BAN 有害廃棄物ニュース 2005年12月14日
船舶解体における人命のコスト 情報源: Toxic Trade News / 14 December 2005 Human cost of shipbreaking by Sam Bond, edie.net 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2005年12月25日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/05_12_14_shipbreaking.html
64ページからなるこの報告書は多くの統計をちりばめながら、豊かな国々が人々や環境のことについて僅かしか、あるいはほとんど考えずに開発途上国の海岸に廃船を捨てるという恐ろしい現実を描いている。 多くの悲劇の事例研究が、恐ろしい日常性の下に人々が手足をもがれ、不具にされ、殺される現実を示している。 ![]() 船舶解体現場は、廃船が最後に行き着く場所である。これらの解体現場で船は主に鉄材を求めてスクラップにされる。この産業はアジアで数千人の雇用を生み出し、船の建造に使用された多くの材料のリサイクリングを可能にしている。 しかし、それは汚く危険なビジネスである。解体を宣告されたほとんど全ての船舶は、アスベスト、オイル・スラッジ、鉛を含有する塗料、カドミウムやヒ素のようなその他の重金属、有毒な殺生物剤、PCB類などの危険な物質、さらには放射性物質さえも含んでいる。 グリーンピースと国際人権連盟(FIDH)の代表は、インドとバングラディシュのこれらの労働者が働き住む場所に行った。現場の労働者によれば、船舶解体労働者についての包括的なデータを集めることは非常に難しい。ほとんどの場合、当局は記録を残しておらず、たとえそれらが存在したとしても、彼らはしばしば真実を記録していない。 例えば、インドのグジャラート海事委員会は、1983年に船舶解体活動が開始されてから2004年半ばまでに、事故による犠牲者を372人として記録している。しかし、目撃者の証言と比べると、事故による死者についてのこれらの公式な”数値”は、大幅に過小評価されている。 バングラディシュでは、解体場経営者も当局すらも記録を残していない。唯一の書き物による情報源は地方の新聞の報告である。 NGOsはチッタゴンで過去数十年間に少なくとも1000人が事故のために死んだと見積もっている。 ”この有毒貿易の犠牲者の全てについては知られていない。この物語は氷山の一角であるに過ぎず、過去20年間に死者を弔う鐘は数千回響いたと推定される。さらに、有毒物質への曝露に関連する長期の疾病の果てに死んだ人々の記録は皆無である”とFIDHの代表シディキ・カバは述べた。 インドとバングラディシュの、解体現場では、防護装置の欠如や、労働組合の結成や参加の権利の制限を含んで、労働者の権利の実施が不十分なために、労働者は死亡し負傷する。彼らが死亡すると、妻や子どもたちはいかなる収入もなしに残される。 国際海事機関(IMO)、有害廃棄物監視のバーゼル条約、及び国際労働機関間(ILO)は、船舶解体産業を管理下に置くための方法を討議するために会議を今週開く。 国際海事機関(IMO)は、常に自主規制を提唱し、新たな船舶解体に関する条約を開発する計画を発表した。 (関連記事参照:Ship breaking still a headache for industry / 6 October 2005 ) しかし、この条約は少なくとも今後5年間は発効しないであろう。このことは新規の規制により来年中に廃止しなくてはならない一重殻のタンカーの大量の廃船解体には間に合わないことを意味する。 国際人権連盟(FIDH)とグリーンピースはさらなる死を防ぐために早急な行動が必要であると主張している。 ”船舶産業は有害物質を取り除かないまま、アスベスト、その他危険な廃棄物や危険なガスが船内に残った廃船を、致命的な事故や汚染を防止するためのどのような措置もとられずに、労働者や環境が保護されていない場所に送り込んで満足している。会議が行われている間も労働者が死んでいる。今週の会議での討議は少なくとIMOが船舶解体のための新たな規制を出すまでは船舶解体に関するILOガイドラインとバーゼル条約が適用されるべきである”とグリーンピース・インターナショナルのマリエッタ・ハルジョノは述べた。 この報告書の発表は、前述の意思決定ミーティング及び、フランス政府がスクラップのためにインドに送ろうと計画しているフランス航空母艦クレマンソー号のグリーンピースによる封鎖にタイミングを合わせて行われた。 訳者注(参考記事) ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |