米政府及びカリフォルニア州
鉱害について鉱山会社との長期和解案を表明
情報源:米環境保護局(EPA)プレスリリース 10/19/00
米国政府とカリフォルニア州は19日、スーパーファンド(Superfund)の指定地である”鉄の山鉱山”(Iron Mountain Mine、カリフォルニア州レディングから15キロメートル北西)の汚染浄化のための資金、約10億ドル(約1,000億円)をアベンティス社が負担することに合意したと発表した。
この和解案によりアメリカにおける有毒金属の最大汚染源で、世界で最も酸性度の高い鉱山廃水源 として知られる”鉄の山”からの排出の95%を今後長期にわたり管理し、浄化することができる。
この鉱山の現在のオーナーであるアベンティス社(以前のローム・プーランク社)は、今後30年間、現地の管理と浄化をITグループ社に委託すると共に、2030年に、その後の管理、浄化のための資金として5億1,400万ドル(約555億円)を米政府及びカリフォルニア州に支払うことになった。 米環境保護局地域担当官フェリーシア・マーカスは「この革新的な合意は、源流からサンフランシスコ湾に至るまでのサクラメント川流域にすむ全ての人間や動物にとって良い知らせである。最近5年間、この鉱山は冬の嵐の時には1日にタンク車150台分の有毒金属をサクラメント川に排出していた。しかし、多くの政府や州の関連機関の努力のおかげで、この鉱山が天然資源に及ぼしていたダメージを削減するための基金と人材を手にすることが出来る」と述べた。 カリフォルニア州環境保護局長官ウインストン・ヒッコクスは「この和解案は政府と私企業が深刻な環境問題を解決しようと一緒になって取り組んだ、すばらしい事例である。環境もカリフォルニアの納税者も、両方が恩恵を受けた。サクラメント川は汚染が減少するであろうし、納税者はそのための勘定を支払わなくてもすむ」と述べた。 米海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration - NOAA)の顧問クレイグ・オコーナーは「この大規模で危険な鉱山からの有毒物質の排出を管理すれば、サケが再びサクラメント川に戻ってきて産卵するであろう。キングサーモンやニジマスの保護と再生はNOAAにとって重要な優先事項である。我々はEPAと共同でこの重要な魚種の生息地を回復する解決策を見出したことに大変満足している」と述べた。 和解案の骨子
鉱山の歴史 19世紀の後半から1963年まで、マウンティン・カッパー社は、鉄、金、銀、銅、亜鉛、黄鉄鉱、等の各種鉱物の採鉱を、地下での階段状採掘や露天での採掘により行っていた。採掘により山は荒廃し、水脈の流れが変り、鉱滓が酸素や水やある種のバクテリアに曝されて酸性度の高い鉱山廃水となって近くの支流や水路に流れ込んだ。 「”鉄の山”からの排水は非常に有毒なので、作業者がうっかりシャベルを採掘口から流れ出る緑色の液の中に放置しておくと、翌日にはシャベルの半分は完全に腐食していた。この種の排水が、近隣の生態系に悪影響を及ぼすことは容易に想像できる。政府による浄化対策がとられるまでは、大きな嵐が来ると、”鉄の山”の排出口の下流側に大量のサケやニジマスがしばしば浮き上がったものだが、今は排水処理施設のおかげで、魚の大量死は過去の話となった」とマーカスは述べた。 酸性度の強い鉱山廃水はまた、極度に高レベルの銅、亜鉛、カドミウム、その他の金属を含んでいる。EPAや州当局によって対策がとられるまでは、鉱山は毎日約1トンの銅と亜鉛を排出していた。これは全米の産業や自治体から地表の水路に放出される総量の4分の1に相当する。 鉱山の採掘による激しい汚染は、数十年来知られていたことである。政府と州当局は鉱山からの酸性排水の問題、特にサクラメント川と上流の支流へ与える影響を報告してきた。1963年に政府は、”鉄の山”から汚染した水がサクラメント川に流れ込むままにせず、それを測定し管理するためにスプリング・デブリス ダムを建設した。 EPAは1983年に”鉄の山鉱山”をカリフォルニア州の要請に基づき、政府のスーパーファンド指定地とした。EPAとカリフォルニア州の酸性鉱山廃水への対策の核心は、鉱山の有毒排水から99.99%の金属を除去する高密度鉱滓処理施設を1994年に建設したことであった。1994年以来、この処理施設は、放っておけばサクラメント川に流れ込んだ500万ポンド(約2,300トン)以上の銅やカドミウムや亜鉛等の重金属を除去した。ちなみに同時期にサクラメント市全域で排出した金属の総量は約10万ポンド(約45トン)であった。 多くの政府と州の関連機関が共同でこの問題に取り組んだ。米環境保護局(EPA)、米海洋大気局(NOAA)、米国土管理局(BLM)、米司法省、・・・(訳注:以下省略)。 今後の予定
排水管理に加えて、EPAはカリフォルニア州とともに今後数年間にいくつかの活動を実施する。
”鉄の山鉱山”に関するさらに詳しい情報は下記のウェブサイトで入手可能である。
【参考】
スーパーファンド法(CERCLA)概要
スーパーファンド(Superfund)と言う名で知られている”包括的な環境への対応、補償、責任に関する法律”(Comprehensive Environmental Response, Compensation, and Liability Act - CERCLA) は1980年12月11日に議会で立法化された。この法律は化学及び石油業界に税を課し、それを資金として連邦政府が、国民の健康や環境を脅かす恐れのある有毒物質の排出またはその恐れがあるものに直接対応出来るようにするものである。 CERCLA骨子:
CERCLAはまた、ナショナル・コンティンジェンシー・プラン(NCP)を改訂することが出来る。NCPは有害物質、汚染物質の排出またはその恐れがあるものに対処するための指針及び手順を示すものである。またNCPでNPLを決める。 (訳:安間 武)
|