女神の制裁
Judgment.9
ドリィとフユキのメール書評
フユキ(酒井冬雪)/またもや引越しをしました。まったく土地鑑のないところに住む心細さとスリルを楽しんでます。でも、やっぱり引越しは疲れる。しばらくカンベンです。
ドリィ(ドリィ野方)/移民がちーっとも出現しやがらねえぞ、コンチキショー!ってことが今年の怒りぞめ。カエル発行までにはグランドスラムができますように。

『不倫の恋で苦しむ男たち』

ドリィ●タイトル聞いた時点で、だいたいのアタリはつけられるよね、この手の本の内容は。そして期待したとおり、全編とおして「マヌケ」のオンパレードで嬉しくなっちゃった。まず、個人的体験である恋愛を語っちゃう男がマヌケ。本人や、直接話をきく著者にとってはシビアで苦しい恋物語でも、お茶の間で寝転がって本読む私に「なにこいつ、ばかー♪」と笑われても致し方あるまい。【『ほら。こんなことになってるんだ』と僕は彼女の手を僕のズボンの前にもってこさせました】と、話言葉によるエロい描写は、書き文字になったとたん、どうしようもないマヌケ感を醸してしまうもんなのねえ。亀山さんが解説する地の文がまた固くて、まじめにレポートすればするほど、結果的に本のマヌケ度を押し上げてるぞ。
清水ちなみの『大不倫』では男と女のドラマを感じ、思わず涙をこぼしたことのある私ですが、この本に出てくる体験談はしょぼくてつまんなかったなあ。だいたい、語るヤツがみんな「男って○○じゃないですか」的な言い方するのが気に入らん。自分の体験を一般論でしか語れないとは何事か。
>フユキ●なんと、ドっちゃん。この本は「うちの夫、浮気してるんじゃない?」と疑心暗鬼な妻や、不倫をしている女の子が買って読んでいるもようです(てっきり、「知らなかった女性のカラダの秘密」みたいな本をこそこそ買うタイプの男の人が読んで「うんうん、わかる」とかうなずいてるんだと思ってた)。
他人様の言い分を検討する前に、自分の夫なり何なりと直接対決すべきでは…と思いつつ、浮気ばかりしてる(現在形なところに注目してください)父親に育てられたわたしは、大笑いしながら読みました。この本に登場する男性の悩みって、つきつめると「家族と、そして愛しい女もキズつけてるオレって罪な男」という自己陶酔にたどりつきそうなところが、自意識過剰でイヤでございます。「妻も恋人もふたりとも愛してるオレをなぜ責める」とか「家族も彼女も経済的に困らせていない」と正々堂々といってみてほしいものです。
ドリィ●まったく同感だわー。自己陶酔といえば、不倫男が「何も知らない妻に心で詫びてる」的な言い方をしてる点にも注目しております。浮気がばれてないと思いこめるとは、おめでたい人だわ。よっぽど愚鈍な人でない限り夫の浮気に気づくってば。表にださないのは、腹にイチモツ抱えてるからに決まってるじゃんねえ。そもそも、不倫してる男って妻を必要以上におとなしいと思いこむ傾向があるみたいね。でも、浮気を自分の専売特許のように思う態度はいかがなものか。自分がすることは他人様もする…という文法で考えないのが不思議でならないっす。妻も浮気してること、知らないだけだったりしてー。
でもまあ、どんな恋でも恋には苦しみがつきまとうもので。不倫ならではの苦しみというと、妻や子への対応をどうしよう、という点に見事に収斂されていますな。まあ、妻や子を捨てて、新しい恋人をとると決意した人は、こういった本には登場しないけどね。タイトルを「不倫の恋ゆえに、各方面の対応に四苦八苦する男たち」と変えたほうがいいかもねえ。誰も恋そのものには苦しんでなくない?
>フユキ●恋そのものを楽しんだり、苦しんだりできるタイプの人は、インタビューを依頼されても断ってそう。不倫というとどうしても「各方面にどのように対応してるか」というところに興味がある人が多いようです。この本は、新書だとかになるといいかと存じます。そうするとおのずと「お役立ち感」などが高まりそうです。
個人的には、恋愛に対して(たとえドライでも)いい意味で割り切りのできる男性がふえてほしい。ウェットで割り切りのできない性格の人が、不倫に手を出したかったら、「その前に、経済力をつけなさい」といいたい。浮気は男の甲斐性だっていうじゃないですか(この本に登場する不倫男たち風に)。それって、裏を返せば「甲斐性(お金)のある男しか不倫はしちゃダメ」ってことにも取れそうですけどー。

本について
これまで、あまり注目されていなかった不倫する男たちの本音をセキララにレポートした1冊。思わず「この、未熟者めっ」といいたくなる男のオンパレードで、不倫の渦中にいない人ならば笑って読めますでしょう。ドっちゃんは「妻に不倫されて苦しむ男たち」のほうがおもしろいのかも…といいますが、ムフ、わたしもむしろそっちの「もがきよう」に興味があります。WAVE出版/亀山早苗

●歯に衣着せない論調が人気のメール書評。13号ではスペシャルやってます。
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