環境防衛基金(EDF) 2015年6月30日
有害物質規制法(TSCA)、
21世紀に向けた化学物質安全フランク R. ローテンバーグ法 (S. 697)、
及び2015年 TSCA 近代化法(H.R. 2576)の比較


情報源:Environmental Defense Fund (EDF), June 30, 2015
Comparing the Toxic Substances Control Act,
the Frank R. Lautenberg Chemical Safety for the 21st Century Act (S. 697),
and the TSCA Modernization Act of 2015 (H.R. 2576)
http://blogs.edf.org/health/files/2015/07/Side-by-side-TSCA-S.-697-H.R.2576-6-30-15.pdf

訳:安間 武 (
化学物質問題市民研究会
掲載日:2016年1月 5日
更新日:2016年1月21日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/articles/
150630_EDF_Comparing_TSCA_Senate-S697_and_House-HR2576.html


 この表は、1976年有害物質規制法(TSCA)を2015年4月28日に上院環境・公共事業委員会により報告された S. 697 、及び 2015年6月23日に下院により採択された H.R. 2576 と比較するものである。我々の分析は、この立法の範囲にある12の主要な問題に焦点を当てている。

  現状のTSCA 上院法案(S.697) 下院法案(H.R. 2576)
1. 安全基準

●”不合理なリスク(unreasonable risk)”はコスト便益分析、及びつり合いを求める。 ●EPA が安全性の決定を下す時にはコストとその他の非リスク要素を考慮することを明示的に除外する。

●TSCA の中で”不合理なリスク”という言葉が用いられている場合には、その言葉を取り下げるか、あるいは”コスト又は非リスク要素を考慮しない”という文言を加えることによって、コストの考慮を除外することを明確にする。

●(不合理なリスク決定はコスト又は非リスク要素を除外すべきことと明確に述べていなくても) EPA がリスク評価をする時にコストを考慮することを禁じる。

●TSCAの中で、”不合理なリスク”という用語の他の事例に目を向けていない。

2. 脆弱な集団の保護

●特別な考慮はしない。 ●”暴露する可能性のある又感受性の高い集団”の定義には、高められた化学物質暴露又はそれらの影響に対して高められた感受性に帰するということを含める。

● そのような集団は、幼児、子ども、妊婦、労働者、老人を含む (しかしそれらに限らない) ことを明記する。

●そのような集団の保護を明示的に求める。

●”暴露する可能性のある集団”の定義には、高められた化学物質暴露又はそれらの影響に対して高められた感受性に帰するということを含める。

●定義はどの集団が含まれるのか明記していない。

●ひとつ又はそれ以上の暴露する可能性のある集団がそのようなリスクの対象となるなら、その化学物質が不合理なリスクをもたらすことはないと結論付けることはできない。

3. 安全基準に適合しないと分かった化学物質の制限の適切性

●不合理なリスクをもたらすことが分かった化学物質を制限する権限を与えるが、義務ではない。

●制限の充足性を保証する条項はない。

●制限は、その化学物質が安全基準に適合することを確実にするために、化学物質を廃止するか又は禁止するかのどちらかであることを明示的に求める。

●安全基準に適合しないPBT(難分解性、生体蓄積性、毒性)物質については、EPA は可能な限り暴露を削減すること。

●EPA は、”その化学物質が安全基準に適合するのに必要な程度だけ”、成形品を制限すること。

●EPA は、EPA が”特定されたリスクに著しく寄与する”ことを見つけなければ規則の発行日より前に製造されていた成形品の、規則の発行日より前に製造されていた交換部品を免除しなくてはならない。

●禁止又は廃止のための順守期限は、”可能な限り短くする”こと。

●制限は、”その化学物質が、暴露する可能性のある副次集団(subpopulations)への特定された不合理なリスクを含んで、もはや不合理なリスクをもたらさない又はもたらさないであろうために必要な程度に”課せられなくてはならない。

●EPA は、”特定されたリスクから保護するために必要な程度だけ”成形品を制限すること。

●EPA は、”暴露する可能性のある特定された副次集団を含んで、リスクに著しく寄与する”ことを見つけなければ、”規則の発布の日より前に設計された”交換部品を免除しなくてはならない。

