Chicago Tribune 2012年12月6日
カリフォルニアの小売業者
難燃剤の有害性を警告していないことについて告訴される


情報源: Chicago Tribune, December 6, 2012
Retailers accused of not warning about flame retardant
By Michael Hawthorne, Chicago Tribune reporter
http://www.chicagotribune.com/news/watchdog/flames/
ct-nw-flames-baby-products-20121206,0,2953751.story


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2012年12月10日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_12/
121206_Chicago_Tribunes_Retailers_accused_flame_retardants.html





 法廷通知によれば、主要な小売業者は、発がん性に関連する難燃剤を危険なレベルで含んでいるオムツ替えパッド、昼寝マット、その他の赤ちゃん用品について、消費者に警告していないのはカリフォルニアの法律(訳注1)違反であるとして、12月6日に告訴される。

 その告知書は、アマゾン、ターゲット、ウォルマートを含む小売業者にTDCPP(トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)リン酸塩(訳注2)を難燃剤として使用している製品の回収を促している。研究者等は、米国中で販売されている布(革)製家具や子ども用品でこの難燃剤が使用されていることを明らかにした。

 10月から、カリフォルニア州は有害な量を人々に曝露させるであろうTDCPPに関する警告ラベルの表示を求めている。家庭用品から有害化学物質を排除するための法的措置に取り組む非営利グループである「環境健康センター(Center for Environmental Health)」は、カリフォルニア州が定めた期限以降に店舗やオンラインで購入した19の子ども用品をテストした。

 ベビーベッド用マットレスや保育用家具を含む16商品からTDCPPが検出されたと、同グループは述べている。警告ラベルの付いているものはなかった。

 同グループが独立系研究所に委託て実施したテストによれば、あるロッキング・チェアーでは、この化学物質がウレタンフォームの重量のほぼ10%を占めていた。ほとんどの製品中のTDCPP含有量は重量の3〜6%の範囲であり、これらは有害化学物質に関するカリフォルニア州プロポジション65法(訳注1)で定められた安全基準をはるかに超えているとその法定通知は強く主張している。

 ”我々の子どもや家族のために、会社はもっと早く、製品からこれらの有害化学物質を排除するための措置をとるべきであった”と、同グループのディレクターであるマイケル・グリーンは述べた。

 ウォルマートの報道担当は、同社は苦情を耳にしていないが、”一貫してプロポジション65要求を遵守するよう努めてきた”と述べた。ターゲットは、”州法及び連邦法を遵守すると約束しているし、我々の販売各社も同様であることを期待する”と述べた。アマゾンはコメントを求めたメールに回答しなかった。

 1970年代後半に、TDCPPをがんに関連付けたひとつの調査が発表された後、製造者らは自主的に子どものパジャマでのこの化学物質の使用をやめた。しかし、この難燃剤は公式には禁止されなかった。

 他の難燃剤と同様に、TDCPPは製品から放出され、ホコリの中に存在することが知られている。小さな子どもは床で遊び、しばしば物を口に持っていくので、体内の難燃剤のレベルは一般的に両親より高い。

 カリフォルニア州は、連邦政府当局が難燃剤について何も措置をとることはでほとんできないと述べたので、発がん性化学物質のプロポジション65リストにTDCPPを昨年(2011年10月28日)加えた。連邦政府の有害物質規制法は、健康影響が報告された後でさえ、規制当局はその化学物質を禁止することができない。

 本年5月に発表されたトリビューンの難燃剤シリーズ「火遊び(Playing With Fire)」は、数十年にわたるタバコ産業と化学産業による欺瞞のキャンペーンの結果、いかに難燃剤がアメリカの家庭に普及したかを明らかにした(訳注3)。とりわけ、難燃剤の主な製造者らは、これらの化学物質を擁護し、その使用を拡大するために、公衆の火災の恐怖をあおるインチキ消費者団体をでっち上げた。

 子ども製品の製造者のあるものは、2010年にカリフォルニア州規制当局が、折りたたみ式ベビーカー、ベビーキャリア、及び授乳用枕は、火災の危険がなく、これらの製品を州の厳格な燃焼性基準(訳注4)から免除すると決定した後も、これらの難燃剤を使用し続けた。2011年5月のデューク大学による調査は、テストされた101の赤ちゃん用品の3分の1以上にTDCPPを検出した。

 化学会社は、TDCPPは安全であるという。しかし、カリフォルニア州規制当局がそれを発がん性物質であると公式にリストして以来、難燃剤の世界最大の製造者のうち2社が、その製造を廃止しつつあると発表した。


訳注1
プロポジション 65
正式名称:Proposition 65 Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986
http://www.oehha.ca.gov/prop65.html
目的は、がん、先天性障害又は生殖障害を引き起こすと知られている化学物質からカリフォルニア州の市民と州の飲料水源を保護すること、及び市民にそのような化学物質の曝露について知らせることである。
プロポジション 65 は州政府が少なくとも毎年、発がん性又は生殖毒性が知られている化学物質のリストを公表することを求めている。(list of chemicals known to the state to cause cancer or reproductive toxicity)
http://www.oehha.ca.gov/prop65/prop65_list/Newlist.html
Frequently Asked Questions about Proposition 65:
http://www.oehha.ca.gov/prop65/p65faq.html

訳注2
トリス(クロロプロピル)リン酸塩(Tris (chloropropyl) phosphate)
1.2 トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)リン酸塩(TDCPP)

訳注3
Chicago Tribune 2012年5月6日 難燃処理発泡材はなんら火災安全の便益をもたらさない

訳注4:カリフォルニア州家具可燃性基準 TB117
 子ども用製品及び布/皮革張り家具中のポリウレタン・発泡材に対して、小さな裸火(open flame) への12秒間の耐火性を求めるもの。1975年の同基準の実施以来、ハロゲン系難燃剤は、火災安全の効果が証明されていないのに、発泡材の重量の約5%のレベルでカリフォルニア州で売られている発泡材家具に加えられている。(アーレン・ブルム博士/有害で不必要な難燃剤の使用を止めることは 我々の健康と環境を保護することになるであろう

訳注:ビデオ 難燃剤についての真実
http://www.chicagotribune.com/videogallery/69743455/News/Video-The-truth-about-flame-retardants





化学物質問題市民研究会
トップページに戻る