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環境ホルモン空騒ぎ問題とその後

化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載 2006年12月30日
更新 2011年12月22日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/edc_keii.html


■環境省はSPEED'98を廃止し、これからはExTEND 2005 を推進するのだと2005年3月に発表しました。新聞に環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)について書かれることもなくなりました。”環境ホルモン空騒ぎ”(現在、オリジナルはリンク切れなので”魚拓”を用意しました)、”ダイオキシン神話の終焉” というようなことを主張するする”先生方”がおり、環境省も、 ”大騒ぎしたけれど環境ホルモンは結局、野生生物にしか害は及ばない” という様な "意見” が述べられた対談(「Part 1」「Part 2」)を掲載したホームページや小冊子 『チビコト』 を出し、 ”安全と安心のリスク・コミュニケーション” と称して、一方的な情報を国民に流しています。この様な ”意見” が本当に正しいのでしょうか? 環境ホルモンは野生生物にしか害は及ばないなどという結論を出すほど解明したのでしょうか?

■環境省は小冊子 『チビコト』 を  ”化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページ” に掲載したと報道発表しました(チビコト:ロハス的環境ホルモン学」ホームページ掲載について)。この様な一方的な内容の小冊子を臆面もなく作成し、配布し、ホームページ”に掲載し、報道発表するようでは環境省もいよいよ重症です。環境省は、 「(このホームページは、)この問題に関する分かりやすい情報や多様な意見を紹介することを目的として、環境情報普及センターが作成しているものです」 と、あたかも環境省は関与していないホームページのような表現で、環境省の責任をあいまいにしています。
 当研究会では、1月22日付で小池環境大臣宛てに 「環境ホルモンに関わる小冊子 『チビコト』 およびホームページに関する公開質問状」 を出しました。また、この質問状に対する1月30日付環境省回答に対し、2月5日付で再度、環境省に「公開質問状(2)」 を出しましたが、2月20日付で環境省より誠意のない回答がありました。3月22日参議院環境委員会(第五回)で民主党岡崎トミ子議員 が環境ホルモンに関わる小冊子「チビコト」について、特にその随意契約についての質問を行いました。またこれとは別に、NHKテレビが4月4日の「ニュースウオッチ9」で環境省の過去5年間3,000件の契約についてその93%が随意契約であった実態を報道しています。

(06/12/30)
■ Environmental Health Perspectives Volume 115, Number 1, January(米 EHP 2007年1月号) 「ディレクターの展望/内分泌かく乱物質に関する新たな研究」 で、米国立環境健康科学研究所(NIEHS)/国家毒性計画(NTP)のディレクターは、「我々は内分泌かく乱物質の研究において著しい進展をみたが、あらゆるところに存在するこれらの化学物質の健康影響の全てを理解するためにはまだ長い道のりがある。我々がそれを成し遂げるまで、将来の世代のために、NIEHS はこの重要な研究領域に精力を注ぎ続ける」 と決意を語り、「内分泌かく乱物質の研究を NIEHS 戦略計画の中心に位置付ける」 としています。環境省の 『チビコト』 とは見識と品格がかなり違うようです。

(06/12/30)
■2006年6月28日夜8時から NHK テレビで 『ためしてガッテン 環境ホルモンを覚えていますか?▽新報告続々 この現実をどう見る? 胎児影響?』 が放映されました。そこでは ”環境省が 「人間への明確な影響はなかった」 と報告したことで安心感が広がり、その結果からか、環境ホルモンは生物の生殖をかく乱したのではなく、 「人心」 をかく乱したのではないかということすら言われました。しかし環境ホルモンの問題はようやく研究テーマが定まってきたところで、世界中で着々と進んでいるところです”−と全く妥当な説明をしています。この番組の紹介は NHK のウェブページ http://www3.nhk.or.jp/gatten/archive/2006q2/20060628.htmlで見ることができます。(現在は、この番組紹介はみあたらず、削除されたと思われるます。)
 番組の概要については、当研究会ピコ通信第95号(2006年7月) の 「NHK 『ためしてガッテン 環境ホルモンを覚えていますか?』を観ましたか」 をご覧ください。

■2005年5月10日〜12日に欧州委員会の後援のもとにプラハで開催された内分泌かく乱物質に関するCREDO プラハ・ワークショップに多くの異なる分野を代表する国際的な専門家と科学者らが参加しました。これら参加者を中心に15か国からの100人以上の研究者たちが共同で署名した ”内分泌かくらんについての懸念を提起する声明 (プラハ宣言)” が2005年6月に発表されました。”内分泌かく乱物質に関連する潜在的なリスクの度合いを展望する時に、我々は、科学的不確実性があることをもって内分泌かく乱物質への曝露とそれからのリスクの低減のための予防的措置を遅らせるべきではないと強く信ずる。” (当研究会訳:内分泌かく乱物質に関するプラハ宣言概要

■2005年6月にアメリカのサンディエゴで開催されたアメリカ内分泌学会(The Endocrine Society)の第87回年次総会に先立ち、内分泌かく乱化学物質を科学の最前線にという意図の下に、内分泌かく乱化学物質に関するフォーラムが開かれましたが、”それは後世に、ある分野でのひとつのターニング・ポイントであったと証明されるであろう科学会議であった”−と、アメリカ国立環境健康科学研究所(NIEHS)が発行する環境健康展望2005年8月号ウェブ版(EHP Volume 113, Number 8, August 2005) の記事 Growth Spurt for EDC Recognition は伝えています。(当研究会訳:内分泌かく乱化学物質の認識が高まる

(12/11/22)
■その後の環境ホルモンに関する世界の動向については、「環境ホルモン/世界のEDC政策の動向」をご覧ください。内容については、今後、さらに新な情報を追加する予定です。

■環境ホルモンは非常に低用量でヒトや動物の内分泌系をかく乱し、特に子宮内で胎児が発達中の微妙なタイミングに曝露すると流産したり、生殖系、免疫系、神経系などに障害をもった赤ちゃんが生まれるおそれがあり、その後も行動障害、早熟、精子数の減少、肥満、前立腺や肝臓、膵臓など臓器の障害、がんの発症、更には遺伝子にも影響を与え、世代を超えて障害を及ぼす可能性があるなどの研究報告があります。複合暴露による相乗・相加・拮抗作用などについは、まだほとんど解明されていません。

■環境ホルモンに関する研究はまだ終わっていません。深遠で複雑な生命発生時の出来事に関わり、世代を超えて生物種に重大な影響を及ぼす可能性のある環境ホルモンの解明はこれからです。環境ホルモンは終焉したなどと不遜なことは言えません。全てが完全に解明されるまで手をこまねいていては取り返しのつかないことになりかねません。私たちの子どもや孫に、そして世代を越えて影響を与えるおそれがあるような化学物質はすぐに禁止すべきです。


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