●課せられるどのような制限も”合理的な猶予期間を与えなければならない”。

4. 規制と、コスト及びその他のリスク要素の考慮

●EPA は公式の分析を行い、どのような提案される制限もコストに勝ることを示さなくてはならない。EPA は下記を考慮しなくてはならない。
 ○物質の便益
 ○その用途の代替物質の利用可能性
 ○国家経済、小規模ビジネス及び革新を含んで、合理的に確認できる規則の経済的効果

●制限は、特定されたリスクに対応できるものの中で”最小の負担”でなくてはならない。

●”最小の負担”要求を取り下げる。

●コストの考慮は化学物質の安全を確保するための制限要求より優先することはできないことを明確にする。

●コストと便益の均衡は要求されず、”合理的に利用可能な情報に基づく実行可能な範囲”にだけ考慮されるべきこと。

●禁止と廃止は、その化学物質の関連する代替物のコストと便益の考慮に基かなくてはならない。

●EPA によって関連性があり、技術的にも経済的にも実行可能であるとみなされた代替物だけが検討される必要がある。

●”最小の負担”要求を取り下げる。

●規則を発出する場合に EPA が考慮しなくてはならないとする下記の TSCA 要求を維持する。
 ○物質の便益
 ○国家経済、小規模ビジネス及び革新を含んで、合理的に確認できる規則の経済的効果

●現在の TSCA にはない二つの義務的なコスト関連要求を追加する。
 ○”長官が追加的又は異なる要求が必要であると決定する場合を除いて”、どのような要求も”コスト効果がある”ことを EPA は示さなくてはならない。
 ○禁止又は効果的な禁止のために、及び順守期日を設定するにあたり、EPA は実行可能でより安全な代替物が利用可能かどうかを決定しなくてはならない。

●EPA は、暴露がありそうな金属又は金属化合物を除くPBT(難分解性、生体蓄積性、毒性)物質を特定し、実行可能な程度に”、しかし”充当金の利用可能性を条件に”、ありそうな暴露を削減するために”、リスク評価を実施する前に規則を発布すること。
 ○しかし、もしEPAがリスク評価を実施する、又は会社がそれを求めるなら、この早期行動は適用しない。

●リスクに対応するために TSCA の下で行動する前に、 TSCA の下での行動と、 EPA により所管される他の法律の下での行動について、相対的なリスク、コスト、及び効率を EPA は比較しなくてはならない。この新たな要求は、EPA は TSCA の下での行動は”公衆の利益になる”(全く長官の裁量により決定される)ということを示すという TSCA の既存の要求に加えるものである。

5. 見直しのペースと期限

●既存化学物質の安全性の見直しは義務ではない。

●着手された評価の完了又は制限実施のための期限はない。

●全ての主要なステップのための確実な期限を明記する。優先度、安全性評価、及び決定(3年)、規制(2年)、理由があれば総計で2年まで延期可能。

●要求と手続きを確立する全ての規則が発出されなくてはならない期限を2年とする。

●EPA はまた、EPAが求めるどのような情報をも会社が提出すべき期限を明記しなくてはならない。

●EPA は最初の高優先リスト及び低優先リストにそれぞれ、少なくとも10の化学物質を含めなくてはならない。
 ○法が制定されてから3年後までに、少なくとも20の高優先及び20の低優先化学物質がリストされていなければればならない。
 ○法が制定されてから5年後までに、少なくとも25の高優先及び25の低優先化学物質がリストされていなければればならない。

●残留性及び生物蓄積性の化学物質に高いランクを与えるという志向をもって、それらの全てがリストされるまで少なくとも化学物質の50%が作業計画化学物質であるべきこと。

●会社は EPA に化学物質を評価するよう求めることができる。EPA は、規則に従って開発しなくてはならない基準を用いつつ、その裁量で、そのような要求をかなえることができる。もし基準に適合する十分な要求がなされたなら、EPAは、高優先評価数の25%以上、30%以下の要求をかなえなくてはならないが、高優先化学物質を超えてそれらを優先的に扱うことはできず、そのような評価の開始は先取権(preemption)の引き金とはならない。

●会社は EPA に、まだ高優先と指定されていない(もし EPA がそのような評価を開始しているなら、新たな州制限の先取権の引き金となる)作業計画化学物質を評価するよう求めることができる。

●EPA は、”意図された使用条件下での潜在的なハザード及び潜在的な暴露経路のために、健康又は環境への不合理な危害のリスクをもたらすかもしれない”と決定したどのような化学物質についてもリスク評価を実施すること。しかし、
 ○そのような化学物質を特定するための優先付けの又はその他のプロセスは存在しない。
 ○EPA はリスク評価を始めるために潜在的なリスクを発見する必要がある。

●不合理なリスクをもたらすかどうかを決定するために十分な情報のない化学物質については:
 ○それらの見直しを促進するためのメカニズムがない。
 ○下記に示すように EPA は、最初に潜在的なリスク又は本質的な製造暴露を示すことなくテストを求めることはできない。

●EPA は、”充当金の利用可能性を条件に”選択した化学物質について毎年少なくとも10のリスク評価を実施すべきことを明記する。

●EPA は、リスクの発見がなくても作業計画上にリストされたどの化学物質 についてもリスク評価に着手してもよい。

●EPA は、どのような製造者からでも要求があれば、どのような化学物質でもリスク評価を実施しなくてはならない。

●産業要求により EPA が実施すべきリスク評価について、EPA は、もしこれらのリスク評価のための期限に合わせることができないなら、その数を調整することができるが、これは EPA 自身のリスク評価のための期限ではない。産業要求のリスク評価の全コストは製造者によって負担されるべきこと。

6. 手続き上及び科学的要求;移行

●情報の質を評価するため、さらなる詳細調査を正当化する化学物質を特定するため、又はリスクを決定するために特定される手続き又は基準は事実上ない。

●EPA に次のことに目を向ける方針、手続き、及びガイダンスを確立するよう求める:科学の使用;情報源;テスト;優先審査;及び安全性評価と安全性決定。

●EPA が全ての方針、手続き、及びガイダンスを確立するための期限を2年と設定する。

●EPA に決定を利用可能な最善の科学及び科学的証拠の重みに立脚させ、米国科学アカデミーの勧告を考慮するよう求める。

●安全性評価と決定は、関連する脆弱な集団、及び複合暴露(aggregate exposure)又は著しい暴露の部分集合を考慮するための基礎を特定しなくてはならない。

●例えば EPA が、作業計画化学物質に関する評価を続ける又は開始すること、及び新たな手続きが定められる時に現在の手続きに適合させることを許すことにより、新たなシステムへの移行を容易にする。

●リスク評価は、化学物質用途の全ての意図される条件について、ハザードと暴露の情報をを統合すること。;脆弱な集団に関する情報を考慮すること。;科学的証拠の重みを記述すること。;それ以下では有害影響が予測されない閾値が存在するかどうか検討すること。

●EPA は、作業計画の中で特定された化学物質をリスク評価にかけるかもしれない。

●EPA がどのように現在のプロセスと活動からこの法案で求める新たなものに移行すべきなのかを示すために他の特定の条項は含まれていない。

7. テスト

●EPA は、テストを求めるために、告知コメント規則制定(notice-and-comment rulemaking)(訳注:参照)を実施しなくてはならない(典型的には多年プロセス)。

●EPA はまた、潜在的リスク又は高い暴露の証拠を示さなくてはならない(Catch-22)。
(訳注:Catch-22 はこの題名の小説に由来するフレーズで、ジレンマ又は矛盾を意味する。)

●EPA が(正当性を持って)テストを求めるため、及び TSCA がまず最初にリスク又は高暴露を示すよう EPA に求めることを排除するために、命令を用いる権限を EPA に与える。

●EPA はテストの実施を求める前に、必要な情報の提出をまず、求めなくてはならない。そしてEPA は、一般的に化学物質の最小情報セットを確立するための手段としてテストを要求することはできない。

●テストを求める命令権限を与える。命令を使用するために特定の正当化は必要ない。

●もし、テストが”リスク評価を実施するために必要”でないなら、テストを求める前にEPAはまずリスクと高暴露をを示すとするTSCAの要求は維持する。
 ○リスク評価を開始するためにリスクの発見を必要とするということは、テストが生み出すであろう情報がまだないのだから困難又は不可能かもしれない。

8. 低優先度指定

●EPA は化学物質を優先づける権限はない。その結果、EPA によって検証されていない化学物質は事実上、低優先であり、データの欠如はリスクがないことを示すものと仮定される。

●EPA が”安全基準に適合しているようであると確立するのに十分な情報”があると結論付けなければ、化学物質を低優先と指定することはできないということを明示的に述べている。

