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市民環境研究所から

酷暑のあとの実りの秋に…


 酷暑の残像を引きずった日の朝、我が小農場でキャベツの害虫獲りをしていたが、その夜あたりから気温が急変し、風邪気味の家族のためにストーブを押し入れから出した。まだ水稲の刈り取りも終わってない地域もあるこの時期に、夏服から一気に冬の身支度に進んだ。筆者がフィールドとしている中央アジアの砂漠の国のようである。

 そこでは秋はほんの2週間ほどで、夏から冬へのひと呼吸程度でしかない。日本もそれに近くなって、これが地球温暖化から始まる異常気象の現れなのだろうかと思う。地球環境問題には大いに関心があっても、だから環境問題をやらねばとは思はないが、こんな異常気象が続くと温暖化、温暖化と騒ぐのも宜(むべ)なるかと思う。

 寒くなった月曜日の夜、当研究所の事務局会議があった。ほんの4人だけのちっぽけな会議である。メンバーの一人は京都市内でお爺さんの代からの米穀店を経営している。今年の新米の話に花が咲いた。新米は酷暑の影響で白濁米が多く、一等米はごく稀であるという。米どころ新潟でも深刻な状況だとは新聞記事で知っていたが、この米屋さんの話ではほとんど一等米がないという。

 昼間に太陽の光を受けて光合成された糖分が籾に蓄積され、おいしいコメとなるのだが、今年のように夜温が高く、熱帯夜の連続では植物は夜も盛んに呼吸をするから、昼間に蓄えた糖分を消費してしまう。一等米と二等米ではずいぶんと値段がちがう。まして、三等米の比率が多くなったという今年のコメは、農家を疲れさせてしまう。

 そんなコメ談義をしていた翌日、蓮舫担当相の大号令で「事業仕分け第三弾、特別会計」が始まった。特別会計がどんなものかよく知らないが、最初の課題は政府による備蓄米事業の見直しだという。ネットで検索してみると、「特別会計の米管理勘定から支出される備蓄米の管理費は、1万トンあたりおよそ1億円かかり、仕分け人は、現在の備蓄量100万トンを引き下げることで、経費削減できないかと探った。しかし、筒井農水副大臣は安全保障としては、300万トンにすべきだという提起をして、民主党マニフェストにはそう記載をしておりましたと反論した」とある。仕分け会議の結論は、「備蓄は継続するけれども国庫負担を1~2割削減すべきである」となったらしい。

 この結論がどんな政策として提案されてくるのか注目したいが、米管理勘定から支出される備蓄米の管理費は1万トンで1億円、備蓄量は300万トンというから計300億円になる。何百億と言われるとびっくりして、それはけしからんと思う人もあるだろうが、日本人の主食であるコメの備蓄に使う金が、たったこれくらいで足りるのかと思う人もいるだろう。主食を常時確保するのは国家の重要な責任だから、たかが300億円が無駄になったとしても構わないのではないか。それで農家の生き残りに少しでも役に立てば大いに使うべき資金であると思う。酷暑のあとの実りの秋に、コメのことを大いに考えたい。  

                                            (石田紀郎:市民環境研究所)



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