駒ヶ岳農園
2003〜2004年

 


本宅建築が一応終わりましたので農地の造成と造園に着手しました。
2003年中にユンボと軽ダンプを使った土木作業をあらかた終わり
2004年から本格的な作物を作り始めました。この土地に合った作物
については何とか分かり始めてきましたので失敗は少なくはなってきた
のですが、作物を作ればその後処理を考えなければなりません。

2004年は小麦を育ててパンに至る作業にも挑戦しました。
以下にその奮闘記をご覧下さい。

その他、2004年の冬には2003年に作った鶴の子大豆で寒仕込みの手前味噌
を造ったり、ベーコン、スモークサーモン、珈琲豆の自家焙煎、各種自家製ジャム、
それと、自分で育てたトマトでのトマトピューレなどの自家製レパートリーが
ありますが、それらの報告はまた次回にします。


                                   2003年の作業

下の3枚の写真は本宅屋根から2003年6月末に南側正面の畑エリアを撮影したものです。本宅建築に忙しい時期は奥の方から少しずつ畑を拡張しながら野菜類を育ててきたのですが、この年は全面的な畑地造成をやりました。奥の方で定番野菜(ジャガ芋、南瓜、コーンなど)の他に鶴の子大豆を育てています。5月一杯、これらの種蒔きと手入れを一通り終わってから未造成の所を一挙に造成しました。完了した直後の写真でマイユンボで粗く整地されたところですが、ここに至るまでは葦の根っこを掘り下げて取り除きながらの大変な仕事でした。その結果出来上がった畑エリアは丁度一反(1,000u )でした。

2003年9月にサンフランシスコ在住の倅夫婦に双子の初孫が誕生しました。諸般の事情から我ら老夫婦も産後の家事手伝いに行ってきました。小生は一週間程度で帰ってきたのですが、老妻はその後も3ヶ月ほど滞在していました。そんなこんなで収穫作業に手が回らず、だいぶ鳥たちにサービスしてしまったようです。蕎麦はほぼ全滅(種播き用くらいしか残されていませんでした)、大豆も鳩などにだいぶ食べられてしまいましたが6s強を収穫できました。


   


 

      蕎麦

              畑の造成工事完了したのが6月の末だったので新しく出
              来たところに蕎麦を植えた。うっすらと芽が出ているのが
              分かる。種蒔きが遅れたのと、収穫時期に忙しくなってし
              まい、収穫のタイミングを逸してしまったので収穫無し。ほ
              とん野鳥に食べられてしまったらしい。

花壇通路

    下の段は花壇エリアにするつもりだが、畑造成が優先さ
    れ後回しになっている。ただ、2003年には北側造成の際
    に出てきた火山灰を中央通路持ってきて、縁石を配置し
    た。通路は軽トラが通れるくらいに幅広にした。
       


                                 2004年の作業

昨年、造成が終わった畑をフル活用しました。半分の500uに小麦を植え、残りにジャガ芋、スウィートコーン、枝豆、花豆、玉葱、ブロッコリー、ズッキーニ、人参、牛蒡、リーキ、都南瓜など、さらにビニールハウスにはトマト、ピーマン、パプリカを順次植えました。夏の気温が高かったので、それぞれ期待通りの収穫でした。

2004年からワイン用葡萄の栽培を本宅の北側で始めました。北檜山でセーベル種を育てているという農家;森さんにご指導をいただき、苗木も同氏から分けて貰いました。苗木屋さんからの苗木のつもりで頼んでいたのですが、森さん知り合いの苗木屋さんに無かったということでご自分で挿し木をされたものです。本当は赤、白用それぞれ25本ずつを頼んだつもりだったのですが、森さんの所では全部赤用(セーベル13053)とのことです。葉が出てくると幹の色が違っていたり、野葡萄の葉のが混じっていたりと全部同種とは思えません。最終的には実が出来てみないと分からないようです。山形の苗屋さんに白用(セーベル5279)15本を注文したので、一年遅れで植える予定です。

   

小麦とジャガ芋の植え付け

昨年造成した畑、1,000uで本格的に作物を作り始める。一番始めに植え付けるのはジャガ芋だが、今年は、それにしても畑が広いので半分に穴埋めのつもりで春播き小麦「ハルユタカ」を播く。これは4月末までに播かなければならないとのことなのでだいぶがんばった。畝巾30px16.7mを百条、種蒔きだけでも大変な作業だ。

奥の畑一面にうっすらと芽が出始めている。右手前100uがジャガ芋を植え付けたところ。これだけ広いと運転席付きの耕耘機が欲しくなる。

豆類と南瓜の参加

ついで、コーン、枝豆、花豆、玉葱、ブロッコリー、牛蒡、人参、南瓜と続く。北海道では5月中に植え付ける必要があるが、気温が低いので黒マルチとトンネルが必須となる。小麦の生長は順調だが、カラスや鳩がほじくり返して種を食べてしまう。鳥追いの作業も経験した。