●低(及び高)優先化学物質であると指定するための基準とプロセスは告知コメント規則制定により策定されなくてはならない。

●データの欠如は、化学物質を高優先として指定するために本質的に(単なる要素ではなく)十分な根拠となり得る。

●EPAは、データが欠如している場合、優先度の決定を通知するためにテストを求める権限を有する。

●何人も、EPAのある化学物質の低優先としての指定に対して、裁判によって異議を唱えることができる。

●州は、低優先化学物質に制限を課すことができる(12a 項を参照のこと)。

●あてはまらない。優先プロセスは含まれていない。

●現在の TSCA の下でのように、EPAがリスク評価を開始するために必要とするリスクを見つけない又は見つけることができない化学物質は事実上無視し、見直しの対象としない。

9. 新規化学物質

●もし EPA がその化学物質は”不合理なリスクをもたらすかもしれない”ということを見つけなければ、90日間の見直し終了後、会社は一般的に新規化学物質の製造及び販売を自由に行うことができる。

●肯定的な安全決定は求められず、安全性データが完全に欠如していても懸念を見つける責任は EPA にある。

●EPA が安全基準に適合するらしいことを肯定的に見出せば、新規化学物質の製造は開始できることを明白にしている。

●EPA がその化学物質は安全基準に適合するように見えないと決定する場合には、EPA は製造をできなくするか、又は EPA がそれらを安全であるとみなせるよう制限を課さなくてはならない。

●もし EPA が決定を下すのに十分な情報を持たない場合には、情報を得るまで見直しを延期する、又はたとえ情報がなくても EPA が安全であると決定するのに十分なように制限を課すことができる。

●重要新規利用として成形品の届け出を要求するために、EPA は”合理的な暴露の可能性”の肯定的な発見を必要とする。

●TSCA の新規化学物質条項を変更しない。

10. 企業秘密情報 (CBI)
10a. CBI 主張−
化学産業


●TOSCA 目録上の(85,000 のうち)約17,000 の化学物質の同定が製造者による CBI であるとの主張で、公衆の目から隠されている。

●EPA は、そのような CBI 主張に対して1件毎に異議を申して立てることができるが、それらを見直すことは義務ではなく、人材不足のため異議を唱えることはまれである。

●化学物質の同定の開示の保護はそれらの上市前の期間に限定し、化学物質のそのような主張はすべて上市後に実証され、EPA によって見直されなくてはならない。

●EPA はまた、TSCA 目録上にあり現在 active な全ての化学物質については改正法制定後5年以内に、inactive な化学物質についてはそれが active 状態に移った時点で、過去の化学物質の同定の主張を見直し、実証を求めることを要求される。

●すでに目録の機密部分にない化学物質の同定又は規定された手続きに従って加えられたものは機密であると主張することはできない。

●制定前になされた CBI 化学物質は見直しの対象ではなく、失効せず、正当化要求の対象ではないので、TSCA 目録上機密化学物質はそのまま続く。

●EPA が過去の化学物質の同定についての CBI 主張(TSCA 目録で 85,000の化学物質のうち 17,000)を見直すことは求められないが、EPA は1件毎に主張に異議を申し立てる権限を保持する。

10b. CBI 主張−
健康と安全情報


●会社は、EPA に提出したどのような情報も CBI であると、事実上、自由に主張することができる。

●健康と安全研究及びそれらの基礎をなすデータは TSCA の下では CBI 保護の資格はないが、最近まで EPA は日常的にこれらの研究、又は研究された化学物質の同定を公衆の目から隠すことを許していた。

●健康と安全研究及びそれらの基礎をなすデータは CBI であるとする主張を除外するという現在の TSCA 要求は残す。

●健康と安全情報の開示の一般的斟酌に対する TSCA の2つの除外を残す。すなわち化学物質混合物の製造又は処理で使用されるプロセスを開示することになるデータ、及び混合物の場合にはある化学物質によって構成される混合物の割合を開示することになるデータ。

●これらの健康と安全研究中の化学物質の同定を隠すことを禁じる現行の EPA の方針に影響を与えない。

●過去になされた CBI 主張の全てのタイプを見直す EPA の権限を復活させる。

●今後なされる主張は、一般的にそれらが主張された時点で根拠が示されなくてはならず、また期限が設けられなくてはならない。(下記 10c を参照)

