2009年9月12日 12:00開演
『 The Musical アイーダ

於 東京国際フォーラム ホールC


忘れないうちに書いておこう。
「王家に捧げる歌」を聴くと、
学生の頃に歌った合唱曲「IN TERRA PAX〜地に平和を〜」を思い出すのです。

宝塚で「王家〜」を観たときも思ったのだけど、
レポに書き忘れてたの。
久しぶりにこの作品(アイーダが主役になってるけど)を観て、
思い出した。
ので、忘れないうちに。

「IN TERRA PAX〜地に平和を〜」は
合唱組曲『IN TERRA PAX〜地に平和を〜』
(荻久保和明:作曲/鶴見正夫:作詩)の終曲で、
組曲全体を通して(とくにベトナム戦争に対する?)反戦歌なのだけれど、
そのラストにもってきた明るい光のあふれるメロディで、平和を希求する曲。

この曲の、冒頭部のコード進行が「王家〜」ととても似てるのです。
「IN TERRA PAX」は8分の6拍子だし、
「王家〜」は4分の4拍子(だよね?)、調も違うし、
決してどちらかが真似したわけではないのだろうとは思うのだけれど、
平和を求める歌というのはこう創りたくなるものなのか、と
興味深かったりしました(*^ ^*)。
気になる方は「IN TERRA PAX」でググってみると、
MIDI音源などあるので面白いかもしれません。

ともあれ、
とうこちゃん(安蘭けい)宝塚退団後初めての舞台。
しかも、私も大好きだった(1度しか観てないけど)作品を演る、と聞いては、
やっぱり行かずにはいられないじゃないですか。

あれは2003年のことでしたね。
6年前か。
当時とは社会情勢もいろいろ変わっているため、
微妙に作品を観ながら思いを巡らせた方向も違っていたりして。

キムシン的には
(プログラムを眺める限り)アメリカのイラク侵攻に対する抗議のようにも
思えますし、
2003年当時は私もやっぱりそういったことに想いを馳せながら
観ていたような気がします。

だけど、世界同時不況と言われる今、
民主党が政権を取って日本がどう変わっていくのか問われる今、
私の胸に訴えてきたのはなぜか、
二幕冒頭の、平和にだらけたエジプトの民に対する
アムネリスの言葉だったりしました。
…だからといって、じゃあ戦えばいいのか、
というわけではないけれど、もちろん。
(でも一番発展するのは軍事産業が儲かるとき=戦争中なんだよね…)

どこかで読んだ、
「日本は戦後ずっと『働かなくていいように』
高度経済成長を遂げてきたんだから、
いまニートを問題視しているけれど、
本当はそれが望みなんじゃないのか」なんていう
某大学教授の言葉を思い出したりもして。

人の幸せって、難しいですね。
とりあえず私には、
自ら出口のない地下牢に潜っていくことはできないや…(^ ^;;。

えーと、こういったことを考え始めるとループしそうなので、
キャストの感想に移りましょうか。

■アイーダ:安蘭けい

男役を離れて初めての舞台ではあるけれど、
まったく違和感なく観られたのは
とうこちゃん=アイーダ、というイメージが
すでにできあがっているからでしょうかね。

とても、とても素敵なアイーダでした。声も伸びやかに。
いっそとうこちゃんにとっては
こちらのほうが演りやすいのではないかと思うくらい。

「♪戦いは新たな戦いを生む〜だ〜け〜!」と歌い上げたときに、
思わず、
このまま倒れて後ろからトート閣下が来るのではないかと
思ってしまったようなエリザフリークでゴメンナサイ。

■ラダメス:伊礼彼方

初めて拝見したのですが、
東宝エリザのルドルフなども演ってるのですね。
どおりで歌い方が微妙にバンビちゃん(井上芳雄)と似てたのか。

最初の、将軍になりたいと歌い上げる曲では、
「お歌はうまいけれど、あんまり動けるタイプではないのね(^ ^;;」などと
微妙に醒めた目で観察(?)していたのですが、
だんだんカッコよく思えてきた(*>_<*)。

■アムネリス:ANZA

ANZAちゃんが悪いわけではないんだけど、
今さらながらに、
檀(れい)ちゃんって凄かったんだな、と思ってしまいました(*>_<*)。

いや、お歌だけを取ってみれば断然ANZAちゃんのほうが上手いんだけれど、
「ファラオの娘」たる尊厳、のすごさ。
ANZAちゃんに品がないわけでは全くないのだけれど、
可愛らしすぎて、普通に「お嬢さん」だったのよね。

アムネリスって難しい役だったのね…。

■ファラオ:光枝明彦

とても細かいのだけれど、
凱旋したラダメスに何でも褒美を、と言い、
それに応えてラダメスが「エチオピア人の解放を!」と
『王家に捧げる歌』を歌っている、
その間の小芝居に心を奪われました。

ちゃんとラダメスの歌を聴いて、
その言葉に揺り動かされ、
目は泳ぎ、指を握りしめる、
人としての動きに。
3階席から、思わずオペラで追い続けましたよ。

ところで、あのお髭はどうなってるんでしょうね。
宝塚公演のときには最初からお髭箱(?)みたいのつけてて
なんじゃこりゃーと思ったモノですが。

■そのほかの人々

エジプトの人々は鮮やかなターコイズブルー、
エチオピアの人々は薄汚れた感じの茶色系、と決まっていて、
しかも宝塚とは違う(もちろん)ことに
男性の肌露出具合が、まるでライオンキング。
あれは宝塚じゃできないもんな〜。
面白かったデス。
オペラで観ると、当たり前ながら皆さん日本人で、
微妙にしょんぼりするのは仕方ないよね。
…というか、普通に違う国の人に思わせてしまう
タカラヅカメイクの記号性の凄さを改めて実感しました。

■キムシン:木村信司

「王家〜」のあとも、いくつかの作品を宝塚で創ってきた彼。
瀬奈じゅんファンの私としては
やはり『暁のローマ』をそこかしこに思い出したりしながら
観ていたのだけど。
ていうか、ラダメスとアイーダが地下牢の中で人生を振り返り(?)、
「私たちは愛し合った…それがすべてだ!」
…どこかのブルータスも死の間際にそんなことを言っていたような…。

木村信司先生にはともかく語彙力をつけることを
オススメします。
直球の言葉だけでなく、
カーブやシンカーをそろそろ覚えてもいいかな、って(>_<)。

fin