気温が通常より高かったので作物の生育全般は良好だったが、台風の影響をもろに受けた。特に花豆は何回もなぎ倒されずたずたになってしまったが、それでも少しは収穫があった。

葡萄

本宅の北側にも残土が山積みされていた。ここを平らにして500uくらいの畑地が出来た。本宅と北側の林に囲まれており、風の影響を受けにくいのでリンゴなどの果樹を移植すると共にワイン用の葡萄(セーベル13053種)を50本ほど植えた。3年後から自家製のワインが出来る予定。

草の中に埋もれたようで余りよく見えないが、奥の方、林の手前にはリンゴなどの果樹を10本くらい植えてある。



                                 小麦の栽培からパン作りまで

昔むかし、小学校の朝礼で校長先生がある南画の話をされたことが今でも心に残っています。南画には達磨が蒸かした薩摩芋を美味しそうに食べており「我、佳境にに入る」とかかれていました。校長先生のお話は、薩摩芋を食べるためには苗を植え、育て、収穫し、さらに、うまく蒸かし、最後に口に運んで始めて味わうことが出来ます。この一連の作業を全部きちんとやったとき、始めて「佳境に入る」と言う心境に至ることが出来るのだ、と子供ながらに理解しました。ものごとの初めから最後までを全部自分でやってみる、ということは、現代社会では構造的になかなか難しいことです。ここに移り住んで5年目、自分で育てた小麦からパンを作るまでを報告します。

トカナントカご託を並べてしまいましたが、2004年春、昨年までに準備できた畑地1,000uの作付け計画を作るにあたりはたと考えました。専業農家ではないのですから全部の面積を夏野菜でうめるのはちょっと無理があります。かといって何にも植えずに放置しておくとすぐに雑草がはびこりもとの原野の状態に戻ってしまいます。ということで思いついたのが小麦の栽培です。近所の大規模農家である小原さんは毎年秋まき小麦(チホク;中力粉用)を生産されており、毎年家の東側に広がる麦秋の風景に若干のあこがれがあったのも否めません。「ハルユタカ」(強力粉用)という春まき小麦がこの春先から準備すれば間に合うことが分かり、早速、種を留寿都の農家(玉手さん)からゲットしました。この思いつきが始まりで大変な作業を背負い込むこととなり、今でも若干引きずっている感じですが、まあ、一応、パンを作りまで到達し、口に出来ましたのでヨシとしましょう。その顛末は以下の通りです。

  

小麦の出穂

小麦の種を播き、それが目を出し始めた写真は前に揚げた。芽が出始めて一番先にやらなければならない作業は鳥追いである。野鳩やカラスは芽の下に種が隠れているのを知ると、それをほじくり返して食べてしまう。

同上の写真に至るまでに、草取りを3回。30pの畝巾に身体を入れて雑草を三角鍬で切り取っていく。16.7mを99条、一人黙々と作業。さらに、花が咲く時期に消毒をする。小原さんから教えて貰って黴防除剤(ストロビーとチルト乳剤25)を一週間置きに交互に2回づつ(一回分40g)を撒く。ここまでしても少し赤黴病が出ているようだ。

特にこの夏は暑かったので、草いきれの中で蒸されているようだった。


小麦の色付き(8/10)

小原さんの小麦畑や美瑛の風景ほどではないが金色に光って見えるのは依怙贔屓目か?収穫時期は8月末と聞いていたのだが、色付き具合が早い。

小原さんと谷内のおじいさんの所へ持っていって出来具合を聞くと、もう収穫時だとのこと。放って置いて雨にあたるとと穂発芽が起こって品質が低下してしまうのだそうで早速刈り取りを始める。









刈り入れ(8/10〜15)

山小屋に滞在していた姉夫婦にも手伝って貰い、みゆきも含めて4人総出の作業となる。何せ始めての経験なので干場をどのくらい用意すればいいのか皆目見当がつかない。ミニビニールハウス一棟分くらいで、あまりは適当にどこかに収納できると思っていたのだが、たっぷり3棟分もあった。

8月10日午後から始めて少し雨に降られもしたが、15日までに全部を刈り取ることが出来た。感謝、感謝








脱穀

谷内のおじいさんに聞いたら、昔はパタンという道具を使い外でたたいて脱穀したのだという。そんな道具はないのでビール瓶で叩いてみる。確かに落ちるのだが取りこぼしが多く、いちいち確認してもう一度叩き直したりしていると能率が悪い。いろいろ試した結果、100円ショップで買ってきた洗濯板に穂を押しつけて転ばすときれいに取れる。難点は埃がたち、直接吸い込んでしまうので作業中はマスクが必要なことと、穂先が飛び散り衣服の中まで入り込み痒くなることだ。