●高優先に指定されている又は安全性の決定のために十分な情報がないことが分かった化学物質を含んで、EPA はある範囲の条件下で主張を見直すための権限を有する。

●安全基準を満たさないことが分かった化学物質について、EPA は全てのCBI主張を見直し、代替を求めなくてはならない。

●禁止又は廃止された化学物質のCBI開示は公衆の利益になると推定される。

●健康と安全研究及びそれらの基礎をなすデータは CBI であるとする主張を除外するという現在の TSCA 要求は残す。

●しかし、EPA が公開しようとする健康と安全情報の対象である化学物質を同定するための現行の TSCA の条項は事実上除く。

 ○健康と安全情報の開示の一般的斟酌に対する TSCA の2つの除外を残す。すなわち化学物質混合物の製造又は処理で使用されるプロセスを開示することになるデータ、及び混合物の場合にはある化学物質によって構成される混合物の割合を開示することになるデータ。

 ○しかし、3番目の除外を加える。すなわち、”化学物質又は混合物の式(分子構造を含む)を開示するデータ”。これを含めることは化学式に関連するデータの範囲を超え、もし CBI 主張がなされれば、明らかに EPA が公開しようとする健康と安全情報の対象である化学物質を同定することを不可能にする。

10c. CBI 主張−
実証とEPA見直し要求、期限


●EPA はある場合にはそうしてきたが、CBI 主張のための法的要求は実証される必要はない。

●CBI 主張は期限の対象にはならず、EPA により異議が唱えられない限り有効である。

●ほとんどの CBI 主張はそれらが提起された時点で実証され、EPA により迅速に見直され、承認又は却下されることが求められる。

●承認された主張は、10年経過した後には、再提出され、再承認されなければ失効する。

●10年間隔の間であっても、EPA は高優先化学物質又は十分な情報に欠ける化学物質を含んで、ある CBI 化学物質を見直し、再提出を求めることができる。

●EPA は、その化学物質は有効ではないと信じるに足る理由を持つか;又はその化学物質が安全基準を満たさない場合を含んで、ある CBI 化学物質を見直し、再提出を求めることを義務付けられる。

●EPA が禁止又は廃止するほとんどの化学物質の CBI 主張は自動的に失効する。

●(要求は明記されていないが、) CBI 主張はそれらが提起された時点で実証されるべきこと。

●CBI 主張の EPA の見直しは、義務ではない。

●制定後になされた CBI 主張は、主張が再提起されない限り10年で失効する。

●EPA が1件ごとに主張に異議を申し立てる権限は保持する。

10d. CBI 主張−
情報へのアクセス (CBI を含む)
●TSCA は、EPA が受領した情報又行った決定及びそれらの根拠を公開するための要求をほとんど提供していない。

●EPA は CBI であると主張された情報を公衆に、州及び地域の機関に、健康又は環境専門家に、又は緊急対応者(first responders)にすら、開示することはできない。
●EPA が受けとった情報、及び実施した決定とそれらの根拠を公衆が利用可能とするための明示的な要求が法案のいたるところに含まれている。

●EPA は、州又は地域の政府に要求があれば、 CBI を開示しなくてはならない。

●EPA は、要求があれば、環境放出時に又は診断又は治療の支援のために、連邦機関又は州機関に雇用されている健康又は環境専門家、又は医師又はその他の医療専門家に CBI を開示しなくてはならない。

●EPA はまた、要求があれば、緊急時に毒物管理センター又は緊急対応者に CBI を開示しなくてはならない。

●情報の機密を保つために、開示には必要性の記述と EPA との機密合意が必要である。

●州又は地域の政府への CBI を開示に先立ち、事前の通知は必要ない。

●緊急時を除いて、健康又は環境専門家又は医療専門家への開示に先立ち事前通知が必要である。

●EPA が情報を公開するための特定の要求は、この法案によって現行の TSCA に追加されることはない。

●EPA は、要求があれば、州、地域又は部族政府に CBI を開示してもよい。

●EPA は、要求があれば、下記に CBI を開示しなくてはならない。

 ○環境放出時に、連邦機関又は州機関に雇用されている健康又は環境専門家、又は
 ○診断又は治療を支援するために、医師又はその他の医療専門家

●CBI の受領者はその情報を他のどのような目的のためにも使用してはならない、又はその情報をどのような権限のない人にも開示してはならない。

●州又は地域の政府への CBI 開示に先立ち、事前通知が求められる。

●健康又は環境専門家又は医療専門家への開示に先立ち、事前通知は求められない。

11. 使用者の手数料 ●EPA はテスト要求又は新規化学物質に充てるために手数料を請求することができる。

●既存化学物質のEPAの見直し、又は既存化学物質に関する情報の収集、管理、又は評価にかかる一般的にもっと高い費用に充てるために手数料を請求することはできない。

●手数料は会社当たり2,500ドル(小規模会社の場合は100ドル)を上限とする。

●徴収された手数料は一般会計に行き、EPA の費用に直接、充当することはできない。

●EPA は、高優先として指定される化学物質はもちろん、新規及び既存の化学物質の両方の手数料を徴収しなくてはならない。

●手数料は次の費用に充てるために使うことができる。新規化学物質の見直し、優先度審査、安全評価、新規及び既存化学物質の安全性決定と必要とされる規制、情報の収集、見直し及び公衆へのアクセス提供、情報の保護

●手数料は、” TSCA 実施基金”に納入され、一般会計ではなくEPAに直接行く。

●手数料は、その徴収が EPA の予算削減をもたらさないことを確実にするよう正規の充当金を通じて十分な基金を準備する議会次第である。

●手数料のレベルは、関連する EPA の実施計画の費用の約25%を充当し、年間1,800万ドルまでとなるよう設定される。

●会社は、彼らが求める安全評価の費用の100%を支払わなければならない(それらのための50%はすでにEPAの実施計画に織り込まれているという前提)。

●EPA は、新規化学物質及び産業が求めるリスク評価のための費用を徴収してもよいが、EPA が立ち上げるリスク評価のためには徴収できない。

●手数料は、そのために徴収された条件を運用するためにだけ使用することができる。

●手数料は、”TSCA サービス手数料基金”に納入され、一般会計ではなく、直接 EPA に行く。

●手数料のレベルに関しては規定は何も示されていない。

●会社は、要求したリスク評価の費用の100%を払わなくてはならない。

12. 州法への専占権
12a. 州法への専占権−
一般


●専占(preemption)は、過去の適用例は非常に少ないが、それは実際問題として、EPA が現行の法の下で化学物質の制限を課した例が少ないからである。

●新規又は既存の化学物質のリスクから保護するための EPA の措置は、一般的に州の既存又は新規の措置に専占する。(訳注:連邦法と州法の間に矛盾があれば、州法を無効にする。)

●連邦要求と同一(共同実施権)である、又は連邦法の権限の下に採択されている、又は州内でその化学物質の全ての使用を禁止する州要求のために、例外が設けられている。

●法案の専占は化学物質に対する州の制限に適用し、報告、監視、又は開示のための要求には適用しない。

●専占は EPA の安全性評価及び決定の範囲の中に含まれる使用及び使用条件に関連する制限に明示的に限定されるが、EPA はそれを化学物質を高優先と指定した後 6か月以内に設定しなくてはならない。

●州は、EPA が TSCA の下で検討するものとは異なる健康又は環境の懸念に対応するために、ある化学物質に措置をとることができる(例えば、オゾン生成に対応するための揮発性有機化合物(VOC)制限)。

●州は、連邦要求と矛盾しないなら、下記の制限を続けることができる。
 ○連邦政府の要求と同一の制限
 ○連邦法の権限の下に採択された制限、又は
 ○州の大気又は水の品質、又は廃棄物処理又は処分法の下に採択された制限

●州は共同実施又は免除の場合を除いて、州の中で化学物質の全ての使用を禁止するということはできない。

●専占は低優先指定によっては発動されないので、州はそのような化学物質への措置を継続することができるが、しかし:
 ○州はそのような化学物質にとる措置を EPA に通知することとし、もし EPA によって要求されれば、その措置の根拠を提供すること;そしてもしそれが全国的な影響を持つなら EPA はその化学物質を優先づけること。

●法案の専占は、制限だけでなく、ある化学物質への”暴露から保護するために設計された”どのような州の要求にも適用し、報告又は開示のための州の要求を専占することができる。

●専占はリスク評価の中で EPA 長官により考慮された意図された用途の条件に関連する要求に明示的に限定される。

●州は EPA が検討したものと異なる健康又は環境の懸念に対応するために、ある化学物質に措置をとることはできない。

●州は、連邦要求と矛盾しないなら、下記の要求を課し続けることができる:
 ○連邦政府の要求と同一;
 ○連邦法の権限の下に採択された;又は
 ○州の大気又は水の品質、又は廃棄物処理又は処分法の下に採択された制限。

●州は共同実施又は免除を除いて、州の中で化学物質の全ての使用を禁止するということはできない。

12b. 州法への専占権−
既得権

(grandfathering)

●該当なし

●2015年8月1日以前に化学物質にとられた、又は2003年8月31日に有効であった法律の下にとられたどのような州の措置も、EPA の措置にかかわらず、依然として有効である。

●カリフォルニア州のプロポジション 65 は、専占の範囲から除外される。

●2015年8月1日以前に、又は2003年8月31日に有効であった州法の下に、化学物質にとられたどのような州の措置又は要求も、EPA の措置にかかわらず、依然として有効である。

●カリフォルニア州のプロポジション 65 は、専占の範囲から除外される。

12c. 州法への専占権−
EPA の最終的措置前

●州は、EPA がその化学物質に最終的な措置をとるまで、EPA が見直し中の化学物質に新たな要求を課すことを妨げられない。

●州は、ひとたび EPA がある化学物質を高優先と指定して見直しを開始したなら、一般的にその化学物質に新たな制限を課すことを禁じられ、EPA が最終的な安全性決定を発布するときに終了する。州は、どのような求められる法規制の制定中にも新たな制限を課すことができる。

●EPA 活動計画化学物質の産業側要求による評価の開始は、新たな州制限の専占のきっかけとなる場合を除いて、産業側が EPA に実施を求めた化学物質の評価の EPA の開始は専占のきっかけとはならない。

●州は、EPA がその化学物質に最終的な措置をとるまで、EPA が見直し中の化学物質に新たな要求を課すことを妨げられない。

12d. 州法への専占権−
EPA の最終的措置後

●新規又は既存の化学物質リスクから保護するためにとられる EPA の措置は、州の既存又は新規の措置に一般的に専占する。

●2015年8月1日以降に課せられたある化学物質の州制限は、もし EPA がその化学物質は安全基準を満たすと決定するなら専占され;もし EPA がある化学物質は基準を満たさないと決定すれば、EPA がその化学物質を制限する最終規則を発布するときに専占を適用する。

●2015年8月1日以降に課せられたある化学物質の州制限は、もし EPA がその化学物質は不合理なリスクを及ぼさないと決定すれば専占され;もし EPA がその化学物質は不合理なリスクを及ぼすと決定すれば、EPA がその化学物質を制限する最終規則を発布するときに専占を適用する。

12e. 州法への専占権−
新規化学物質

●もし EPA がリスクから保護するために指定されたひとつの新規化学物質にどのような要求をも課すなら、州はリスクから保護するために指定されたその新規化学物質に要求を課すことはできない。

●新規化学物質の EPA の見直しは、専占に影響しない(TSCA 及び上院の法案とは異なる)。

●もし EPA がリスクから保護するために指定されたひとつの新規化学物質にどのような要求をも課すなら、州は、会社によって特定された使用による暴露から保護するために指定されたその新規化学物質に要求を課すことはできない。

12f. 州法への専占権−
免除

●明らかにより保護的であり、不当に州間通商に負荷をかけない要求への連邦政府の専占の免除を得ることができる。

●EPA は、それが現行の TSCA の下におけるものと同様な条件を満たすなら、最終的な安全性決定の前に州が措置をとるための免除を与えなくてはならない。
 ○もし EPA が安全性決定の発布のための、又は州の免除申請を決定するための期限を満たさないなら、州の免除は自動的に承認される。

●EPA は、もし現行の TSCA 又は上院の法案より煩雑なある条件が満たされるなら、最終的な安全性決定又はリスク管理規則の後に、措置をとるための免除を州に与えてもよい。

●もし EPA が州の免除申請を決定しないなら、決定させるために誰でも EPA を訴えてよい。

●もし EPA が州の免除を授与する又は却下するなら、その決定は法廷で争うことができる。

●EPA は、もし現行の TSCA の下におけるものと同等なある条件が満たされるなら、最終的な安全性決定又はリスク管理規則の後に措置をとるための免除を州に与えてもよい。
 ○もし EPA がその裁量で州の免除申請に関して決定しない場合には、決定させるために利用可能なてだてはない。

●もしEPAが州免除を授与するなら、その決定は法廷で争うことができる。

●もし、EPA が州免除を却下するなら、その決定は TSCA の下で法廷で争うことはできないが、もしその決定が最終的な EPA の措置であるとみなされるなら、行政手続法の下で争うことは可能かもしれない。



訳注:関連情報


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