ストックホルム条約 COP7 2015年5月7日
PFOS に関する グリーンピースの発言
メリサ・ウォン(グリーンピース)

情報源:COP 7 May 7, 2015 Greenpeace Intervention on PFOS
Given by Melissa Wang, Greenpeace
http://ipen.org/sites/default/files/documents/Greenpeace%20Intervention%20on%20PFOS.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年5月14日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/NGOs/150507_Greeneace_Intervention_on_PFOS.html

 議長、ありがとうございます。

 いくつかの限界はありますが、PFOS、その塩、及び PFOSF への化学的代替物質のハザードベースの評価は、潜在的な新たな POPs を特定するのに役立ち、したがって他の POPs によるそれらの代替を回避するのに役立ちました。それはリオ宣言第15原則(訳注1)に規定される予防的アプローチを反映します。

 私たちはまた、EU の PFOA の推薦に対する私たちの支持を表明したいと思います。

 しかし私たちは、いくつかの懸念を述べ、検討のための考え方を提供したいと思います。

 第一に、この評価を通じて、POPs 検討員会(POPRC)が付属書D の基準(訳注2)に、全て合致した又は合致するに違いないと考えて特定した2つの化合物があります。すなわち D4 (訳注3)とクロルピリホスです。予防原則に基づき、そして人の健康と環境を POPs から守るというストックホルム条約の目的を達成するために、私たちは締約国がこれらを付属書A、B、及び/又はC にリストするための提案書を提出して、これら二つの代替物質に関する更なる評価を実行するよう促します。

 第二に、このこともまた言及されていることですが、多くの場合、代替物質の関連情報は企業秘密として分類されています。従って、報告されている代替物質の約3分の2 は情報が不十分なために、フッ素化合物の代替物質の全てを含んで、分類が困難な物質であるとみなされています。そのことは、産業側利害関係者からの十分な協力と貢献がなければ POPs の代替評価作業は困難であることを示しています。彼らは、彼らの製品により引き起こされる有害影響を削減し、これらの化学物質の有害特性に関して使用者、政府及び公衆に情報を提供する責任を取るべきです。

 さらに、”この条約の目的のために、人の健康と安全及び環境に関する情報は秘密のものとみなされない”ということが第9条で認められています。同様な宣言はまた、私企業分野からの代表を含んで、利害関係者らにより宣言された国際化学物質管理会議におけるドバイ宣言中にも含まれています(訳注4)。

 従って、私たちは締約国が産業への働きかけを強化して、産業側の秘密の権利から、どの様な物質が様々な製品で使用され、環境中に放出されているのかを公衆が知る権利に、その均衡を移すよう促します。

 第三に、フッ素化合物の代替に関して、データの欠如のために分類がが困難であるとみなされていますが、それらは、増大する製造と使用、そしてある場合には極端な広汎性のために、緊急に対応しなければならない状況にあります。そして実際に、例えばドイツ連邦環境庁は、短鎖過フッ素化合物をその高い安定性と移動性のために、例えば地表水と地下水を汚染し飲料水に入り込んで来る可能性のために、環境に適切な代替としてはみなしていません。そのような懸念はまた、200人以上の様々な分野の科学者と専門家により署名され、新たに発表されたPFASに関するマドリード声明に反映されています(訳注5)。

 もっと重要なことは、非フッ素化代替物質が、少なくとも特定免除(specific exemptions)の下にリストされているある産業分野にとって技術的にも経済的に実行可能であるということです。グリーンピースの Detox My Fashion キャンペーンに応じて、世界的ファッションブランド 20社、イタリアの生地供給 6社、及びドイツの大きなスーパーマーケット 4社−これら各社の合計は世界の繊維製品市場の10%を占めます−は、2020年までに彼らの繊維製品及び衣料製品から全ての過フッ素化合物(PFCs)を廃絶することを約束しました。ドイツの小売業者もまた、来年中にカーペットとカーテンから PFCs を廃絶することを約束しました。これらの約束されたPFCs は、全てのポリ−及びパーフッ素化合物(PFASs)及びそれらの先駆物質及び代謝物質として定義されています。これら各社のうち2つのブランドは全ての PFCs が彼らの全ての製品及び/又はサプライチェーンで成功裏に禁止されたと公的に発表しました。

 従って、私たちは締約国が非フッ素の代替物が利用可能であり実行可能であることに留意し、化学物質の問題あるひとつのグループが簡単には他の化学物質に代替されないことを確実にするために、予防的アプローチにこだわるよう促したいと思います。

 大事なことをひとつ言い残しましたが、それは、非化学的代替は附属書にリストされますが、評価手法は化学的物質にのみ適用可能なので 、報告書中で評価されないということです。このことは、製品の設計、製造プロセス、及びその他の実践における革新的な変革がストックホルム条約の目的を達成するために非常に重要なのに、実際には焦点が主に化学的代替物質に当てられているという誤った印象を与えかねません。従って私たちは、POPs 検討委員会が化学的及び非化学的代替の両方に関してもっと包括的なレビューを実施し、そうすることにより、ストックホルム条約の目的を達成する上で設計と材料使用における革新的な変革が非常に重要な代替であるという強い信号を発信するよう促したいと思います。

 議長、ありがとうございました。


訳注1
国連環境開発会議(地球サミット:1992 年、リオ・デ・ジャネイロ)環境と開発に関するリオ宣言

訳注2
POPs 条約附属書Dに規定されている情報の要件及び選別のための基準

訳注3 D4 : オクタメチルシクロテトラシロキサン
環状シロキサン/ウィキペディア

訳注4:ドバイ宣言(ハイレベル宣言)
ハイレベル宣言(国際化学物質管理会議の文書をもとに環境省仮訳)

訳注5:マドリード声明
Green Science Policy Institute 2015年5月1日 ポリ−及びパーフルオロアルキル物質(PFASs)に関するマドリード声明



化学物質問題市民研究会
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