一気読みが行く!
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文/尾崎枕
おざき・まくら
フリーの一気読み師。『煙か土か食い物』を電車の中で読んでいて、傘と手袋をなくしました。読んでみればわかります。

Target.2001年『このミステリーがすごい!』ベストテン

今年も“このミス”を読む季節になった。でもやっぱり10冊全部は読めなかった。来年こそは10冊制覇したい。そして再来年は国内外で20冊!…………。
1位『模倣犯』は、もう……ほんとに宮部さんは、なんでこんなに字を書くのが好きなの?ほとんどの登場人物の背景を掘り下げてあって、ものすごく長い。だって5年分だもんね。でも、不思議と登場人物も物語も混乱することはなくて、読みはじめたらまさに一気読み。読む前に分厚い上下巻を重ねたり縦に積んだりしてゲンナリしてたけど、途中からすごく安心して読めた。どんな結末であれ、絶対読者を裏切らないことがわかったから。
2位『邪魔』は、なんだ? 結局はっきりオチなかった気がするけど。それにこれってミステリーなの?なんか、読み終わった直後は面白かったのか面白くなかったのかよくわからなかったけど、3時間ぐらいたってから「あ〜面白かったんだ」という気になった。奥田英明って男だよね?なんか女性っぽい小説だった。
まっすぐなミステリーって感じだったのは8位『13階段』。ミステリー小説らしい小説だった。だって江戸川乱歩賞受賞だもんね。同じく8位『煙か土か食い物』は、へんな小説だった。へんでヤなかんじの小説だけど、ちょっとホロッとくるところがあって、ちょっとよかったと思われようとして書いているような気がしたけど、あんまりホロッとこなかった。ん? ほんとはホロッとくる部分を書きたかったけど、恥ずかしいから500ページもかけて乱暴にふるまっていたのかなもしかして? でも、へんでヤなかんじなら、最後までそれでいってほしかったな。最後に“やはりお父さんは僕達を愛していた”ってなってしまうのは、なんか裏切られた気分。元不良が「バラ珍」で両親にお礼の手紙読んで涙流してるカンジ。作者が作中で自分のような作家を皮肉っているのがおかしかったけど。
10位『相棒に気をつけろ』は、う〜ん。まるで”談話室・滝沢のような。この「一気読みが行く!」でしか本を読まない私なのでよくわからないけど、なんか、すごくなんでもない話だった。で? わざわざベスト10に入れなくてもいいのに。だってこの人、すごく有名な作家だよね? こんなもう地位が固まっている人の、しかも大作でもエポックでもなくて、“仕事です”をランキングしなくてもいいのに。11位の人は残念だっただろうなあ

●本をほとんど読んだことがないという筆者がコアなジャンルをまとめて一気読みするとどういう感想をもつのか? という体育会系実験的書評。
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