●関生労組の西山さんから労働者供給事業の報告
●総会のもよう
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活動紹介―関西仕事づくりセンター総会


仕事づくりに向けた着実な歩みを確認

 このたび、当研究所も会員となっている特定非営利活動法人(NPO)関西仕事づくりセンターの第2回総会が行われた。派遣や請負いなど労働者の使い捨てが横行し、働く者の尊厳が奪われている中、資本に雇われるだけでなく、自ら「仕事づくり」を通じて新たな働き方、生き方を目指そうとの主旨で設立されて丸2年。一歩一歩着実な進展が伺われる集まりとなった。

 去る8月1日に第2回目の定期総会を持ち、NPO関西仕事づくりセンターも3年目の活動に入ることになった。実感としては、1年目は「無我夢中」、2年目は「何とか目鼻形がついてきたか」、そして3年目は「いよいよ胸突き八丁」というところだが、それはともかく、多くの協同・共感に支えられて、全体としては比較的順調に推移してきたのではないかと思う。

 昨年度の事業高は約1500万円、「仕事」だけで言えば約1000万円。私たちは、何はともあれ年間約1000万円の仕事をみんなで分かち合いながらやれたということについては、素直に評価していいのではないかと考えている。改めて、ご支援・ご協力に心から感謝したい。以下、総会に提案した事業報告・計画に沿って、活動の現状と課題や計画について簡潔に報告する。


昨年度の「仕事づくり」

 年間で約30万枚を配布したポスティング、HP管理やデイケアの送迎車運転他の定期的な仕事などについては、活動の基盤を支える仕事としてほぼ定着してきた。スポットの仕事として大きかったのが、この3月に関西よつ葉連絡会からの依頼で取り組んだ「よつ葉交流会」の会場設営。予算約350万円という金額の大きさだけでなく、参加延べ人数が8グループ・労組から100人超の文字通り総力をあげた取り組みで、「何とかやり切れた」という自信とともに、仕事を通じた一体感、みんなで仕事をすることの意義を再確認することができたという意味で、大きく貴重な経験を積むことができた。

 もう一つ、これまでは仕事の発注者・仕事をする人ともに会員という、言わば会員間の「助け合い」「ワークシェアリング」としての「仕事づくり」が中心だったが、最近はその蓄積・実績の上に、そこから波及して新規の仕事や問い合わせが増えてきている。こうした関係の拡がりを大切にし、ひとつひとつの仕事に着実に取り組む中から、スキルや体制を含め、全体的なレベルアップを図っていきたいと考えている。


地域・生活圏からの仕事づくり
「有償ボランティアグループ」の形成


①植木剪定
 兵庫県川西市で造園業を営む阪本理事と協力、昨春、「地域・生活圏からの仕事作り」の具体化に向けた第一歩として「NPO関西仕事づくりセンター・豊中」を立ち上げた。木村真・豊中市議の後援会「木村真とともに豊中を変える会」や、関西よつ葉連絡会に所属する(株)産地直送センター、川西産直センターの会員に対して、機関紙『にゅうす』や宣伝チラシを配布し、具体的な呼びかけを開始した。さらに、豊中市をはじめとする豊能地域だけでなく、今春からは高槻市や島本町、茨木市など三島地域でも呼びかけを始めた。

 幸い好評で、これまでに20件を超える仕事を受注、継続した通年管理の依頼もあって、活動の大きな分野のひとつとして定着しつつある。また、「庭木の仕事を一緒に覚えたい」という人も、昨年から一緒に仕事をしている高槻のMさんに続き、先頃から川西のTさんが仕事に参加、阪本理事と一緒に仕事に回り、技術習得に励んでいる。

 植木剪定については、今後も仕事の増加が見込まれ、豊能地域、三島地域、それぞれの地域でのグループ化・自立化を課題としていきたい。豊能地域では、Tさんも受講している「NPOいたみワーカーズコープ」の緊急人材育成支援事業「造園技能士科」の受講生・卒業生の皆さん、三島地域では、小沢福子・大阪府会議員の後援会「火曜会」や北大阪合同労組の皆さんとの提携・協力を追求していきたいと思っている。

②地域の便利屋さん
 植木剪定の仕事自体もそうなのだが、「地域・生活圏からの仕事づくり」では、「近所付き合い」の崩壊や高齢化とも相まって、掃除・大型ゴミの処分や簡単な引越・荷物移動などの仕事が多く寄せられる。そこで今春から、「地域の便利屋さん」を植木剪定とともに前面に打ち出し、宣伝や呼びかけを始めた。仕事をする側の会員・グループの多い大阪市を中心とした展開を睨み、関西よつ葉連絡会の大阪方面の会員にもアピールを拡げている。今のところ、体制・力量不足で、受注した仕事は全体で調整しながらこなしているが、それぞれグループ単位で経験・体制・力量を整備・蓄積しながら、地域での自立を図っていきたい。

③みんなで農業
 もう一つ、来期は「みんなで農業」に具体的に取り組みたいと思っている。会員労組からは「メンタルの問題を抱える人の『リハビリ』の場としての農作業」、豊中では「都市住民が農業を体験できる場を」という声は従来からあったのだが、場所等の問題もあり実現には至らなかった。しかし、前者については(有)高槻農産の協力を得て、希望者・有志で一度実際に体験してみることになった。定例化までには時間がかかるだろうが、医療・福祉分野との提携も視野に試行を重ねていきたい。また後者については、(株)産直センターのスタッフや会員で作る「にんじんクラブ」が新たに箕面市で活動を開始することになり、「仕事づくりセンター・豊中」としても、積極的に参加・協力していきたいと考えている。


労働者供給事業・有料職業紹介

 設立当初から検討・準備を進めてきた課題だが、規約の改正、事務所の問題等々、申請の資格・条件に関わる整備はほぼ終了、ようやく申請の段階にまで漕ぎつけた。当面、有料職業紹介は「偽装請負」を回避するための手段として位置づけ、労働者供給事業の具体化を重点にしていくつもりである。

 労働者供給事業は、管理職ユニオン・関西が資格を取得し、仕事づくりセンターが、請け負った業務について管理職ユニオンと労働者供給契約を結ぶ形を目指している。最大の利点は、現在やっている形に一番近いこと。さらに、NPOが印紙を発行できるようにすることで、将来的には働く人が日雇い失業保険を利用できようにしていきたいと考えている。

 継続中の仕事の中から形態・条件面で比較的やりやすいもので具体化してみる予定で、エアコン他のクリーニング、デイケアの送迎車運転、保育所の食材配送、HP管理、ポスティングなどの仕事で業務請負契約・労働者供給契約を締結、実績を積み重ねている。本格的な事業展開が始まると、事務量も飛躍的に増えることになり専従者も必要になってくるなど、クリアーすべき問題も多いのだが、今期は「具体的な取り組みをまず一つ実現してみること」を目標としたい。労働者派遣法で問題になっている「労働者使い捨て」状況に働く者の側から風穴を開ける、大きな可能性を秘めた実験でもあり、来期中の申請・資格取得、活動の具体化に向けて全力で頑張りたいと思っている。


事務局の「起業」

 事務局の財政基盤の強化・事務局メンバーの生活基盤の確立を目指し、昨年度から事務局の「起業」に着手した。「運営・活動費や生活費も自力で創り出そう」との主旨に基づくものだが、何よりも活動全体を支えるそこのところが脆弱では、話は前に進まない。現在、具体的に取り組んでいるのは、書類廃棄業、テープ起こし、ホームページの作成・管理の三つ。ぜひご支援・ご協力をお願いしたい。

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 昨年の総会で私たちは、仕事の中で具体的に直面した課題として、①依頼された仕事に対する責任、②「仕事を通じた協同」の意識的追求、の二つをあげた。習熟が進むにつれ減ってきてきているとは言え、残念ながら未だ仕事へのクレームがあるのも現実である。受託した仕事をきちっとやりきれる能力・体制の確立は、全ての仕事について大前提となる問題であるばかりでなく、「仕事」を通じた働く者同士、仕事を頼む人とする人の「協同」という、私たちの活動の理念・根幹に関わる問題でもある。

 活動が拡がる中で、そのことはますます問われることになる。「協同」が日々の実践的課題となる規模になってきたのだと思う。その意味でも、上述の様々な課題の実現・具体化と合わせて、今期は「いよいよ胸突き八丁」。引き続きご支援・ご協力を、協同を!

                            (津林邦夫:北大阪合同労働組合)


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