ムスク類はニトロムスク類に比べて約70倍高いレベルで学生から検出された。若年であること及びローションと香水を使用していることが、高レベル多環ムスクを予測させる。

 多環ムスク類は身体手入れ用品として広がり使用が増大していいるにも関わらず、ヒトの血中の多環ムスク類のレベルを測定した最近の研究は少ないが、この研究はそれらの研究のひとつである。多環ムスク類の使用が増大しニトロムスク類の使用が減少しているが、時間経過とともにそれらへ暴露がどのように変化するのかについては、ほとんどわかっていない。

 一般に、人工ムスク類は匂いを改善するために身体手入れ用品に添加される。それらの化学物質は、脂肪中に蓄積し廃水処理中に、そして環境中で難分解性を示す。これらの理由のために合成ムスク類はヒトの母乳中や脂肪組織中に、そして魚類などを含んで環境中で見出される。

 多環ムスク類は、ローション、脱臭剤、香水、化粧品などの身体手入れ用品や洗剤のような家庭用品に添加される。もっと一般的なタイプとして、ガラクソライド(galaxolide)とトナライド(tonalide)がある。ニトロムスクの一種のムスクキシレンのような他のムスク類のタイプが、その毒性や野生生物の汚染のためヨーロッパ諸国で1990年代に禁止された後、ガラクソライドとトナライドの製造は世界的に増大している。

 ムスクのあるものはラットと魚の生殖に影響を与えることが知られており、細胞中のDNAを損傷することができる。しかし、それらのヒトへの影響はわからない。しかしヒトがこれらの合成香料に暴露していることは明らかである。

 この研究は、55人の女性と45人の男性の学生(19〜43歳)の血中の11の異なるニトロ及び多環のムスク類のレベルを測定した。研究者らは血中のムスクレベルを測定し、それらをボディマス指数(BMI)(訳注2)、皮膚のタイプ(脂性、正常、乾燥)、魚摂取及び化粧品の使用と比較した。魚摂取及び化粧品の使用については、学生達が魚を食べた回数、及びローション、消臭剤、香水、シャンプー、エアーフレッシュナー、及びヘアスプレーを使用した回数を調査した。

 血中サンプル中で6種類の合成ムスク類が見つかった。ムスクキシレンとムスクケトンは最も一般的なニトロムスク類であり(各45%及び4%のサンプル)、最高の検出レベルはそれぞれ60及び67pptであった。これらのムスクレベルは皮膚表面積が大きい人ほど高かった。1990年代中頃にドイツの女性の血中で測定されたものよりムスクキシレンのレベルは若干低く、ムスクケトンのレベルはもっと低かった。

 対照的に、多環ムスクのガラクソライドは学生の83%で見出され、レベルは最高4,100pptであった。二番目に最も多く検出された多環ムスクはトナライドであり、16%の学生で最高800pptであった。

 他のもう一つの研究が、1990年代後半のドイツ人の血中サンプル中の多環ムスク類の濃度は、今回の研究と同等又は、それより低いことを示していた。これらの香料について、若い人々で及びボディーローションと香水を多く使う人々の間で高かった。

 研究者らは、ジャーナル『Science of the Total Environment』8月号で二つの主要な発見を報告している」。第一に、これらのムスク類で人気の高いものは、多くの身体手入れ用品を使用する人々の間でより高いレベルで見出されること。第二は、ニトロムスク類はヨーロッパ人の間では濃度は減少しており、その理由はそれらの化粧品中での使用が減少しているらしいこと−である。


訳注1:合成香料関連情報
訳注2:ボディマス指数




化学物質問題市民研究会
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