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アソシ研リレーエッセイ

“伝える”ことを意識して


 前回のリレーエッセイは、鈴木伸明さんの鍋料理のお話。私も同僚や家族が共に分かち合う食のありかたとして、鍋料理は最適と思っていました。しかし、最近は少し異変もあるようで、それは何とお好み焼きだというのです。

 おなじテーブルを共有し会話が弾むという点では一緒なのですが、それぞれ違う社会のなかで別々の人生を送っている個人がお互いの存在を確かめ合う場である食卓にて、好みの種類の具材を個人個人が自分なりに焼いてゆくことのできるお好み焼きは、個人主義と連帯意識を両立できる料理だというのです。

 きっと一定世代以上の人は、ちょっとくらい好き嫌いがあっても共に同じ料理、具材を食する方が良いだろうと思われることでしょう。私もその方がより深い連帯感と忍耐が生まれると思います。しかし、いきなり鍋料理を提案するよりは、取り組み易いところから始めるということが大切なようです。

 今年度のアソシエーション研究所の総会には、たくさんの若い人達が集まってくれました。総会参加への呼び掛けが届いたのかもしれませんが、私は「未来と食卓」という研究所としては初めて取り組まれた若い人中心の企画が身近なものにしてくれたのだと思っています。「未来と食卓」はお好み焼きの役割を果たしたのでしょうか?

 私達は自分達の中の真実を伝えたい、残したいと思っています。伝える中身は譲らない、迎合もしない。しかし、その伝え方はわかる奴はわかる、気付く者は気付くというあまりにも乱暴な扱われかただったのではないでしょうか。自分自身、その時は理解できず憤慨し反発したことを忘れないで、アソシエーション研究所と若い人たちを身近な存在にする努力が求められています。

 私達の組織の中から発信されるたくさんの通信、情報も同様に届ける人を意識して届くように努力することが大切です。受信者を意識した情報の発信は大衆迎合、ポピュリズムとは違うものです。もっと伝えるということを意識した発信に注力する必要があります。

 伝えることの出来ない真実は、何ら変える力を持ち得ない。私の心の中に、日増しに膨らむ未来への諦念と若人を見下した視線があったかもしれないということに気づき、少し恥ずかしく感じています。

                              (村上忠政:よつ葉ホームデリバリー京滋)



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