内分泌かく乱物質に関するプラハ宣言概要

情報源:The Prague Declaration on Endocrine Disruption
Our Stolen Future June 20,2005
http://www.ourstolenfuture.org/Consensus/2005-0620praguesynopsis.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2005年6月26日

紹介

 多くの異なる分野を代表する国際的な専門家と科学者らが、いわゆる内分泌かく乱物質と呼ばれるホルモン系をかく乱する化学物質に関するワークショップに参加するために、2005年5月10日〜12日にプラハに参集した。このワークショップは、これらの化学物質に関連する健康リスクに関する最近のヨーロッパの研究を討議するために召集された。この作業の多くは欧州連合(EU)の基金による大規模な研究プロジェクトに由来するものであり、内分泌かく乱物質に関する研究のためのグループ、CREDO(訳注)に参画している。
 プラハでのワークショップにおいて発表された結果は、ヒトと野生生物に対する内分泌かく乱物質の暴露の長期的結果についての懸念を強くするものであった。
訳注:
Cluster of Research into Endocrine Disruption in Europe (CREDO)
内分泌攪乱化学物質に対する欧州委員会の取り組み(環境省)参照

概要

 2005年6月、内分泌かく乱物質に関する研究に積極的に関与している15か国からの100人以上の研究者たちが共同で署名した、内分泌かくらんについての懸念を提起する声明を発表した。”内分泌かく乱物質に関連する潜在的なリスクの度合いを展望する時に、我々は、科学的不確実性が内分泌かく乱物質への暴露とそれからのリスクの低減のための予防的措置を遅らせるべきではないと強く信ずる。”  彼らの分析は、欧州委員会によって資金提供されているEDENウェブサイトからPDFファイルとしてダウンロードできる。
 OSFによるHTMLファイル

 声明の中で、科学者らは現在の安全標準は内分泌かく乱物質によって引き起こされるリスクに対応するようになっておらず、現在のテスト手法は深刻なリスクを過小評価する結果となるかもしれないと結論付けた。

 野生生物への影響はよく報告されている。ヒトはかく乱への感受性が特に高い生命の初期から暴露している。ヒトに対する実験を企てることの非倫理性、各成分が影響に寄与するかもしれない混合物がいたるところに存在するという環境、暴露から影響が出るまでの長い潜在期間など、真の影響を容易に見逃してしまうよな状況の下で、ヒトにおける影響の関連性を確立することには本質的な難しさがある。プラハ宣言の科学者たちは、”ホルモン関連障害と化学物質暴露との直接的な関連を示すことができないからといって、リスクが存在しないすべきではない”と確信している。

政策

  • 科学的不確実性が予防的リスク低減措置の実施を遅らせるべきではない。
  • 予備評価はリスク評価のベースとしては適切ではないが、否定しがたい結果はリスクの存在を示しているかもしれないという前提に基づいて、予防的規制措置のきっかけとして用いられるべきである。
  • 内分泌かく乱特性を有するとすでに知られている物質は、提案されている欧州化学物質規制 REACH に含まれるべきであり、認可対象とされるべきである。
  • ヒトと環境に蓄積することをなくすために、例えば、臭素化難燃剤のような残留性化学物質の使用を本質的に制限する措置がとられるべきである。
  • 下水処理施設からの内分泌かく乱物質の放出は大幅に削減されるべきである。
  • 産業側の実験を含む、動物テストからの関連データは可能な場合は公衆に公開されるべきである。
研究

  • 環境中の内分泌かく乱物質を十分に整理した完全な全体像を得るためにはもっとデータが必要である。このことは、関連する健康障害の顕著な相違を地域をわたる地理的な比較を可能とする内分泌かく乱物質(EDCs)の体内汚染に関するデータの収集を含むべきである。
  • リスクにさらされるかもしれない有機組織体の機能を認識するために、内分泌かく乱物質の挙動に関する更なる理解が求められる。
  • 細胞信号経路の広い配列に及ぼす内分泌かく乱物質の影響、特に疾病に密接に関連するものについて、解明される必要がある。
  • ヒトと野生生物に関連する内分泌かく乱物質を特定するための新たな分析評価法とスクリーニング手法の開発が早急に行われるべきである。
  • 内分泌かく乱物質がヒトの疾病にどのように関与するのかに関するもっと機械的な情報が求められる。
  • よりよいリスク評価手法を補強するために、混合物の影響に関する更なる組織的な取り組みが必要である。
  • すでにいくつかの事例研究が生物多様性に脅威を及ぼしているということを示しているので、生態系のバランスと安寧のために野生生物における内分泌化学物質の影響が早急に調査されるべきである。
  • 野生生物の研究で、有機組織体レベルにおいて見られる影響を個体群レベル及び生態系影響に関連させる機械作用的作業が推進されるべきである。
  • 暴露の経緯と明らかな有害結果との間の一時的な関連性の喪失を克服するために、そのことが小児期及び成人してから問題を起こすかもしれない新生児に及ぼされている可能性ある影響の検出に焦点を当てたプログラムが計画されるべきである。


化学物質問題市民研究会
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