IATAP 2005年10月
かしこいプラスチック・ガイド 健康なプラスチック食品容器の利用 両親と子どものために 情報源:Institute for Agriculture and Trade Policy (IATP) Smart Plastics Guide / Healthier Food Uses of Plastics For Parents and Children Published October 2005 https://myplasticfreelife.com/plastics_guide.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2005年10月22日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/IATP/05_10_IATP_Smart_Plastics.html 訳注:INSTITUTE FOR AGRICULTURE AND TRADE POLICY(IATP) 農業と通商政策協会)はアメリカの家族農業者の団体であり、農家、消費者、農村共同体、及び環境のためになる政策を提案している。賢いプラスチック・ガイドの他に、賢い肉と酪農製品ガイド、賢い農産物ガイド、賢い魚食ガイド、などを出している。 プラスチックは食料や飲料を保存したり包装するために広く使用されている。その用途には使い捨てまたは再使用できる食品容器、ラップ、食卓用ナイフ・フォーク・スプーン類、飲料水用ボトル、乳児用ボトルなどがある。プラスチックは便利で軽く、壊れにくく、比較的安価である。しかし、プラスチックのこの広範な使用により環境及び健康の双方へのリスクがもたらされる。 環境問題: ほとんどのプラスチックは、再生不可能であり、ほとんどが輸入されている石油から作られている。プラスチック容器はまた不必要な廃棄物を生み出す。プラスチックは軽量ではあるが、かさばるので、大きな埋め立て地のスペースが必要である。 健康リスク: 調理及び食品の保存用にプラスチックを使用すると、特に、あるプラスチックからはホルモンかく乱物質が食品や飲料中に溶け出すことがあるので、健康へのリスクをもたらすことがある。プラスチックの製造と焼却により大気と水が汚染され、労働者は有毒化学物質に曝露する。 プラスチックからの化学物質への曝露を低減するために、汚染の少ない製品を選ぼう プラスチック・ラベルが意味すること 全ての容器にラベル表示があるわけではなく、また製品上のリサイクリング標識が常にリサイクルできることを意味するわけではない。一般的に#1と#2マークのついた細首びんだけがリサイクルできるが、ある地域では他のマークのついてた細首びんもリサイクルしている。あなたの地域の自治体または廃棄物会社に確認すること。
プラスチックの食品への使用による健康懸念 無数の石油由来の化学物質がプラスチックの製造に使われている。あるものは食品や飲料中に溶け出し、人の健康に影響を与える可能性がある。加熱状態でプラスチックが油性又は脂肪質の食品に接触する、あるいは古い又は劣化したプラスチックを使用すると、化学物質の溶出が増大する。有毒化学物質を溶出することが示されているプラスチックは、ポリカーボネート、塩ビ、そしてスチレンである。このことは他のプラスチックが安全であるという意味ではない。これらのプラスチックは多くの研究が既になされたということだけである。 訳注: スチレンについては平成12年1月には通商産業省(当時)の化学品審議会が文献調査等を踏まえ「スチレンダイマーおよびトリマーの内分泌かく乱作用について評価を行うための各種スクリーニング試験は既に実施されており、いずれもホルモン様活性を有しないことから、特別な試験の実施は必要ないと考える」との報告を行っている。(スチレンダイマー、スチレントリマーの有害性評価) ![]() ヒトのホルモンであるエストロゲンの作用をかく乱する化学物質 BPAはポリカーボネート・プラスチックから溶出することがある[3]。ヒトのBPAへの曝露は広範である。米疾病予防センターの調査では成人の尿サンプルの95%から検出している[4]。科学者らは妊婦の血液、臍帯血、及び胎盤中から、動物が発達に影響を受けるレベルのBPAを検出している[5,6]。 ホルモンはある種のがんを誘引する。ビスフェノールAは前立腺がん細胞を刺激することが見出されており[7]、マウスとヒトの初期乳がんに似ているマウスの乳房細胞の変化を引き起こす[8,9]。ある研究が卵巣機能不全と尿中のより高い濃度のBPAとの関係を見出した[10]。 また、生命の初期のBPAへの曝露は遺伝子損傷を引き起こすことがある。研究者らはマウスの低レベル曝露で染色体異常引き起こし、それが自然流産と先天性異常を引き起こすことを見出した[11]。ヒトにおけるデータでは、ある研究が反復性流産の経験がある女性は流産の経験がない女性に比べて血液中のBPAレベルが3倍高いことを見出している[12]。 動物テストに関して発表された115の研究のうち81%が、BPA低レベル曝露であっても著しい影響があることを見出している。産業側から資金の出ている11の研究では顕著な影響はないとしているが、政府が基金を出している研究の90%以上は顕著な影響があるとしている。有害影響には下記が含まれる[13]。
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訳注:アジピン酸ジエチルヘキシル(DEHA)の生体影響 (星薬科大学) ![]() スチレンはポリスチレン・プラスチックから溶け出すことがある。スチレンは労働者の長期曝露で脳と神経系に有害である[15,16] が、また動物実験では赤血球細胞、肝臓、腎臓、胃に有害影響を与える[17]。食品容器からの曝露を除いて、子ども達は受動喫煙、建材からの発散ガス、車の排ガス、及び飲料水からスチレンに曝露することがある。 より安全でより持続可能なプラスチック食品容器の利用のためのヒント
哺乳ビン ポリカーボネート・プラスチック哺乳ビンや”Sippy”カップの代替品を使うこと。 BPAの溶出や子ども達への健康リスクについて知れば、ほとんどのプラスチック哺乳ビンと多くの”トレーニン用”や”Sippy”カップがポリカーボネートでできていることを知って驚くであろう。幸いなことに、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン製の哺乳ビンを含む代替品が存在する。柔軟で乳白色のプラスチックはポリカーボネートを含んでいない。通常、哺乳ビンにはラベル表示がないので、もしプラスチックのタイプについて疑問があれば、パッケージに表示されえ入るダイヤルフリーの電話で会社に問い合わせること。 ポリカーボネート・哺乳ビンからのBPAの溶出を最小にするためすること。 もしポリカーボネート・哺乳ビンの使用を避けられないなら、以下の助言に従うとよい。
より安全なプラスチックを選び、プラスチック廃K物を制限することで、より健康でよりきれいな環境を支え、子ども達を不必要な化学物質曝露から守ることができる。またプラスチックのより安全な使用を推進する会社や公共政策を支えることができる。例えば:
INSTITUTE FOR AGRICULTURE AND TRADE POLICY の詳しい情報について 賢いプラスチックガイド(Smart Plastics Guide) についてもっと詳しい情報が必要なら下記に連絡ください。 Kathleen Schuler, MPH (612) 870-3468 kschuler@iatp.org http://www.iatp.org/ References 1. U.S. EPA, Integrated Risk Information System. www.epa.gov/iris/subst/1001.htm. 2. Institute of Medicine, 2003. Dioxins and Dioxin-like Compounds in the Food Supply- Strategies to Decrease Exposure, National Academies Press, Washington, DC. 3. Howdeshell KL, Peterman PH, Judy BM et al. 2003. "Bisphenol A is released form used polycarbonate animal cages into water at room temperature." Environmental Health Perspectives 111(9): 1180-87. 4. Calafat AM, Kuklenyik, Reidy J et al. 2005. "Urinary concentrations of bisphenol A and 4-nonylphenol in a human reference population. Environmental Health Perspectives 113(4): 391-395. 5. Schonfelder G, Wittfoht W, Hopp H et al. 2004. "Parent bisphenol A accumulation in the maternal-fetal-placental unit. Environmental Health Perspectives 110(211): A703-A707. 6. Ikezuki Y, Tsutsumi O, Takai Y et al. 2002. "Determination of bisphenol A concentrations in human biological fl uids reveals signifi cant early prenatal exposure." Hum Reprod 17: 2839-2841. 7. Wetherill, YB, Petre C, Monk KR et al. 2002. "The Xenoestrogen Bisphenol A Induces Inappropriate Androgen Receptor Activation and Mitogenesis in Prostatic Adenocarcinoma Cells." Molecular Cancer Therapeutics 1: 515524. 8. Markey, CM, Luque EH, Munoz de Toro M et al. 2001. "In Utero Exposure to Bisphenol A Alters the Development and Tissue Organization of the Mouse Mammary Gland." Biology of Reproduction 65: 2151223. 9. Munoz-de-Toro M, Markey C, Wadia PR et al. 2005. "Perinatal exposure to bisphenol A alters peripubertal mammary glanddevelopment in mice." Endocrinology, online May 26, 2005 at http://endo.endojournals.org/, accessed June 1, 2005. 10. Takeuchi T, Tsutsumi O, Ikezuki Y et al. 2004. "Positive relationship between androgen and the endocrine disruptor, bisphenol A, in normal women and women with ovarian dysfunction." Endocrine Journal 51(2): 165-169. 11. Hunt, PA, Koehler KE, Susiarjo M et al. 2003. "Bisphenol A exposure causes meiotic aneuploidy in the female mouse." Current Biology 13: 546-553. 12. Sugiura-Ogasawara M, Ozaki Y, Sonta SI et al. 2005. "Exposure to bisphenol A is associated with recurrent miscarriage." HumReprod. 2005 Jun 9. [Epub ahead of print] 13. vom Saal F, Hughes C. 2005. "An extensive new literature concerning low-dose effects of bisphenol A shows the need for a new risk assessment." Environmental Health Perspectives. 113(8): 926-933. 14. U.S. EPA, Integrated Risk Information System. http://www.epa.gov/iris/subst/0356.htm 15. Mutti A, Mazzucchi A, Rustichelli P et al, 1984. "Exposure-effect and exposure-response relationships between occupational exposure to styrene and neuropsychological functions." Am. J. Ind. Med. 5:275-286. 16. Benignus VA, geller AM, Boyes WK et al, 2005. "Human neurobehavioral effects of long-term exposure to styrene: a metaanalysis." Environ Health Perspectives, 113(5): 532-538. 17. U.S. EPA, Styrene Fact Sheet, Dec. 1994, available at http://www.epa.gov/opptintr/chemfact/styre-sd.txt 18. Cargill-Dow, Natureworks web site, http://www.natureworksllc.com/corporate/nw_pack_home.asp, accessed May 31, 2005. 19. EarthShell web site, http://www.earthshell.com/, accessed May 31, 2005. 20. Takao, Y. and K. Arizono. 1999. "Fast screening for Bisphenol A in environmental water and in food by solid-phase microextraction." Journal of Health Science 45: 39. 21. Consumers Union, 1999. "Baby alert: New fi ndings about plastics." Consumer Reports 64(May): 28. 22. Havery DC, Fazio T. 1983. Survey of baby bottle rubber nipples for volatile N-nitrosamines. J Assoc Off Anal Chem. 66(6): 1500-3. |