脱穀完了

刈り取った小麦束はミニビニールハウス(3x5m)の中に4mの単管を7本横に渡し、袈裟懸けで干した。

乾燥が進んだところで、まずは一棟を2004年10月に脱穀しすぐに谷内さんに借りた木製の「とうみ」に掛けたところ47sの玄小麦が取れた。

残りミニビニールハウス2棟分を何もすることのない真冬の間(2005年の一月と2月)に全部脱穀した。上の写真は冬の間に脱穀した分で、土嚢袋24個になった。


とうみ掛け

駒ヶ岳山麓のなかの別荘地で手製のケーキと喫茶室をやっているところがある。田中さんというのだが、素人でお菓子用の小麦を育てたことがあるというので話を聞きに伺ったところ、とうみの機械を持っているとのこと。谷内さんのは木製で大きいので軽トラに乗せるのも男2人が必要だが田中さんのは金属製で男一人で持ち上げることが出来る。早速、お借りする約束をした。

2005年3月末、外はまだ寒いし今年の雪はたくさん残っているのでビニールハウスの中でとうみ掛けをした。


玄小麦

「とうみ」を掛け終わった玄小麦。一袋20s入る。7袋で140sだ。昨年10月に、すでにミニビニールハウス一棟分の脱穀と「とうみ」掛けを完了して47sの玄小麦が穫れていたから、合計で187sである。半反(500u)分の平均収量は120sくらいと言われていたのを大幅に越えていた。

昨年(2004年)暮れから小麦粉作りを始めた。やり方が分からないのでいろいろと聞き回った。残念ながらこの分野での昔の経験者には巡り会えなかった。白い粉にするには表皮と胚乳が分離出来ればいいのだが、表皮が腹の部分で胚乳の中まで入り込んでいるので、玄米と違って擦り合わせるだけではふすまが取れない。

玄小麦全体を押しつぶしてからふすまと粉を分離するしかない。大型製粉機では乾燥した玄小麦に少量の水分を与えてから一定時間を経過したところで溝付き粉砕機にかけ、ピューリファイヤーという装置で皮と胚乳成分を分離する。水分量は2%で36時間経過後粉砕機に掛けると言うことまでは分かったのだが...




製粉前の玄小麦

脱穀の段階で、玄小麦はとても埃っぽいし汚れているということが分かったので、全くの自己流だが、水分を与えるということを、玄小麦を洗うと言う動作に置き換え、その後、同上のように笊に展開してで乾燥し、適度に乾いたときに粉砕機に掛けることとした。乾燥中にゴミやシイナ(赤黴が発生しているのも)を手作業で取り除く。これがなかなか大変な仕事だ。この作業を本業では「調整」と言うようだ。

素人が粉と皮を分離する唯一の方法は、市販されている「ふるい」である。粉砕後の大きさで分離するしかないわけで、皮成分は大きく、胚乳部分は細かく粉砕できれば都合よく白い小麦粉となるはずなのだが...

前日に洗って調整した玄小麦を早朝から粉砕機に掛ける。水分量が多いほど大きく皮がはずれるようだが、出来上がった小麦粉の水分量も多く、湿った小麦になってしまうようだ。







製粉設備

合羽橋で購入して置いた粉砕機(コーン ミル)を使って粉にする。コーン ミルは鋳物製の溝付きすり鉢が先端についていて、玄小麦を押しつぶすように粉砕する。それをふるいに掛けて皮の部分を取り除く。一回目の粉挽きで#30のふるいに掛け、ふすま(皮成分)を捨てると70%くらい残る。さらに、挽きを強めて2度挽きし、#50のふるいでさらに表皮成分を除いた。最終的には玄小麦の60%くらいが小麦粉になる。手持ちの一番細かいふるいは#65だ。これを使うともっと細かくなり表皮成分も少なくなるのだが、なにせもの凄く時間がかかりすぎるし、粉も50%くらいしか取れない。

粉砕機はそもそも手回し装置でゆっくり回転し、少しずつ粉になっていく。このため、1sの小麦粉を作るのに五時間以上必要なのだが、この作業は人力では到底無理なので全て電動化した。それでも粉挽きは大仕事だ。

電動ふるい機は写真(上)の通り、洗い桶の中に市販のふるい器を入れ、モーターでピストン運動させることで実現した。モーターの回転数を1/10くらいに落とす必要があり、函館でギアとボールベアリングを探し出し何とか実現した苦心作である。


完成した小麦粉

写真では白く写っているが、やはり少し灰色がかっている。水を加えて捏ねるとすぐにまとまってくる。グルテンが出来るのが市販の小麦粉よりかなり早い、それと色が濃くなりいわゆる「ブラウン」のドウが出来る。

全粒粉と称する粉が市販されている。今日では大型製粉機で作った白い粉にわざわざふすまを細かくして加えることで作っているらしい。が、その昔、農家がひき臼で玄小麦を製粉したのをグラハム粉と言い、それがそもそもの全粒粉だろう。こう考えると、自家製粉はまさに全粒粉だ。

パン(ベーグル)

自家製の粉を使って作ったベーグル。何とかベーグルは格好が付いてきた。勿論、味は格別だ。


その他、うどんやパスタも作れる。何せ、あと玄小麦が140sもあるのだから当分は楽しめる。






パン(自然酵母のブール)

ホシノ自然酵母を使ってブールを作ってみた。膨らみはいまいちで、もう少し研究の余地がありそうだ。











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