カエルがもらえるWEB本屋
青山ブックセンターインターネットショップ
第9回
文/田中由美
たなか・ゆみ
青山ブックセンターインターネットショップ担当 

ちょっとあちらを覗く本

あちらを覗いてみたいと思うことしばしば。ここではないあちら、異界というのでしょうか。オバケには会いたくない、怖いのはいや。でも覗くだけ……ほんのちょっとだけ……。そんな願望を満たすご紹介書5冊をピックアップ。
1水玉の幻想
沼田元気/青山出版 2980円

この本は覗き本最高峰。だって本当に穴があいてるんだもの。沼田さん独特の不思議で素敵な雰囲気の写真やコラージュアート作品がいっぱいつまった1冊で穴が中央にばっちり。そう懐かしのレコードみたいにね。昔、沼田さんのスライド上映会にいって、カシャカシャとスライドをみているうち、知らず知らずナミダが目にもりあがったことがある。悲しいことなんて何もないのに……。あれも何か覗いた経験だったのでしょうか。ところで後書きによるとレコード盤に穴があいているのは宇宙をみるためとアンディ・ウォホールは言ったそうです。

2Cabinet of Natural Curiosities
Albertus Seba's/TASCHEN 20000円

この本も不思議世界の宇宙です。18世紀初頭の博物線画集。アルベルトゥスセバという薬剤師が両生類、貝、珊瑚、昆虫、蝶から、9つの頭をもつ伝説の蛇ヒュドラまですごい技法でかいています。大樹に大蛇が巻きつき、その横には人間の頭ほどのくも、地面にもうじゃうじゃへびがいて、いっせいに鳥の卵を狙っている、といったような構成絵が多く、思いっきりいっちゃってます。昔の人のイマジネーションの凄みにのまれるのみ。

3トリツカレ男
いしいしんじ/ビリケン出版 1300円

オペラ、サンドイッチづくり、探偵ごっこ……さまざまな事にとりつかれたように夢中になってしまうジュゼッペの恋物語。どこか宮澤賢治の世界にも通じるやわらかなここにはないところのお話です

4オカルト
田口ランディ/メディアファクトリー 1100円

その名もずばり、のタイトル。けれど著者は幽霊はみたことがないという。最初にそう言いきったあとでの、数々の不思議な短い話が35篇。例えば電車の隣に座った男の鞄が異常に重かった……というような何気ない話もあるのだが、じわりとこわい。オカルトとは感じるものと著者はいう。感じることを全開にするとこんな文章がうまれるのかも。

5ハリー・ポッターの魔法世界ガイド
アラン・ゾラ・クロンゼック他/早川書房 1800円
ハリーポッターの人気って魔法や妖怪が親しみやすく、魅力的に書けていることからきている事が大きいと思うのだけどいかがでしょうか。この本は、そんな事項の詳しい解説書ということで、例えハリポタを読んでなくてもおもしろい充実した内容。ヨーロッパでなぜ魔法がうまれたか、などという歴史うんちくもあり、欧州異世界入門書という感じ。

●ABCならではのラインナップが楽しい連載。ABCインターネットショップで本を買うと、カエルブンゲイがついてくるんだよ。

戻る

次へ