2025年4月3日、欧州委員会は、REACH 規則および CLPに関する諮問機関である CARACAL(Competent Authorities for REACH and CLP)[第54回会合]において、REACH 規則の改正案を各国の専門家に提示した。委員会によると、その目的は、企業と当局のために規則を簡素化し、近代化し、執行を強化することである。
会議では、2025年に予定されている REACH 改正に関するいくつかの重要な提案が議論された。これらの変更は、EU 全体の化学物質管理に大きな影響を与える可能性がある。主な点を以下にまとめる。
- 登録の10年間の有効期間
REACH 登録番号の有効期間は10年間となる。ECHAは、書類が期限切れまたは不適合であると判明した場合、登録を取り消す権限を有する。
- 必須の書類更新
- 書類は、以下の場合に更新する必要がある:
・物質を SVHC(高懸念物質)として特定
(訳注:SVHCとは、高懸念物質(substances of very high concern)のことで、REACH規則の附属書]Wに収載される認可対象物質の候補になる物質である。認可対象物質の候補リストという意味で Candidate List(候補リスト)と呼ばれることもある。|化学物質と法規制研究所)
・調和分類の付与
(訳注:調和された分類とは、欧州レベルで合意された分類である。出発としてDSD(ECHA)*指令の附属書I(危険物質リスト)を受け継いでおり、発がん性、生殖細胞変異原性または生殖毒性及び呼吸器感作性等の注目される有害性を有する指定された区分に相当する物質の分類である。|化学物質国際対応ネットワーク)
- REACH附属書の変更
- 附属書 IIIおよび XIIIの削除案
(訳注:附属書 III: 1 トン〜10 トンの量で登録する物質に関する基準)
(訳注:附属書 VIII:10 トン以上の量を製造又は輸入する物質の標準的な情報の要件)
- 附属書 I、VI〜X、および XI の改訂案
(訳注:附属書 I:物質評価及び化学物質安全性報告書の作成のための一般的な規定)
(訳注:附属書 VI:第 10 条に記す情報の要件)
(訳注:附属書 VII:1 トン以上の量を製造又は輸入する物質の標準的な情報の要件)
(訳注:附属書 VIII:10 トン以上の量を製造又は輸入する物質の標準的な情報の要件)
(訳注:附属書 IX:100 トン以上の量を製造又は輸入する物質の標準的な情報の要件)
(訳注:附属書 X:1000 トン以上の量を製造又は輸入する物質の標準的な情報の要件)
(訳注:附属書 XI:附属書 VII から附属書 X までに規定する標準的な試験計画の適合化に関する一般的
な規定)
- 試験提案要件
附属書 VIIおよびVIIIに含まれる試験を含むすべての in vivo 試験は、トン数に関わらず、「試験提案」が必要となる。
- 化学物質安全性評価の拡張
化学物質安全性評価は、新しいハザードクラスである PMT(残留性、移動性及び毒性を持つ物質)、vPvM(非常に高い残留性及び非常に高い移動性を持つ物質)、および内分泌かく乱性物質(EDs)も対象とする必要がある。
- 混合評価係数(MAF)の導入
実際の複合暴露をより適切に反映するため、混合評価係数を導入し、化学物質の累積リスクを評価する。
- ポリマー類の義務的届出
年間1トンを超えて製造または輸入されるすべてのポリマー類は届出が義務付けられる。
- 附属書 VIIに基づく要件の強化
附属書 VII に基づく情報要件が強化され、より低いトン数帯であっても新たな義務的試験が導入される可能性がある。
- 物理化学データのみを含む書類の更新
物理化学データのみを含む書類は、附属書VIIの要件をすべて満たすよう更新する必要がある。
- 制限に関する提案
プロセスの過負荷と遅延を回避するために、事前の優先順位付けと設計を改善する。
- 候補リストの役割を変更
認可に向けた最初のステップとしてのみ機能するのではなく、規制措置全般を優先する。
さらに、提示された追加提案の中で、議論は主に以下の点に焦点が当てられた。
- サプライチェーン・コミュニケーションのデジタル化(デジタル安全データシートへの移行とデジタル製品パスポート(DPP)フレームワークとの整合性を含む)。
- 各国の制度に共通基準を設定し、加盟国全体で体系的監査とアドホック監査の両方を可能にすることで、EUの執行における役割を強化する。
これらの提案に関するパブリックコメントは2025年4月25日まで実施され、最終的な法案は年末までに成立する予定である。
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