ケムセック(ChemSec) 2024年7月3日
太陽光パネルからのPFAS廃棄物:これは
業界の人々が話したがらないことである

太陽光パネルは地球を救うことができるかもしれまない。
しかし、現在生産され廃棄されている方法は、
環境に深刻なダメージを与えている。
毎年何千トンもの PFAS 廃棄物が埋め立て地に捨てられているが、
業界はそれをどう処理すればよいのか全くわかっていない。

情報源:ChemSec, 3 July 2024
PFAS waste from solar panels: 'This is something
that people in the sector don't like to talk about'

Solar panels may very well save the planet.
But the way they're being produced and disposed
of right now is seriously hurting the environment.
Thousands of tons of PFAS waste are put in landfills each year
- and the sector has no idea how to deal with it.

https://chemsec.org/pfas-waste-from-solar-panels-this-is-something-
that-people-in-the-sector-dont-like-to-talk-about/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
https://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2024年7月29日
このページへのリンク:
https://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/ngo/
240703_ChemSec_PFAS_waste_from_solar_panels.html


 太陽エネルギーを利用することは、地球を救うための最も重要な対策のひとつであり、太陽光パネルは重要な役割を果たす。しかし、気候危機と戦うために太陽光発電に目を向けると、厄介な問題が浮上する。

 現在、太陽光パネルの大部分は、耐久性を確保するために、外層に有害で非常に残留性の高い PFAS 化学物質を使用している。2022年には、これらの外層に使用されている PFAS 材料の市場シェアは 80%近くであり、PFAS を含まない代替品はわずか5分の1であった。

”これらの製品のほとんどはリサイクルに適した特性がない”
ソラージュ社最高商務責任者、ヒューブ・ファン・デン・ヒューベル

 しかし、太陽光パネルに含まれる PFAS の本当の問題はまだ見えていない。

 ”これらの製品のほとんどはリサイクルに適した特性がない”と、オランダの太陽光発電会社ソラージュの最高商務責任者、ヒューブ・ファン・デン・ヒューベルは述べている。

太陽光パネルに含まれる PFAS は廃棄物の問題である

 つまり、古い太陽光パネルは処理が必要な廃棄物になる。ヨーロッパでは、25〜30 年後に寿命を迎えると焼却されるが、PFAS などの有害な化学物質が大気中に放出されるため、理想的ではない。

 しかし、ヨーロッパの太陽光パネル市場は小さく、全体のシェアのわずか 2% しか占めていない。世界の他の地域では、古い太陽光パネルは埋め立て地に捨てられ、有害な PFAS が土壌や地下水に浸出するのを許し、人間の健康や野生生物に重大なリスクをもたらしている。

 ”これは、この業界の人々があまり話したがらないことである。この廃棄物をすべて収集する一種のシステムはあるが、私たちは実際には材料を再利用しているわけではなく、基本的に取り除いているだけである。これは多くのエンドユーザーが知らないことである。この業界に長くいる人は、リスクを管理することで対処する方法を見つけるが、それは問題を本当に解決しているのではなく、むしろ自分の利益を大事にしているだけである”と、ヒューブ・ファン・デン・ヒューベルは続ける。

 ChemSec 市場移行責任者、ジョナタン・クライマーク博士は次のようにコメントしている。

”PFAS 汚染は、早急な対応が必要な深刻な問題である”
ChemSec 市場移行責任者、ジョナタン・クライマーク博士

 ”クリーンな代替手段としての太陽エネルギーの推進に焦点が当てられてきたが、ソーラーパネルの製造に使用される材料の環境への影響を無視することはできない。PFAS汚染は、早急な対応が必要な深刻な問題である。”

より安全な代替品が利用可能

 しかし、これらの課題にもかかわらず、希望は見えている。
 市場には、必要な基準をすべて満たす、より安全な PFAS を含まない代替品がある。従来の PET (ポリエチレンテレフタレート)ベースの外層は 15 年以上使用されており、主要サプライヤーから簡単に入手できる。新しいイノベーションも絶えず開発されており、その多くはリサイクルできるように設計されている。

 これらのより安全な代替品は、太陽光発電業界が環境に優しいという評判を維持する方法を示している。PFAS 問題に直接取り組むことによってのみ、太陽エネルギーは化学汚染危機に寄与することなく、地球に十分な利益をもたらすことができる。


訳注:参考情報
  • 太陽電池モジュールの背面保護:フッ素樹脂の耐候性や汚れ防止機能を備えた塗料が太陽電池モジュールの背面側表面の保護に使用されています。太陽光発電システムには耐久性や耐候性の向上のために、集光パネルのバックシートなどにフッ素材料が使用されています。(DAIKIN(ダイキン)

  • ふっ素樹脂は、再生可能エネルギー用途に欠かせない、代替不可能な材料です。(Chemours(ケマーズ)

  • 2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題(経産省/資源エネルギー庁 2018-07-24
    訳注:有害物質として鉛、カドミウム、ヒ素、セレンの記述はあるが、PFAS に関する記述なし

  • 太陽光パネルの「含有化学物資」情報、FIT・FIP認定の要件に(メガソーラービジネス 2024/01/18
    訳注:有害物質として鉛、カドミウム、ヒ素、セレンの記述はあるが、PFAS に関する記述なし

  • 太陽電池向けにさまざまな高機能ポリエステル(PET)フィルムを販売開始
    これまで太陽電池の最上層と最下層にはガラスが用いられていましたが、軽量化のため、最下層のガラスは樹脂フィルムを積層したバックシートへの置き換えが進んでいます。バックシートは、電気絶縁層、防湿層、耐候層からなります。耐候層には、主にフッ素系フィルムが用いられてきましたが、フッ素系フィルムからPETフィルムへの置き換えが進んでおり、2015年にはPETフィルムが全体の約7割を占めるようになると、当社は予想しています。(東洋紡 2010年6月28日


化学物質問題市民研究会
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