こちら雲呑麺広報課 
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文/北角課長×OL伊藤
課長:北角五郎
香港映画ばかり観ている万年課長
OL:伊藤桂
上司の信頼厚いしっかり者

『世紀末中国のかわら版』
(中野美代子・武田雅哉編訳、中公文庫)

課長:山水画風に描かれたエジプトって、初めて見た。鉛筆の先みたいにとがったピラミッドには霞がかかり、脇には松のような木が。
OL:この絵では子犬のようなスフィンクスにも注目。1898年創刊、清朝末期に中国で人気を博した絵入新聞『点石斎画報』のイラストをまとめたこの本は、眺めていて飽きないですね。
課長:国内外のニュースをイラストにしているんだけど、絵師はもちろん実物を見ていない。
OL:とんでもない想像をしているところが面白いですね。「アメリカに建てられた摩天楼」の絵では、外に吊るされた椅子に座って人が上下している。エレベーターをこういうものだと思ったんでしょうけど、今にも全員落っこちそうです。
課長:インパクトの強さではこの「蒸気で動く鉄人」。シルクハットをかぶった紳士が、頭のてっぺんからもうもうと黒煙をはき出している。
OL:怪異譚系もいい味出してます。「塾で答案を添削する猿」とか「下半身がスッポンの美女」とか。イマジネーションと誤解にあふれた世界観がとても魅力的。
課長:事実ではない報道をお上から咎められたらしくお詫びと訂正を出しているんだけど、このお詫びもイラスト。弁髪の役人らしき人物が、間抜けな顔で詫びの文句が書かれた巻物を読んでいる。反省の色がまったく感じられないねえ。
OL:『滑稽新聞』などに通ずる遊び心が感じられますね。宮武外骨ファンにもチェックを薦めたい一冊です。

●香港カルチャーのはまりどころを紹介。次号が最終回。
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